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カテゴリ:答唱詩編
59 神のわざを思い起こそう
【まえおき】 通常、週日(主日・祝祭日・記念日以外)の答唱詩編は扱わないのですが、今回は、2月11日(建国記念の日)に大阪教区の岸和田教会で、「高田聖歌の心を学ぶ会」(テーマ=「聖 週 間 の 典 礼」)が行われ、わたくしも講師の一人として出席します。そこで、この日の締めくくりに行われるミサの答唱詩編として歌われる、「59 神のわざを思い起こそう」を今回は取り上げます。 【解説】 この答唱詩編が、主日に歌われるのは9月14日の十字架称賛の祝日が主日と重なった場合だけです。 この、詩編78は、創世記後半のヤコブ物語を端緒として(1-8節)、出エジプトと荒れ野における40年の彷徨(12-55節)を中心にして、最後はダビデの統治に至る(56-72節)、イスラエルの歴史を歌っています。この歌は、申命記32章1-44節にある、「モーセの歌」と似ており、内容も、南北分裂以前であることから、かなり古い時代に書かれたものと考えられています。 マタイ福音書13章35節では、詩編の2節=詩編唱の1aの3小節目を引用して、イエスがたとえを用いて語ることは「預言者を通して言われたことが実現するためであった」(同)といわれています。なお、「たとえ」には過去の出来事に隠された教訓の意味も含まれています。 答唱句はこの詩編全体の要約を現しています(答唱句の様式については、ホームページの「答唱詩編」の中の「答唱句の種類」をご覧ください)。「起こそう」は、前半の最高音H(シ=ゴシック)と5度の下降(赤字)によって、この呼びかけが強められています。後半の「ちからある」の6度の跳躍(赤字)と最高音のCis(ド♯=ゴシック)で、歴史全体に働かれる神とその力(δυναμιs=デュナミス)が表現されています。また、二回出てくる「わざ」は、旋律がE(ミ)-A(ラ)という同じ音型で統一されており、その神の働きを意識させています。 詩編唱は、ことば数も多く、神による、古代イスラエルの救いの歴史が、淡々と畳み掛けるように歌われます。1小節目→2小節目、2小節目⇒3小節目は、それぞれ、旋律が同じ音で続き、アルトは半音上がり、精神的緊張と持続を高めています。 【祈りの注意】 答唱句の旋律は、かなり跳躍していますが、祈りの基本であるレガート(滑らかに歌うこと)を心がけましょう。四分音符=80くらいですが、あまりあわてないようにしたいところです。なぜなら、この後、詩編で救いの歴史のことばが、畳み掛けるように語られるからです。 今日の第一朗読は、列王記12:26-31、13:33-34で、王国分裂のきっかけとなった、ヤロブアムの背信行為が語られます。詩編唱は、この朗読を受けて、2bと5aが歌われます。ヤロブアムの背信行為は、やがて王国全体に広がり、ついに、北のイスラエル王国は、南のユダ王国よりも約140年早く滅亡します。 なお、週日(記念日も含め)の朗読は、第一朗読が二年で一回り、福音朗読が一年で一回りするように、『聖書』の記載順にしたがって読んでゆく「準継続朗読」(必ずしもすべての章・節が読まれるわけでもないので)となっているので、第一朗読と福音朗読の間に、主日のような、関連性は特にありません。 さて、今日は2bと5aが歌われますが、詩編の1節ごとに答唱句を挟んで歌います。つまり
現在も、最近、いろいろな事件で騒がれているように、神様よりも、人間の作った事のほうが大切という、偶像礼拝・偶像崇拝が、いずこでも見受けられます。わたしたちも、ついつい、そのようなことにこころを奪われないように、今日の朗読を、深く味わい、こころに刻み付けたいものです。 【お知らせ】 この、59 神のわざを思い起こそうは、不肖、わたくしがアドバイザーを務めた、「典礼聖歌アンサンブル」のCD『四旬節の聖歌』に全詩編唱が歌われています。ぜひとも、お聞きいただきたい一曲です。 【参考文献】 『詩編』(フランシスコ会聖書研究所訳注 サンパウロ 1968) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.01.23 19:16:21
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