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行きかふ人も又

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2011.02.17
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テーマ:読書(8606)
カテゴリ:

 ある中年婦人の、倦怠した家庭生活と放恣な夢とを、敗戦後の市井が映し出された風俗の中に描いた名短編「妖」を中心に、「家のいのち」「くろい神」「虚空の赤んぼ」「男のほね」「殺す」「耳瓔珞」「妾腹」「水草色の壁」「二世の縁 拾遺」の、全十編を収録する。


 「伊勢物語」などの古典が内包されていておもしろい――そうおすすめしていたのは、こちらもやはり河合隼雄さんだった(はず)。
前半、やや戸惑ったけれど、途中から嘘ようにおもしろくなった。

作者は幼いころ体が弱く、早くから古典や江戸末期の頽廃耽美趣味に親しんだという。
なるほど、現代なのだけれど(初版は50年前だが)、妖しい不気味さが漂って、耽美。女にしかわかりにくいと思われる、女ならではの感情が溢れている。

時おり湧く自分のなかの感情も、50年前とさほど変わらないのだと知って、女たちはもうずっと同じように悩んきたのだと、、うれしいやら悲しいやら。

入院ベッドで眠れぬ夜を過ごす女の話、病気で子宮を摘出した妻の話、戦後の日本を背景にした物語。どれも少なからず、自身の経験からヒントを得て生まれた作品のようだった。
ただならぬなにかが蠢いている、ときどき艶めかしい、悩ましいような短編集。
古風でいてビビット、狂気とまではいかないが精神の薄弱さみたいものがつきまとう。

こんな小説を書く円地文子さんが『源氏物語』現代語訳を手掛けたことが、すごくなっとくして思えた。





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Last updated  2011.02.19 13:14:21
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