富士三十六景 武蔵野毛横はま
今回の横浜の浮世絵シリーズは、突然に横浜開港前の話になる。浮世絵といえば、歌川 広重(初代広重)の登場であります。歌川 広重は、『東海道五十三次絵』で有名なのである。永谷園のお茶漬け海苔の”おまけ”の浮世絵カードだ。そんな、歌川 広重が描いた横浜の絵がある。初代広重 富士三十六景 武蔵野毛横はま 安政5(1858)年横浜開港の1年前の絵だ。初代広重は、この年に亡くなっている。この絵は、各地からみえる富士の情景を初代広重が描くシリーズの 1枚。野毛の山から眼下に横浜を見下ろし、大山・富士を遠望している。中央やや左側から下部へ向かって伸びる陸地が、現在の山下町から神奈川県庁を経て弁天橋へ続く辺りであり、数年後には外国人の居住する開港場へと大きく変貌することとなる。帆掛船がのどかに行き交う右下部の海の奥には吉田新田が存在する。上方中央に位置する富士山の右斜め下にみえるのが大山である。若干、東西南北があやしい気がしないでもない。砂州の寒村、横浜村の全体図であります。