|
カテゴリ:答唱詩編
112 主はのぼられた
【解説】 詩編47は、詩編93や96-99と同じく、神の即位式、あるいは、契約の箱の行列の歌などで用いられたなど、学者によって解釈が分かれていますが、次の、詩編48とともに、神である主が全宇宙を治めておられることを歌った、王である神をたたえた詩編です。教会は、この詩編を、特に6節の「神は喜びの叫びのうちに、角笛の響きとともにのぼられた」を中心にして、キリストの昇天と結びつけ、主の昇天の祭日に歌ってきました。 答唱句は、まず、力強くバスとテノールの伴奏が、八分音符一拍早く始まります。ホームページの「答唱詩編」のページにも書きましたが、旋律はミサの式次第の旋律の最低音のD(レ)から始まり、上昇するための弾みをつけるように、あるいは、主が陰府に下られたことを象徴するかのように、いったん低いD(レ)に下降し、その後、喜びの叫びをともないながら最高音へと上昇してゆきます。「のぼられた」で、旋律とアルトが付点四分音符延ばす間、バスとテノールが八分音符一拍早く「よろこび」を歌いだし、しかも2度上がることで、上昇と喜びに弾みをつけています。「よろこびの」と「さけび」の間に、ソプラノとテノールでは八分休符があり、「の」の助詞の表現と「さ」のアルシスを生かしていますが、同時に、アルトとテノールは休符分、やはく「さ」を歌い始めることで、祈りの気持ちを継続させています。最後に、旋律は、最高音のH(シ)に達し、主が天(神の国)に昇られた様子を表しています。 詩編唱は、A(ラ)から始まり、一小節ずつ下降してきて、答唱句の冒頭の音=D(レ)に戻りますが、これは、弟子たちが、主が昇天されたオリーブ山からエルサレムへと降りてきた様子を象徴しているようです。 やはり、ホームページの「答唱詩編」のページにも書きましたが、この答唱詩編は、次の「聖霊降臨」の祭日に歌われる68・69「神よあなたのいぶきを」と対になっています。この二つの詩編の歌は、答唱句で歌われることばだけではなく、典礼暦年とミサの式次第の双方の流れを考えて作曲されているのです。 【祈りの注意】 解説にも書いたように、この答唱詩編は、主の昇天の祭日とばかりではなく翌週の聖霊降臨の祭日も考慮して作られています。 冒頭、旋律で八分休符になっているところにも、オルガンの伴奏がありますので、まず、このオルガンの力強い伴奏(主が力強く大地を踏みしめるような)をしっかりと聴き、その弾みを生かして、活き活きと歌い始めましょう。だらだらとした歌い方では、昇天(主が父の右の座に座られた)のよろこびがうせてしまいます。かといって、早すぎては、弟子たちから逃げるように聞こえてしまいます。指定速度を参考にしながら、答唱句の祈りにふさわしい速さにしましょう。途中の「のぼられた」で、わずかですが、いったん rit. してはどうでしょうか。ただし、次の「喜び」できちんと元のテンポに戻します。この場合、テンポを戻すところは、旋律の「よ」ではなく、バスとテノールが八分音符一拍早く始まるところであることを気をつけてください。ここで、きちんと戻さないと、どんどんテンポが遅くなり、祈りにしまりがなくなります。 答唱句の最後は「叫びのうちに」の「び」の途中くらいから rit. を始め、さらに、 dim. して、主が雲間に見えなくなった様子を表現したいものです。最後の答唱句は、さらに、これらをよく表現して、第一朗読から福音朗読ばかりではなく、聖霊降臨の答唱詩編「神よあなたのいぶきを」にまで余韻が残るようにしたいものです。 詩編唱は、その内容と祭日のないようにふさわしく、力強く歌い始めましょう。そして、弟子たちがオリーブ山からエルサレムへ下りてきて、聖霊の派遣を待ち望むように、また、主の再臨を心の奥底で待ち望むように、わずかずつ音量を絞りますが、やりすぎにならないようにします。全体的には、mf の範囲内で行いましょう。音の良としては、力強く始まった詩編唱の終わりが、自然に答唱句の冒頭にバトンタッチできるとよいでしょう。しかし、詩編の精神的中心は、いづれの節も四小節目にあることを忘れないでください。つまり、精神的な力強さの頂点は、四小節目にあるのです。詩編を歌う方は、これらの、一見パラドクスに感じる表現を、しっかりと、よい祈りとすることができるように、この日の朗読全体を黙想してください。 最後に、何回も書いていますが、この答唱詩編は、聖霊降臨の答唱詩編と対になって作られていますから、この、答唱句の余韻が聖霊降臨の答唱詩編まで残るように、共同体全体がしっかりと準備をしたいものです。 《この答唱詩編のCD》 「典礼聖歌アンサンブル」『復活節の聖歌』 【参考文献】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.05.07 17:12:19
|