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テーマ:読書(8607)
カテゴリ:本
『インド夜想曲』がステキであったアントニオ・タブッキの小品集。 ポルトガルに魅せられたイタリア人作家のタブッキが、ある夏の日々に過ごしたアソーレス諸島での記憶から生まれたという。 読書しながら浮遊して、幻想の中で、アソーレスを旅している気分になる。 充足感のある豊饒な旅。『インド夜想曲』でもそうだった。 舞台となったアソーレス諸島は、ポルトガル沖、約1000kmの大西洋上に浮かぶ九つの島だ。 この地を舞台に、書簡、捕鯨の航海記、情緒ある恋物語などが、詩的に断片的に綴られていく。巻尾には大昔の地図と補注、遊び心でクジラによる<あとがき>まである。 隠喩と象徴の可能性を極限まで押しすすめたという文章の、摩訶不思議なる魅惑の世界は、わたしにははじめての読書感覚で大好きになってしまった。ダブッキの著作は、これからもっと読んでいこう。 ここで描かれる捕鯨行のドラマティックな記述を、自然保護団体やらシーシェパードのみなさんならどう感じるんだろう。『白鯨』などにも、浪漫はわかないのかしら。 2009年製作の映画『The Cove』では、日本のイルカ漁の様子がドキュメンタリーなって物議を醸したっけ。人間はなんでも食べるんだから、そんな目くじら立てなくてもいいのに、と思う。あたりまえに鯨ベーコンを食べて育った世代ゆえなのか。 (あらすじ)ポルトガル沖合はるか遠方の、アソーレス諸島に繰り拡げられる、クジラと難破船と愛の物語―。幻想味が絶妙の鬼才が、その実験的小説作法を極限にまで押しすすめ、織りあげた、詩的で象徴性豊かな小品集。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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