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2010.12.06
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カテゴリ:日本映画

 『愛のむきだし』つながりで、安藤サクラの作品を手にとる。監督は長編4作目となる、父の奥田瑛二。次女、安藤サクラの初主演作品。

 山口県、下関。名門女子高に通う真理子は、チンピラに絡まれたのがきっかけで、一人の青年と出会う。青年はやくざの端くれで、チンピラたちの兄貴分だった。
絡まれたとき、合唱部の大事な楽譜をなくした真理子は、償いとして、物騒な学校の帰り道にボディガードをしてくれるように頼む―――。

海に落ちた真理子の鞄を拾うため、迷わず海に飛び込む青年の登場シーンがかっこいい。はじめて見た俳優、佐々木崇雄が、影のあるヤクザ役を好演している。
プリマドンナを夢見る真理子と、夢を持たない青年。会うごとに親しくなっていくのだが、青年が名前を明かすことはなかった。
彼は在日朝鮮人のやくざの端くれで名はソンムン。自分の素姓を明かすには、真理子はあまりにも純真すぎたのだ。

ふたりが初めて打ち解けあえるのは、中盤。真理子が合唱団のソロを外されて、自暴自棄に陥ることがきっかけだ。(在日2世の彼女は無意識裡にコンプレックスを抱えていて、ソロを外されたのは、そのせいだと疑っている)
落ち込む真理子に困ったソンムンは、母と暮らす実家へ彼女を連れていく。ずっと隠していた名前を教えて、彼女のことも家族に紹介するのだった。温かいソンムン家族に癒された真理子は、元気を取り戻し、また夢にむかっていくのだが、、、。
この頃すでに、ソンムンに任される仕事はエスカレートしている。
人殺しをするよう命令が下され、しかもその相手は、在日の実業家で、真理子の父親であることを知ってしまう――。

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恋模様とはまだいえないほどの、ささやかなふたりの出会いと別離は、さりげなくてちょっぴり切なかった。
年上の謎めいた青年に恋する真理子の気持ちはよくわかるけれど、ソンムンはなぜ、彼女に惹かれたんだろう。出会ってすぐに、恋に落ちるようなシーンはない。
下校時刻になると門の前に現れて、律義にボディガードを続けるソンムンは、真理子の前途ある希望に満ちた青春に触れてこころ癒されている、そう捉えるのが自然。女性として愛しているふうな関係とは、すこし違う。

暗闇に生きる男と少女の純粋な愛、ありがちなテーマだけれど、ひとつひとつの要素に魅力はあった。カヴァレリアの合唱、真理子が通学につかう連絡船、下関の坂の多い町、ボディガード・・・・。
でも要素と要素のあいだに化学反応はおこらず、ざんねんなまま終わってしまい、勿体のないかんじ。『レオン』を100倍に希薄化した印象に留まる。
たとえば、ヒロインが宮崎あおいだったら? もっといい映画になっていたかもしれない。ファミリーで作る作品は、たまにそんな残念なことが起こってしまう。
カサヴェテス、ファミリーのように相乗効果となればステキだけど。


†   †   †


原作・監督・脚本/ 奥田瑛二
撮影/ 石井浩一
音楽/ 稲本響
出演/ 佐々木崇雄  安藤サクラ  石田卓也  北村一輝   夏木マリ

(カラー/123min)





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Last updated  2010.12.08 06:23:13
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