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聖歌は生歌

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2016.06.30
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カテゴリ:答唱詩編
《C年》

130 主をたたえよう

【解説】

 この詩編66は大きく二つに分けられます。前半の1-12節は主語が「わたしたち」で全世界に向かってイスラエルになされた神の救いが呼びかけられます。後半の13-20節は主語が「わたし」となり、個人的な救いに対する言及とそれに対する感謝と賛美が語られます。この主語の対照は、巡礼者が集まる民族的な祭りが背景にあり、このような祭りでは、最初に共同体の感謝が行われ、続いて、個人的な感謝の奉献が行われたからだということです。
 さて、この「主をたたえよう」は一つの答唱句で最も多くの詩編唱が歌われます。答唱句は、詩編136:1〔131〕から取られています。この詩編はグレゴリオ聖歌では復活徹夜祭に歌われます。八分の十二拍子の答唱句の冒頭は、トランペットの響きで始まります。なお、『典礼聖歌』合本では、最初、テノールとバスは、H(シ)ですが、『混声合唱のための 典礼聖歌』(カワイ出版 2000)では、四声すべてFis(ファ♯)-Dis(レ♯)-Fis(ファ♯)-H(シ)-Dis(レ♯)となっています。このユニゾンのほうが力強い響きに聞こえると思います。
 「主をたたえよう」では、バスがGis(ソ♯)からFis(ファ♯)へ下降することで、ことばを延ばす間に、和音も二の和音から四の和音へと移り、さらに「主はいつくしみ」までE(ミ)からDis(レ♯)へと深まります。その後は、旋律も和音も落ち着いており、神のいつくしみの深さと限りないあわれみを穏やかなこころでたたえながら、答唱句は終わります。
 詩編唱は、冒頭、最高音のH(シ)から、力強く始まります。主に、詩編唱の1節全体で、一番重要なことばが多い
第三小節は、最も低いDis(レ♯)を用いることで、重厚さと、低い音への聴覚の集中を促しています。詩編唱の最後
は、主音Fis(ファ♯)で終わり、そのまま、答唱句へとつながります。

【祈りの注意】
 答唱句の旋律は、主音:Fis(ファ♯)⇒旋律の最低音:Dis(レ♯)⇒主音:Fis(ファ♯)⇒旋律の最高音:H(シ)と動きますから、この旋律の上昇の力強さを、全世界への呼びかけの強さへと結びつけましょう。八分の十二拍子のこの曲は、八分の六拍子の曲と同様に、八分音符ではなく、付点四分音符を一拍として数えましょう。「主をたたえよう」の「」を心持早めに歌い、続く八分音符への弾みとすることで、全体のテンポが引き締まります。
 「たたえようーーー」と延ばす間、さらに cresc. を強めることで、呼びかけがすべての国に広がるでしょう。このとき、バスがGis(ソ♯)からFis(ファ♯)へ下降することで、和音が変わりますから、他の声部はしっかり呼びかけを続け、バスは地球の裏側にまで、この呼びかけを深めるようにしましょう。その後、八分休符がありますが、この休符は次の「」のアルシスを生かすためのものですから、きちんと、入れてください。
 「」がアルシスでよく歌われると、このことばがよく生かされるばかりではなく、続く、滑らかな旋律の信仰告白が、ふさわしい表現となります。最後の「深」の四分音符が、必要以上に延ばされるのをよく耳にしますが、それでは、答唱句の重要な信仰告白のことばが途中で途切れてしまい、答唱句全体のしまりもなくなります。ここで、ややrit. するからかもしれませんが、この rit. はことばを生かすためのものですから「の」に入ったらすぐにテンポを戻しましょう。あくまでも「ふかくーその」は八分音符三拍分の中であることを忘れないようにしてください。最後は「そのあわれみは」くらいから徐々に rit. して、答唱句を締めくくります。「えいえん」で八分音符を五拍延ばす間、まず、dim. (だんだん弱く=いわゆるフェイドアウト)しますが、きちんと五拍分延ばしてください。その間、作曲者も書いていますが「神様のことを」神のいつくしみの深さもあわれみも永遠であることをこころに刻み付けましょう。最後の「」は「さー」と同じように「え」の終わりにそっと添えるように歌います。
 この日の「ことばの典礼」では「平和」が主題となっています。第一朗読ではエルサレムにもたらされるイスラエルの回復と繁栄が語られています。イスラエルの回復、エルサレムの繁栄は、地上の国家としてのレベルではなく、すべ
ての民へのしるしです。それゆえ、詩編唱の1節では「すべての人はあなたを伏しおがみ、み名をたたえて喜び歌う」
と言われるのです。たびたび指摘しているように、教会は(イスラエルも本来は)、神と人類との親密な交わりのしるしであり、人類一致の道具(『教会憲章』1項参照)であって、それ自体で完結するものではないことをわたしたちは知っていなければなりません。
 今日の詩編は、わたしたちに行われた神のわざを、すべての人が知る(体験する)ことで、神が、また、神のもらさ
れる「平和」をすべての人がたたえることを促しています。わたしたちが互いに愛することで、すべての人が、神とキリストを知ることができるのです。詩編のことばを味わいながら、わたしたち自身、それぞれの共同体がそのような共同体になっているかを、改めて考えてみたいものです。
 なお、今日の閉祭(派遣)の歌には同じ作曲者による「アシジの聖フランシスコによる 平和の祈り」をお勧めします。楽譜はオリエンス宗教研究所から発行されている「典礼聖歌 合本発行後から遺作まで」に所収されています。

【オルガン】
 前奏のテンポのとり方、模範が会衆の答唱句の祈りを左右します。上記の祈りの注意を前奏でしっかりと守ってください。言い換えれば、オルガン奉仕者の答唱句に対する、情熱が、前奏、伴奏を決め、それが共同体全体の答唱句のあり方を決めるのです。オルガン奉仕者が、ただ、オルガンを弾いていればよいというものではないことが分かると思います。答唱句の性格からは、鋭くないものであれば2’を入れてもよいでしょうか。あるいは Quint Terz といったストップを使う方法もあります。人数によっては、少し強い4’にしておくとよいでしょう。詩編唱も、力強く歌われますので、声量が豊かな人の場合には、フルート系の4’を入れて、Swell を閉める方法も考えられます。詩編先唱者の声量とのバランスを考えましょう。





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Last updated  2016.06.30 14:49:03



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