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聖歌は生歌

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2016.06.21
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カテゴリ:答唱詩編
《C年》

 98 しあわせな人

【解説】

 詩編16は元来カナンからイスラエルに移り住んだ人が、改宗ときに行った、信仰告白と思われます。詩編作者は主である神との一致が死よりも強いと感じ、まことの神との一致にこそ、しあわせと永遠のいのちがあると確信した美しい歌です。死に打ち勝ち、復活したキリストの父との一致こそ、この永遠のいのちをもたらすものに他なりません。それゆえ、使徒たちはこの詩編を詩編118(87「きょうこそ神が造られた日」)と同様に、キリストの復活のあかし・預言として用いました(使徒2:21-33参照)。
 答唱句は冒頭から5小節目の「喜びに」までは、八分音符の細かい動きと四分音符+付点四分音符と八分音符(2小節目のバスとアルト、4小節目のテノールとアルト)のリズムで、神の豊かな恵みを受ける人のしあわせなこころの喜びを活き活きと表現しています。最後の3小節は付点二分音符や二分音符という、長い音価の音符を使ってこの恵みに生きる安心感が表されています。さらに、「喜び」では旋律で最高音のE(ミ)が用いられて、
強調されています。
 詩編唱は最終音の2度上(一音上)のH(シ)から始まり、歌い始めやすくなっています。そして次第に下降しE(ミ)に至りますが、この音は答唱句の冒頭の音と同じです。なお詩編唱の最後の和音はE(ミ)-Gis(ソ)-H(シ)ですが、これは和音の位置こそ違いますが答唱句の最初の和音と同じです。ちなみに、この曲はA-Dur(イ長調)ですがこの和音は、主和音ではなく五度の和音です。答唱句が主和音ではなく五の和音から始めることで、次の「しあわせな」に向かう勢いを付けているのです。

【祈りの注意】
 上にも書いたように、冒頭は勢いを付けて歌われ始めます。最初の「し」はマルカート気味で歌います。冒頭の速度指定は四分音符=112くらいとなっていますが、最初はこれよりもかなり早いテンポで歌い始めないと答唱句の活き活きとした感じを出すことができません。この速度は、答唱句の終わりの rit. したテンポと考えてよいと思います。付点四分音符や四分音符の後の八分音符、すなわち「しあせ」や「しあわせ」、「かみ」、「そのろこび」が遅くなると、どんどんテンポが落ちてゆきますので注意しましょう。なお、続く連続する八分音符もきびきびと歌ってください。
 「ひ」や「受」の付点二分音符で旋律が音を延ばしているところは、しっかりと音を延ばし、一瞬で息継ぎをして次の四分音符を歌うようにします。この延ばしている間に「ひ」ではバスとアルトが、「受」では、テノールとアルトが遅れてこのことばを歌います。ここでしっかり延ばすことでひとまとまりの文章である答唱句がひとつの祈
りとして継続されますが、早く音が切れるとこの祈りが続かなくなります。答唱句の後半は「喜びに」から、徐々にrit. して終わりますが、いつ、rit. が始まったか分からないようにできれば最高です。一番最後の答唱句(歌い終わり)は、最もていねいに rit. しましょう。
 ところで、この答唱句で歌われる「しあわせな人」とはだれでしょうか?実はこの答唱句を歌う、わたしたち、一人ひとりがしあわせな人なのです。わたしたち一人ひとりが「神の恵みを受け、その喜びに生き」ているのでなければ、この答唱句が活き活きと歌われないのではないでしょうか?
 詩編唱は1から3節が歌われます。まず、技術的な注意ですが、答唱句が小気味よいテンポで歌われますから、詩編唱も早めに歌いましょう。1節の1小節目と2節の2小節目は、少し歌詞が長いので「ゆずり」と「おられ」の後で息継ぎをします。息継ぎをするときは、その少し前に、やや、rit. して、一瞬で息継ぎをし再び、元のテンポに戻して歌います。
 第一朗読ではエリシャの召命が福音朗読ではイエスの弟子になる覚悟が語られます。神のしもべ、キリストの弟子になるためには、この世の中のものへのこだわりを取り去る必要がありますが、いったんキリストの弟子になれば、この世のものとは比較にならない喜びを受けることができます。キリストによって開かれた「道」を歩むわたしたちは、すでにその喜びを神から与えられているのです。それをかみしめながらこの詩編を祈りたいものです。

【オルガン】
 答唱句のことばや、主に従うという、ことばの典礼の焦点から、やや、明るめのストップを用いたいものです。基本的に8’+4’で、会衆の人数によっては、2’を加えてもよいかもしれません。前奏の時に一番気をつけなければならないことは、祈りの注意で書いたように、テンポが遅くならないことです。一般的に、会衆のテンポは、オルガンの前奏より、かなり遅くなりやすいので、しっかりと、テンポを維持できるようにしましょう。
 詩編唱と答唱句のテンポのバランスも難しいので、詩編先唱者と一緒にきちんと準備をするようにしたいものです。詩編唱の時に気を抜いていると、音が変わるところや詩編の頭で、ずれたりすることがあります。
 もう一つの注意点は、答唱句が四声または二声で歌われる場合、それぞれの声部とオルガンがきちんと合うようにすること。会衆が斉唱の場合も、オルガンの内声がきちんと聞こえることで、延ばしている長さが、短くならないようにすることです。





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Last updated  2016.06.21 17:06:08



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