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カテゴリ:答唱詩編
71 神よあなたの顔の光を
【解説】 詩編121は、その前の詩編120から始まり、134まで続く「都に上る歌」の一つです。これら「都に上る歌」はエルサレムで年一回行われる祭りに参加する巡礼者が歌ったもの、というのが、一般的な見方です。他にも、バビロン(捕囚)からの期間の際の歌(エズラ7:7-9参照)であるとか、神殿の15の階段で、一段ごとに一つの詩編をレビ人が歌った習慣に由来する階段詩編だという見解もあります。1節と2節は対話の形をとっていて、巡礼者とリーダー、あるいは、祭司ないし若者の父と若者との問答と考えられます。8節(詩編唱の4節)の「旅路」は、直接にはエルサレム巡礼の旅路ですが、キリスト者にとっては、人生の旅路=キリストが歩んだエルサレムへの道、すなわち、受難を通して復活・昇天へと至る、神の国への旅路と考えることもできるでしょう。 答唱句は、詩編唱と同じように、各小節最後の四分音符以外は、すべて八分音符で歌ってゆきます。旋律は第三音のEs(ミ♭)から始まり、主音に降り、神が穏やかにその顔の光を照らしてくださる様子が表されています。旋律もその他の声部も動きが少なく、特にバスは他で歌われているすべての詩編に共通する、神への信頼を表すように、主音に留まります。 詩編唱も基本的にドミナントから段階的に下降しますが、各小節とも終止音は持続音より2度上昇しており、この反復が詩編唱に緊張感と安らぎを与えています。4小節目の終止の部分は、答唱句の終止の部分と同様に終わっています。 【祈りの注意】 答唱句の最初は、mp で始め、1小節目の終わりで、いったん rit. と dim. しますが、2小節目の冒頭で元に戻し、最後は、さらに rit. と dim. を豊かにして終わります。特に、最後の答唱句は、最初からp あるいは、pp で始め、早さも、一段とゆっくりします。とはいえ、祈りのこころ・精神は、一段と深く、強くしなければなりません。 解説でも書いたように、答唱句は各小節の最後の四分音符以外、すべて八分音符で歌ってゆきます。楽譜を入れることができませんので、ことばだけで書きますが、「ー」は八分音符一拍分延ばすところを、太字は自由リズムの「1」にあたる拍節を、*は八分休符を、赤色の字は音が変わった最初の音を、それぞれ表しています。 かみよあなたのかおのひかりをー*|わたしたちのうえにてらしてくださーぃ となります。 よく聞く歌い方で気になるのは、 1小節目=かみよーあなたのかおのひかりをー 2小節目=わたしたちのうえにーてらしてくださいー というように「かみよー 」と「うえにー」さらに「さいー」を延ばすものです。 もし延ばすのであれば、楽譜にきちんとこのように書いてあるはずです(たとえば367「賛美の賛歌」参照)。 「かみよー」ではなく「かみよ」、「うえにー」ではなく「うえに」となっていますから、この「よ」と「に」は、八分音符で歌い、すぐに、「あなたの」と「てらして」に続けなければなりません。 特に、「うえに」は、その後の「あなた」の「あ」と字間があいているので、あけるしるしと勘違いされることがありますが、ここで、字間があいているのは、楽譜を作る上での技術的な限界から来るもので、 実際に、歌い比べてみると、延ばさないほうがはるかに深い祈りとなるはずです。 2小節目の最後の「ください」も「くださいー」としてしまうと、品がない歌い方になります。「くださーぃ」と、「さ」を延ばし「い」を最後に添えるようにすると、品位ある祈りになります。 第一朗読では、イスラエルとアマレクの戦いが書かれています。このようなことが書かれていると、『聖書』や教会は戦争を肯定するのか?と誤解する人もいるかもしれませんが、そうではありません。『聖書』に書かれている部分も含め、歴史は神の定められた計画の完成に向かって進んでいます。もし、すでに、歴史が完成していたら、神が歴史にストップをかけているはずです。しかし、実際には、歴史は進んでいますから、まだ、神の目から見て、歴史は完成していないわけで、人類も(教会の宣教も)まだまだ、発展してゆくものなのです。言い換えれば、過去も含め、現在行われていることも、まだまだ、完全ではないということです。 話しがそれてしまいましたが、神は常に、ご自身の造られたものに、目を留めておられ、決して、見放したり、知らん振りすることはないのです。今日の詩編を味わいながら、わたしたちも、神が、いつもわたしたち一人ひとりに心をかけておられることを思い起こし、わたしたちが神の救いの完成のために必要な力をいつも与えてくださるように祈りたいものです。 この答唱詩編は、答唱句・詩編唱ともに、非常に繊細なものです。祈るわたしたちも、日本語の繊細さを生かしながら、細やかなこころで祈りを深めてゆきましょう。 《この答唱詩編のCD》 「典礼聖歌アンサンブル」『待降節・降誕節の聖歌』(詩編は異なります) 【参考文献】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.10.02 18:51:58
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