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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:日本映画
鉄男シリーズに新作、しかも海外進出というニュースを耳にしたとき、うれしかった。 結局、調節がうまくつかず、製作に名乗りをあげるいい会社も見つからなくて、いつもの スタイルになってしまったそうだが、塚本節は健在。 主役にアメリカ人のエリック・ボシックを迎えて、全編ほぼ英語。 激しい怒りとともに鋼鉄の肉体へと変貌していく男の姿を、変わらないパワフルさで、スピ ードフルに描いていく。 『鉄男TETSUO』が生まれたのは1989年。世界各国で上映され、絶賛されたサイ バー・パンク・ムービーは、これがシリーズ3作目。 舞台は東京。とある企業に務めるアメリカ人のアンソニーは、妻と息子と3人で幸せに 暮らしていた。だがある日、最愛の息子を、謎の男(塚本)に誘拐され殺されてしまう。 絶望のなか、息子が殺された理由を追う彼は、悲しみに壊れた妻の責め苦に冷静さを 失いながらも、やがて解剖学者だった父が関わっていた“鉄男プロジェクト”に辿り着くの だが―――。 鉄男シリーズの醍醐味は、理屈などない、かくもおぞましき怒涛の展開に引き込まれて いく、そういう無二の映像体験にあった。 20年を経た新作は、すっかりストーリーと背景をまとい、長い歳月のなかで身に付けた 様々な映像手法や感性によって立派になって、当然あのころの強烈さや、熾烈を極めた 撮影風景の息吹のようなものは薄れてしまっている、、。それは仕方のないことなのだ。 その間、塚本氏は家庭を持ち、すっかり一児の父親に。守るべきものを持った、これか らの更なる進化が楽しみだ。 ギラギラ時代を通り過ぎ、これからは、もっと『ヴィタール』で描いた形而上的な世界観を 、変わらないビジュアルで見せてくれそうな予感がする。 いままで、あまり気に止めてこなかったけれど、いつも塚本作品の音楽を手掛けてきた 石川忠さんによるテーマ曲を聞いた時、自然とわくわくする自分がいた。これから始まる ぞ!というわくわく。 意識して聞くと、相性の良さが、すごくよくわかる。 自身の身体が鋼鉄に変化していく――恐怖と怒りに支配された男の運命は、受容する ことによって救われていく。監督のやさしさを感じるラストがいい。 ヤツという名でキレた役を熱演する塚本氏は、やはりキチガイじみてて素敵なのだった。 原作・監督/ 塚本晋也 脚本/ 塚本晋也 黒木久勝 撮影/ 志田貴之 林啓史 音楽/ 石川忠 出演/ エリック・ボシック 桃生亜希子 中村優子 塚本晋也 (カラー/71分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.07.21 00:07:17
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