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2010.04.18
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 以前、中学生へのおすすめの本が紹介されている『中学生はこれを読め!』に目を通した時、おもしろそうなのをリストアップしておいた。
これまで読んだのは、わずかに重松清の『流星ワゴン』、小泉吉宏の『ブッダとシッタカブッタ』だけですが、、、(笑)
『ブッダとシッタカブッタ』は大人も子ども、何度も開くお気に入りになっていて、ただ今姪っ子に貸し出し中。
やっと3冊目となったのが、この『ミスター・ヴァーティゴ』。
映画『スモーク』の原作者でもあるポール・オースターによるアメリカン・ファンタジー。


 けだもの同然、人間の形をしたゼロだった俺は、師匠に拾われ、十二の時はじめて空を飛んだ。誰一人なしえなかったことをやってのけた。
1920年代のアメリカを背景に、全米を魅了した「空飛ぶ少年」の飛翔と落下の半生を描くファンタジー――――――。
(「MARC」データベースより)


 最近、三度も「1920年代=ローリング・トゥエンティーズ」という言葉を耳したり目にしたりする機会があった。
ひとつは、大スター三船敏郎と原節子が1920年代生まれだと語る、山本晋也監督の口から。ほかは手にした本から。
狂騒の20年代=Roaring Twenties、まさにその時代が舞台となる物語が、『ミスター・ヴァーティゴ』だった。

精神にも肉体にもツライ修行を重ねて、“ 俺 ”を「空飛ぶ少年」にしたMr.ヴァーティゴ。
彼の半生を通して、“ 俺 ”が成長していった姿を、自伝形式で綴る。
修行と称する鍛練はあまりにも過酷で、文章はたくさんのスラングが特徴的で、痛々しい出来事ばかりが起こる。
生半可なファンタジーではない、苦しんで苦しんで成長していく様に、読むほうもなかなか進まなかった、、。(文体が好みじゃなかったのもある)  
みんながみんな、大好きになれるような人物じゃないし、なかでも一等好きになれないのは主人公の“ 俺 ”だときたらお手上げ(?)

時々、ヴァーティゴの優しさや、飛翔、信頼といった明るい兆しもあるけれど、師匠を失うと、再び転落人生が幕を開け、彼は落下していく、、、。
中学生には、反面教師的な主人公であり、若さのダークサイドという感じ。


ポール・オースター氏は、監督として映画界に進出している人。今までに『ブルー・イン・ザ・フェイス』『ルル・オン・ザ・ブリッジ』と、2本映画を撮ったそうだ。ほかにも、原作・脚本を担当した『スモーク』は、かなり好きだった。
この小説でも、主人公は映画が好きで、よく劇場へ出かけていく。そのタイトルも人物名も実在するので面白い。空を飛べなくなってからは、映画界に進出しようとする件もあった。

なにもかも失った後で、主人公が経営することになるバーは、何気に『スモーク』の舞台、ブルックリンの下町を思い出させる匂いがある。
それは先入観かもしれないけどさ。 人と人の出会いと別れ、都会の人間模様が、いかにもあの映画の魅力と重なったのでした。

本作は、いつもと毛色の違うオースター作品だそうなので、いつか別の作品も手に取ってみようと思う。某所でみつけた≪凶悪なまでの幻想性≫というオースター作品を例えた言葉に惹かれる。
本書は凶悪とまではいかない幻想性。人間の醜悪を帯びたファンタジーに留まっていた。








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Last updated  2010.04.20 22:49:00
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