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聖歌は生歌

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2007.07.16
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カテゴリ:答唱詩編
35 神に向かって

【解説】
 今日の詩編唱で唱えられる詩編95:1-2から、この答唱詩編の答唱句が取られています。この詩編95は、神殿の神の前に進み出て礼拝を促す(2節)巡礼の形式で始まります。後半は、荒れ野における歴史を回顧し、神に対する従順を警告しています。1節の「救いの岩」をパウロは、1コリント10:4で「この岩こそキリストだったのです」と述べ、この前後の箇所では、イスラエルの先祖が荒れ野で犯した、偶像礼拝について記しています。また、ヘブライ3:7-11,15でもこの箇所が引用され、キリスト者も不信仰に陥らないように警告しています。
 8節の、「きょう、神の声を聞くなら、・・・・ 神に心を閉じてはならない」という箇所から、この詩編は、『教会の祈り』で、一日の一番最初に唱える「初めの祈り」の詩編交唱の一つになっています。「きょう」ということばは、ただ「昨日」「今日」「明日」という、連続した日の一つではなく、このことばによって、今、読まれる、あるいは、読まれた神のことばが、そのときその場に実現することを意味しています⇒《祭儀的今日》。ナザレの会堂でイザヤ書を読まれたイエスが、「この聖書の言葉は、今日あなたがたが耳にしたとき、実現した」(ルカ4:21)と話されたことを思い起こしてください。
 答唱句は、冒頭、旋律が「神に向かって」で和音構成音、「喜び歌い」が音階の順次進行で上行して、最高音C(ド)に至り、神に向かって喜び歌うこころを盛り上げます。また、テノールも「神に向かって」が、和音構成音でやはり、最高音C(ド)にまで上がり、中間音でも、ことばを支えています。前半の最後は、6度の和音で終止して、後半へと続く緊張感も保たれています。
 後半は、前半とは反対に旋律は下降し、感謝の歌をささげるわたしたちの謙虚な姿勢を表しています。「感謝の」では短い間(八分音符ごと)に転調し、特に、「感謝」では、いったん、ドッペルドミナント(5度の5度)=fis(ファ♯)から属調のG-Durへと転調して、このことばを強調しています。後半の、バスの反行を含めた、音階の順次進行と、その後の、G(ソ)のオクターヴの跳躍は、後半の呼びかけを深めています。
 詩編唱は属音G(ソ)から始まり、同じ音で終わります。2小節目に4度の跳躍がある以外、音階進行で歌われますから、歌いやすさも考慮されています。また、4小節目の最後の和音は、答唱句の和音と同じ主和音で、旋律(ソプラノ)とバスが、いずれも3度下降して、答唱句へと続いています。

【祈りの注意】
 答唱句は、先にも書いたように、前半、最高音のC(ド)に旋律が高まります。こころから神に向かって喜び歌う」ように、気持ちを盛り上げ、この最高音C(ド)に向かって cresc. してゆきますが、決して乱暴にならないようにしましょう。また、ここでいったん6度での終止となりますし、文脈上も句点「、」があるので、少し rit. しましょう。ただし、最後と比べてやり過ぎないように。後半は、テンポを戻し、「うたを」くらいから、徐々に rit. をはじめ、落ち着いて終わるようにします。
 答唱句、全体の気持ちとしては、全世界の人々に、このことばを、呼びかけるようにしたいところです。とは言え、がさつな呼びかけではなくこころの底から静かに穏やかに、砂漠の風紋が少しづつ動くような呼びかけになればすばらしいと思います。
 第一朗読の「コヘレトのことば」では、「空しさ」だけが強調されますが、それは、神不在の人生を言っていることを忘れてはなりません。福音朗読では、それを示すかのように、人間的な努力だけで富を築き、自分のために富を蓄えても、神の前に豊かにならない人にとって、その富は、全く空しいものになってしまうことが語られます。このようのことにならないためには=神の前に豊かになるには、まず、「神の声に心を閉じてはならない」ようにし、「身を低くして(神を)伏し拝む)」ことが大切なのです。この、詩編を味わいながら、わたしたちは、常に、初心に立ち返る=神に心を向けることを肝に銘じたいと思います。


DVD《この答唱詩編のCD》
典礼聖歌アンサンブル」『四旬節の聖歌』

【参考文献】
『詩編』(フランシスコ会聖書研究所訳注 サンパウロ 1968)
 










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Last updated  2007.07.16 17:11:23



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