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テーマ:読書(8607)
カテゴリ:本
「山路を登りながら、かう考へた。 智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。」 冒頭の一節がとても有名な『草枕』。 漱石はどれを読んでもおもしろいと思っていたら、初期にはこんな読みにくい小説があったのね。 主人公の中年(といっても当時はまだ30代)画家が、独自の芸術論を独白で展開させるのだけれど、聞いたこともないような語彙と漢文があふれてむつかしい! 当時はたいそう人気で、本作の成功が、作家・夏目漱石の足がかりとなったというから、むかしの人は情感豊かで趣があったのね。正直、おもしろさの半分もわらなかったよ。 西洋文化の批判をしているということは、多くの知識人たちがそうだったように、漱石もイギリス留学中には、国民性の違いなんかに悩んだのだろうか。それなら少しは身近に感じられそうだけど。 だって週に一回、ほんの小一時間、英会話の先生と向き合っているだけで、わたしは疲れるもんね(笑)自我が強くて、テンション高くって。 物語は、熊本小天温泉を舞台に、洋画家である主人公が、山中の温泉宿に逗留し、宿の若奥様の那美と知り合い、他愛のない会話を交わす――というもの。 そのなかで、東洋の芸術や文学についてが、「さりげなく」ではなく、どうどうと頁を割いて論じられていく。 時おり会話には、のちの作品に通ずるユーモアがあり、主人公の自論もハッとするものがあるのだけれど、全体に古風でとっつきにくく、なにぶんわたしには難しすぎた。 じっくり味わいながら読み返せる日は、いつか来るだろうか。 漱石を読むなら、高等遊民の出てくるのが、好きだなぁ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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