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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:日本映画
『シコふんじゃった。』『それでもボクはやってない』の周防監督による、初期の密かな佳作。 身近なようでいて遠い、お坊さんたちの日常を、ユーモラスに描いている。 個人的に、僧侶の生活には興味がわく。今どき、禁欲と戒律ずくめだとは思えないけれど、凡人にはとても真似できないような厳しい生活をしていることは確かなのだ。 本編に出てきたように、衆道やら盗み食いやら…当然いろいろあるに違いないけれど、仏の道に存る崇高さや美意識には、自然と憧れる。 実家のお寺を継ぐために、山に籠った主人公の陽平(本木)。俗世と離れ、青春を懸けたROCKとも別れ、恋人にも一年間会えない暮らし・・・。それは絶望にほかならない。彼の青春は、禅寺へ押しこまれたようなものなのだ。 庶務、座禅、食事は質素、眠りのポーズまで決められた生活は、コミカルな演出によって笑どころと化しているけれど、じつに大変そう。 ロックンロール魂と独自の美意識を持つ陽平には、とても耐えられないかに見える生活なのだが、、いつしか変化が訪れる。細かな仕草や作法にみる禅道の美学に魅せられ始めるのだった。 俗世に生きても、仏の道に生きても、たぶん人はそうそう変わらない。陽平が目覚めるきっかけとなったのが、彼にもとから備わっていた美意識であることがすべて物語っていると思うのだ。 それを、素の生活にも哲学を感じさせる本木雅弘が演じたことで、面白さが際立つ。 終盤、首座法戦式なる儀式の長回しシーンは圧巻。法戦式(ほっせんしき)は禅問答のように問いと答えの掛け合いを、怒鳴り合いながらする最終儀式。難解な言葉の意味すら分からないまま場面の勢いに釘づけにされてしまうこと間違いなし。 周防監督の作品には、日本人の美徳を知っているやさしい眼差しを感じる。これまで取上げたテーマ、仏教にしても相撲にしても、しがないサラリーマンの哀愁にしても、愛があった。 その上、対象をしっかり調べるたしかな安定感も加わって、ただ笑って過ぎていくだけじゃない凛とした味がある。やはり周防監督はすごいひと。 陽平役のもっくんと共に修行僧を演じた、大沢健、彦摩呂といった若かりし頃の面々もいい味だ。時の流れは残酷な、彦摩呂の今と昔のギャップに笑い。大沢健の美青年ぶりも見逃せない。 そして誰よりも本木雅弘のスマートで器用な存在感ある演技がいい!。中盤で美について大げさに独りごちるシーンは最高だった。 監督・脚本/ 周防正行 原作/ 岡野玲子 音楽/ 周防義和 出演/ 本木雅弘 鈴木保奈美 大沢健 彦摩呂 (カラー/101分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.11.17 08:56:14
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