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行きかふ人も又

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2010.12.12
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カテゴリ:多国合作映画

  巨匠テオ・アンゲロプロス監督による、ギリシャ現代史の雄大な一大叙事詩。3部構成となる予定で、本編はその1作目。

  1919年。ロシア革命によってオデッサから追われ、難民となったギリシャ人の一群が東を目指して歩いていた。革命で両親を失ったエレニは、一行のリーダー格、スピロスに拾われ、家族の一員として育てられる。
およそ10年後、スピロスたちは新たな村<ニューオデッサ>を築き住みついた。エレニはスピロスの息子アレクシスと恋に落ち、彼の子供を身篭るのだが、生まれた双子は、スピロスの怒りを怖れた周囲の大人たちによって養子に出されてしまう。
やがて、スピロスは妻ダナエを亡くし、成長したエレニを娶ろうとするが、結婚式から逃げ出したエレニはアレクシスと共に、駆け落ち同然に村を去るのだった――。

the Weeping Meadow.jpg


 祖国と両親を失ったときから、エレニの旅は始まった。なにも持たない、か弱いひとりの女性が、ただ愛する人と手を繋ぎ合って生きている。
不確かな未来に、不安定な暮らし。けれど彼らには常に音楽があった。豊かな情緒たっぷりな音楽に抱かれながら、不安と希望を抱きながら、深く愛し合うエレニとアレクシスが切ないほどに強い。

独特な時間感覚のなか、予測できないことばかり起こる、3時間の長尺といえ眠気とは無縁な世界だ。
長回しと、生命力に満ちる水に覆われたスクリーンの数々。人の魅力、情感ある音楽の魅力、途切れることのない映像美が圧倒されるほどすばらしい。

<ニューオデッサ>で一度手放した我が子と、旅の途中で再会し、手元に引き取ったエレニとアレクシスは、少しずつ家族4人の絆を深めていく。しかし、困難は続く。
スピロスの死、村の水没、アコーディオンの名手であるアレクシスの夢を懸けた渡米による別離・・・・。止めを刺すように、ファシズムの嵐が吹き荒れ、エレニは音楽仲間のレジスタンスを匿った罪で逮捕され投獄されてしまうのだった。

なんにも持たなくても、故郷を失っても、泣いても、愛する人と手を取り合っていたエレニのささやかな幸せさえ、結局戦争によって引き裂かれてしまう。
内戦の終結とともに釈放されたエレニには、もう愛する家族は残されていない。アレクシスも最愛の息子たちも、それぞれに戦死を遂げ、泣き崩れるエレニがただ、ひとり残されるばかり―――。
寓話に似た語り口と、象徴的な画。それに救われた。でなければ、切なくてやりきれなかったと思うから。


†   †   †


監督/ テオ・アンゲロプロス
脚本/ テオ・アンゲロプロス トニーノ・グエッラ ペトロス・マルカリス ジョルジオ・シルヴァーニ
撮影/ アンドレアス・シナノス
音楽/ エレニ・カラインドロウ
出演/ アレクサンドラ・アイディニ  ニコス・プルサディニス  ヴァシリス・コロヴォス

(カラー/170min/フランス=ギリシャ=イタリア合作/TRILOGIA I: TO LIVADI POU DAKRYZEI)





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Last updated  2010.12.12 22:57:45
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