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テーマ:読書(8606)
カテゴリ:本
読んでいる間じゅう、作者の精神世界にどこまでも降りていく、不気味なコワサと不安感に包まれていた。 『麦ふみクーツェ』のノリで読みはじめたものだからびっくりする。 「クーツェ」はいしいさんの陽ならば、こちらはダークサイド。 つぎは『プラネタリウムのふたご』を読んでみよう。 物語は三つに分かれている。 ひとつめは、みずうみと共存して暮らす、不思議な村人たちの物語。 ふたつめは、口からは石を、体から水を排出して生きる、物静かなタクシー運転手の物語。 みっつめは、実在する世界を舞台にした、赤ん坊を授かったある男女のものがたり。 みずうみ、みず、羊水に、つうずるのは生命力。 ひとが存在存続するのに必要不可欠な、希望や畏怖まで想像させてしまう語り口に、ちょっとゾクッとする。 寓話のような手ざわりとはいえ、難解で内面的。 言葉の表面だけなぞるので精いっぱいになってしまうほど、わたしには読むのに精神力のいる作品だった。 掴みどころのない主人公たちと、共感を求めないストーリー。作家いしいしんじの妄想世界は、想像以上に濃かった。 半分病んでるようで、書くことで繋いでいるようで、日頃どんな世界を眺めているのか知りたくなるような作家だからこそ、童話の形をした大人の作品が書けるのだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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