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行きかふ人も又

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2010.12.14
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カテゴリ:日本映画

 原作は、二十代半ばに読んでいた。なか身はもうほとんど忘れてしまったけれど、もやっとして好きじゃなかった記憶だけが残っている。
この映画が、もし、トラン・アン・ユン監督でなかったら、劇場へは行ってなかった。

内容の情報はちまたに溢れているので、わたしはまったく偏見だらけの感想を書いてみよう。
素直な一番の感想は、『青いパパイヤの香り』『シクロ』のときの上質な感覚はない。原作を読んだ時とおなじもやもやが湧いてくる。やっぱりこの小説自体が好きではないのだ。

昭和40年代、学生運動。若いうちだけに経験する初めての純愛――

それには最初から最後まで性がついてまわる。邦画でセックスに関する言葉のやりとりがここまで描かれる、ましてや売れっ子の若い役者たちがそれを演じていることは、たしかに斬新だった。
欧米の作品では見慣れていることも、日本語になって言葉の壁がなくなると、より身近で生々しい。
ヨーロッパ映画のような詩的な会話劇は、トラン監督の感性で編まれたものだろう。上品でインテリぽいのも原作の雰囲気とおなじ。

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 「死生観を孕んだ深く美しい世界観」
 「1つの事件であり、1つの奇蹟である」
 「今こそ『ノルウェイの森』が必要なのだ」


宣伝文句をチラシから拾ってみる。配給元の過大評価甚だしいと思わずにいれなかったけれど、悔しいかな、いまはもう一度、原作を読み返してみたくなってきた。
いつか古本屋に持っていって、売れ残った赤い一冊の上巻を、本棚から出してきた。下巻を買うかはわからないけれど、とりあえず読み始めてみようと思う。

松山ケンイチ、菊地凛子、水原希子の熱演は好印象で、映像美も健在だった。音楽もよかった。
133分は長く、普遍的なことであるのか疑問を抱き、死生観を感じとることはできなかった。

哀しみを哀しみ抜いて、そこからなにかを学びとることしかできない。それでも次にくる哀しみには打ちのめされてしまう――。
それなら、哀しみ抜いたワタナベの行為こそが哀しいなぁと思うのは私だけなのかな。
小説を読み返したら、加筆します、たぶん。





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Last updated  2010.12.25 20:05:26
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