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カテゴリ:答唱詩編
27 栄光は世界におよび
【解説】 詩編147(ここでは前半)は、詩編集の最後にあたる《ハレルヤ詩編》の一つです。現在、『聖書 新共同訳』などの底本となっている " Bibilia hebraica stuttgartennsia" (ヘブライ語)では、一つの詩編となっていますが、「七十人訳(ギリシャ語)」や「ブルガタ訳(ラテン語)」では、1節-11節を詩編146(その前までの詩編はも一つずつ番号が繰り下がる)とし、12節以降を147としています。現在の研究では、この詩編を一つの詩と考えるヘブライ語の原典のほうが、正確と考えられています。 この詩編は、全部で三つの部分に分かれていますが、それぞれのはじめの部分に、主ヤーウェに対する賛美のことばが、語られています。第一部は1節-6節、第二部が7節-11節、残りが第三部です。第一部では主に、バビロン捕囚からの救いのわざが神の星への支配で、第二部では、豊作が雲に対する支配で、暗示されて語られています。これは、周辺諸国で、星辰崇拝などが行われていたことと関係があると思われます。これらによって、この詩編は、捕囚からの解放と豊作という、歴史と自然の中で働かれる神をたたえています。 《ハレルヤ詩編》詩編集の巻末に置かれた詩編146から150は、はじめと終わりに「ハレルヤ」が置かれているので、このように呼ばれる。なお、詩編113から118も、ユダヤの伝承では「エジプトのハレルヤ」を呼ばれ、過ぎ越しの会食で唱えられてもので、こちらを特に〔ハレルヤ詩編〕と呼ぶことが多い。 答唱句は冒頭、音階の第三音から、上行音階の、しかもユニゾン(すべての声部が同じ音)で始まり、四声に分かれる「世界」で、旋律は前半の最高音Cis(ド♯)に達しています。この間、バスは「栄光は」から「世界」で、6度下降跳躍しています。これは、作曲者が「時間と空間を超越した表現」として用いる、旋律の6度の跳躍の反行にあたります。これによって、また和音の広がりによっても、神の栄光の世界への広がりが現されています。その後の「世界におよび」で、旋律は音階で属音E(ミ)に下降しますが、天におられる神の栄光が、世界(全地)に行き渡る様子が示されます。 後半、旋律は和音構成音で上行し、「かみ」で、答唱句全体の最高音D(レ)に達し、バスとの広がりも、2オクターヴ+3度という、原則として、もっとも広いものになり、神の栄光、神の偉大さが現されます。最後の「神は偉大」には「-」(テヌート記号)が付けられており、これによって、このことばが一音節づつ力強く歌われるようになっている。 詩編唱は、高音部のCis(ド♯)から力強く始まり、落ち着きと壮大さをもって、音階で下降します。 【祈りの注意】 解説にも書いたように、答唱句は全体、力強く歌います。しかし、冒頭のユニゾンの上行音階は、cresc. したいので、最初からf では、後が続きません。最初は、やや、弱め(ただし精神は冒頭から力強く)で歌い始めましょう。「世界に」で、前半の最高音になりますから、のどと胸を開いて歌いましょう。バスは、特に力強く、また、深い声で歌ってください。その後、旋律は、いったん下降しますから、少し、dim. するとよいでしょうか。「すべてを」からは、また、上行しますので「かみ」に向かって cresc. しましょう。最後の「神は偉大」は「-」(テヌート記号)が着いていますから、答唱句の中では、もっとも力強く、地面を踏みしめるように歌いますが、一つ一つが飛び出したようになってはいけません。あくまでも、祈りとしてふさわしい、レガートの中でのテヌートであることを忘れないようにしましょう。 テンポは四分音符=66ですが、あまり、早くなると、せっかちに聞こえます。力強さを現すためにも、雄大さが感じられるテンポを考えましょう。だからといって、冒頭のユニゾンがだらだら歌われると、全体のしまりがなくなります。ここは、階段を一気に駆け上がる気持ちで歌うとよいのではないでしょうか。 詩編唱は、第一朗読のヨブ記と福音朗読の、本当に橋渡しのようなかっこうです。ヨブ記では人生の苦悩が語られますが、詩編唱では、それを受けて「神は失意の人々を支え、その傷をいやされる」ことが述べられます。それは、イエス・キリストの到来によって、まず、シモン・ペトロの姑において、現実のものとなったのです。答唱句も、詩編唱も、この、神の栄光の現われをたたえて歌われます。詩編唱を歌うかたは、この確信を、こころに刻みつけ、自らのものとして歌ってください。それが、一回毎に、答唱句を、その確信によって、なお、力強いものとするからです。 【参考文献】 『詩編』(フランシスコ会聖書研究所訳注 サンパウロ 1968) 『ともに祈り・ともに歌う 詩編 現代語訳』典礼委員会 詩編小委員会訳(あかし書房 1972 ) 石黒則年『詩篇』新聖講解シリーズ 旧約12(いのちのことば社 1988 ) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.01.18 13:04:05
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