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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:日本映画
交通事故で記憶を失った兄ハルオと、兄を愛する妹アイス。アイスは自分を恋人と偽り、ふたりで暮らすようになるが、やがてハルオの記憶は徐々に戻り始める――。 90年代の大好きな雰囲気にほだされて、とても惹かれてしまう。 気だるい昼下りに、ひとりで観ていたい。 淡い逆光の部屋。生活感のない日々。 アナーキーな日常に映るとしても、彼らに流れている思いはとてもピュアだ。 病院から連れ帰ったハルオと暮らしはじめるのは、一脚のイスと、大好きなアイスクリームを入れる冷蔵庫だけの殺風景な部屋。 ふたりの生活を守るため、アイスはなんの迷いもなく売春を繰り返していく。記憶を失った無垢なハルオは、その真実を知らないまま、無邪気に暮らしている。 遠くに聴こえる解体現場の音。街の喧騒。 とびきり美しい映像に、内容のダークさと破壊する行為はよく似合う。 常識やモラルにがんじがらめでいることから解放されるカタルシス。インモラルな恋愛だとしても、カタチはどうあれふたりの幸せを願いたくなる。 やがて、回復したハルオは、近所の解体現場で働き始めた。記憶が戻らない限り、このままずっと幸せが続けばいいと願うのに、兄は少しずつ記憶を取り戻してしまう。 戸惑い、未来を悲観したアイスは、彼の前から忽然と姿を消し、そして兄は、妹を愛していたことと、彼女の切ない嘘をはっきりと思いだすのだった――。 タブーとはいえ、幸せな結末がしっくりときた。愛の結晶が生まれるなんて、たしかにびっくりな展開だが、この際なんでもありさえ許してしまえるほど、無垢な面を持ち続けるふたりの恋愛は好きだった。 けして一般ウケはしないだろうけれど。 監督/ 矢崎仁司 脚本/ 宮崎裕史 小野幸生 矢崎仁司 出演/ 趙方豪 由良宜子 奥村公延 (カラー/118分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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