塚本晋也監督の映画をはじめて観たのは、5年前。
『鉄男』だった。
片っぱしから監督作品を観ていくうち、いつの間にか
一番に気になる敬愛する監督になっていた。
この本、塚本晋也ファンなら垂涎ものだと思う!
これまでの作品が、どんな環境で、どんな気持ちで作
られたのかわかる。
前半は主に出演者の証言、後半は塚本氏自身の証言、ページ数にして390ページという、
充実のコンテンツ。
おなじく2003年にキネマ旬報から出ている同タイトルの本があるけれど、鉄男シリーズ新
作を受けて発売されたこちらのほうが、ずっと読み出がありそうだ。
そうして読んでいるあいだ、偶然みたのがこの北野武監督の『HANA-BI』だった。
『HANA-BI』
本編は、ベネチア映画祭で金獅子賞を受賞しているれけど、その時、審査員席に座り、本
作を推したのが、われらが塚本晋也氏だったというのだから、それはそれはすごい。
キタノ作品にしっくりきたことは、あまり多いとはいえず、こちらは私的に訴えてくるものはま
ずまず。
たとえば暴力映画を作るのが好きとして、それをスピルバークのように感動に持っていく――
そういう一本だった。(新作の『アウトレイジ』は暴力に徹していたが)
自分が心底好きなのは、暴力に徹した塚本調であり、その音楽であり、熱さなんだとあら
ためて思う。
音楽は久石譲さん、あらゆるシーンに登場する数々の絵は北野監督自身によるもの。
挿入絵画の多さが弱冠しつこいとはいえ、いくつか好きな絵はあったし、鮮やかな色彩に
ハッとする。
<元刑事の男が、癌で余命幾ばくもない妻のために銀行強盗をして、逃避行の旅にでる物語。>
女のわたしなんかにしてみれば、妻に尽くす男の姿が、どうにもキレイゴトに思えてしかたが
なかった。
妻はほんとうにそれを望むのか――男の幻想でしかない部分が往々にしてある気がする。
久石さんの感動的な音楽と、センチメンタルな夫婦愛がよく似合う。
そしてお決まりの"海"で・・・・デッドエンド。絵に描いたような物語。