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聖歌は生歌

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2016.05.30
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カテゴリ:答唱詩編
《C年》

65 神はわたしを救われる

【解説】
 詩編30は瀕死の人が重病から救われたことを感謝する詩編です。死は「死の国(よみ)、墓(穴)、滅び、ちり、嘆き、荒ら布」などと表現され、いのち(=神の)は「喜び、恵み、踊り、晴れ着」ということばで対照的にたとえられていて、神による救いが強調されています。ここでは、歌われませんが、5節では、詩編作者が自らの喜びを人々にも一緒に歌うように促します(「神を信じる人は神をたたえ、とうといその名をほめ歌え」)。死から救われて神の救いにあずかることは、個人的なことだけにはとどまらず、共同体的な喜びへと広がってゆくものなのです。
 答唱句は、珍しくテージス(小節線の後ろ)から始まります。旋律の音は、G(ソ)A(ラ)、C(ド)の三つの音で、その他の声部の音も大変少ない音で構成されています。文末以外は、ほとんどが八分音符で、「すわれる」と「たえよう」で四分音符が用いられて、ことばが強調されています。とりわけ「たよう」では、アルトのAs(ラ♭)とテノールの最高音E(ミ)で、信仰告白のことばが高められています。さらに、テノールは冒頭から「いつくしみ」までC(ド)が持続して、神への信頼と救いの確信が表されています。
 詩編唱は、3小節目でバスに臨時記号が使われ(Fis=ファ♯)、緊張感が高められますが、4小節目は5の和音で終止し、旋律も答唱句の冒頭と同じ音になり、落ち着いて終わります。

【祈りの注意】
 冒頭は、指定の速度の、四分音符=72よりやや早めで始めるとよいでしょう。八分音符が連続しますので、メトロノームで計ったように歌うと、歌はもちろん祈りになりません。変なたとえかもしれませんが、ところてんを作る道具で、最初に、一気に押し出すような、そんな感じで始めるとよいでしょう。2小節目の「救われる」でやや rit. しますので、「わたしを」くらいから、わからない程度にゆっくりし始めます。「その」のバスが八分音符一拍早く始まるところで、テンポを元に戻します。最後の「いつくしみを」から、再びわからないように rit. して、最後はていねいに終わります。最後の「たたえよう」は、こころから神をたたえて、祈りを神のもとに挙げるようにしたいものです。
 この答唱句は「神はわたしを救われる」と現在形になっています。神の救いのわざ(仕事)は、かつて行われて終わってしまったのでもなく、いずれ行われるのでそれまで待たなければならないものでもありません。神の救いは、今もいつも代々に至るまで、継続して行われています。その、顕著なものが、やはりミサではないでしょうか。ミサは、キリストの生涯の出来事を思い起こす福音朗読と、その救いの頂点である受難-復活-昇天を記念=そのときその場に現在化するものです。このミサが世界のどこかで必ず継続して行われている。それをこの答唱詩編は思い起こさせてくれます。そのことを思い起こしながらこの答唱句を歌うことが祈りを深め、ことばを生かすことになるでしょう。
 第一朗読の列王記ではエリヤとやもめの対話で話が進んでゆき、やもめが最後にエリアがどういう人かが分かったと書かれています。しかし福音朗読ではやもめのことばは一つも書かれていません。その代わりにその出来事を見ていた人々が神を賛美しています。この違いが実は、エリアの出来事とイエスが行われたことの大きな違いとなっていることを黙想することが大切かもしれません。単に死んでいた人が生き返ったということで終わらせてしまっては、エリアの出来事もイエスの行われたわざも、科学的に立証できない摩訶不思議な出来事で終わってしまいます。わたしたちにとって命とは何か、命を与えてくださった方とはだれか、命は誰のためにあるのか、そういった原点をしっかりと振り返る機会にしたいものです。

【オルガン】
 答唱詩編の基本である、フルート系のストップの8’+4’をもとに、人数によっては4’を弱いプリンチパル系にしてもよいでしょう。指揮者がいない場合、オルガンの前奏が、会衆の祈りを左右しますから、のっぺらぼうのような前奏をしないようにしましょう。最後の答唱句は、賛美の歌声を支えるために、少し、強いストップ(たとえばプリンチパル系の8’とかフルート系の2’)を加えてもよいかもしれません。





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Last updated  2016.05.30 15:02:57



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