|
カテゴリ:答唱詩編
81 神よわたしに目を注ぎ
【解説】 今日の答唱詩編の詩編85は「平和の回復を求める祈り」と言われています。カナンに定住以前はもちろん、定着後も、イスラエルは周りの国々からの侵略に脅かされ、「平和」を享受することは、なかなかできませんでした。特に、バビロン捕囚による打撃は大きく、回復の希望を持つことすらできないほどでした。神の約束される「平和」は、ただ単に「争いがない」状態ではありません。神が神として認められ、神の支配が満ち満ちていることが「平和」なのです。 答唱句は、最初の2小節、中音部→三度の下降→二度の上行を繰り返します。「目を注ぎ」は、前半の最高音が用いられて、神の救いのまなざしが暗示されます。後半は、G(ソ)→C(ド)という四度の跳躍と付点八分音符+十六文音符のリズムで「強めて」を強調します。さらに、この部分、「強め」では、和音もソプラノとバスが2オクターヴ+3度開いていて、これによっても強調点が置かれていることがわかります。「ください」は、倒置の終止を表すために、ドッペルドミナント(5度の5度)という、属調での終止を用いています。が、すぐに元調へ戻り、反行を繰り返しながら終止します。 詩編唱は、グレゴリオ聖歌の伝統を踏襲し、属音G(ソ)を中心にして歌われます。 【祈りの注意】 答唱句で最初に繰り返される音形は、畳み掛けるように歌いましょう。この部分をメトロノームではかったように歌うと、祈りの切迫感が表せません。「神よ」と「目をそそぎ」という、四分音符の後の八分音符を、早めの気持ちで歌います。上行の部分も、上り坂でアクセルを踏み込むような感じで歌うと、祈りの流れが途絶えません。冒頭はmf 位で始め、上行毎に cresc. して、「強めて」で頂点に達し、音の強さも気持ちもff になります。その後は、徐々に、 dim.しながらrit. しますが、精神は強めたまま終わらせましょう。最後の答唱句では、特にこの rit.を豊かにすると、いつくしみの目を注いでくださり、強めてくださる神の手が、静かに優しくわたしたちの上に伸べられる様子が表されるでしょう。 今日の第一朗読と福音朗読では、預言=宣教、すなわち、神のことばをのべ伝えることがテーマとなっています。この、神のことばを受け入れることが、すなわち「平和」ということになるでしょう。詩編では、「正義と平和はいだき合う」(詩編唱4節)、「正義は神の前を進み、平和はその足跡に従う」(詩編唱5節)というように、「正義」と「平和」は、切り離せない関係にあります。 もう一つ加えるならば、詩編唱の4節には「栄光はわたしたちの地に住む」とありますが、この「栄光」は、ヨハネ福音書1:14で「父の独り子としての栄光」と言われている、主キリストに他なりません。詩編唱では、「地に住む」と現在形が用いられていますから、主は今もわたしたちとともにおられる=インマヌエルのです。 《この答唱詩編のCD》 「典礼聖歌アンサンブル」『待降節・降誕節の聖歌』(詩編は異なります) 【参考文献】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.06.26 10:55:47
|