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聖歌は生歌

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2017.06.11
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カテゴリ:答唱詩編
《A年》 
 38 神のいつくしみを

【解説】
 今日の詩編89は表題に「エズラ人エタンの詩」(列王記5章11節参照)とあります。実際にそれほど古いものではないにしろ、かなり昔に起源をもつ詩編と考えられています。全体は、ダビデ(ダビデの王家)に対してなされた神の約束の実現を求める祈りで、そこから、ダビデの子孫に連なるメシア=キリストに対する預言と考えられるようになりました。詩編集の第三巻の最後に置かれていて、53節は第三巻の栄唱となっています。
 第一朗読の列王記4章は、エリシャの行った奇跡がまとめられています。今日の朗読を聞いて、アブラハムの妻サラに起こった出来事(創世記18章)やザカリアとエリザベトの出来事(ルカ1章)を思い出されたかたも多いと思います。第一朗読と答唱詩編、福音朗読の関係を見ると、ちょっと関係を想像するのが難しいかもしれません。特に福音朗読で語られるキリストのことば「わたしの弟子だという理由で、この小さな者の一人に、冷たい水一杯でも飲ませてくれる人は、必ずその報いを受ける」。この中で語られる「小さな者」とはキリストの弟子を指しているのであって、キリストの弟子が誰かに水を飲ませることではないということです。そうすると、シェムネの夫人がエリシャに行ったこととの関連もわかりますし、神の人やキリストの弟子たちに行って神やキリストを受け入れた人たちが、神のいつくしみを知るようになるということができるでしょう。
 この答唱句はまったく拍子が指定されていません。と言うのも、順番に、四分の三、四、五、三、四。と変わってゆくからです。ですが、歌うと、まったくそれを感じさせず、歌詞の意味どおりに、自然に歌うことができるから不思議です。冒頭は、75「神よあなたのことばを」などと同じく、オルガンの伴奏が八分音符一拍早く始まります。「とこしえに歌い」と「代々につげよう」では、Fis(ファ♯)が用いられ、伴奏でも、ことばを意識しています。答唱句の終止は、五の和音で、上のFis(ファ♯)が用いられているところは、五の五の和音(ドッペルドミナント)と考えることもできますが、旋律は、G(ソ)を中心に、上下に動いているので、教会旋法の第八旋法に近いようにも考えることができます。また、最初にもあげたように、拍子が指定されず、グレゴリオ聖歌の自由リズムが生かされています。「主のまことを」で、旋律が最高音C(ド)となり、和音も、ソプラノとバスが2オクターヴ+3度に広がります。詩編唱は、鍵となるG(ソ)を中心に動きます。答唱句の音域や、詩編唱の和音からは、あくまでもC-Dur(ハ長調)で、終止は半終止と考えるほうが妥当ですが、それほど単純ではなく、作曲者自身の、グレゴリオ聖歌から取り入れた独自の手法と言えるでしょう。

【祈りの注意】
 冒頭、オルガンの伴奏が八分音符一拍早く始まりますが、これを良く聴き、「かみ」のアルシスを生かしましょう。「神のいつくしみを」は、旋律が一端下降してから上行します。まず、「かみ」の「」の八分音符を気持ち早めに歌います。その後、「いつくしみ」まで八分音符が連続し、特に「つくしみ」は同じ音が続きます。「」の八分音符を気持ち早めに歌った勢いを止めずに歌いましょう。そうすることで、祈りが先へ流れてゆくようになります。前半は一息で歌いたいところですが、息が続かない場合は、「いつくしみ」の付点四分音符に、一瞬で息を吸ってください。最初は一息でいかないかもしれませんが、祈りの流れに、毎回、こころを込めると、徐々にできるようになるのではないでしょうか。最初から「無理」とあきらめずにチャレンジしてください。この「」を、付点四分音符で延ばす間、少し cresc. すると、祈りが、次の「とこしえに」へ向かって、よく流れてゆきます。ただし、やり過ぎないようにして、最初の音の強さの中で、cresc. しましょう。「歌い」の後で、息をしますが、祈りは続いていますから、間延びして流れを止めないようにしましょう。この後、よく耳にするのが、「まこと」の四分音符を、必要以上、二分音符ぶん位、延ばしてしまうものです。「主のまことを、代々に告げよう」は一つの文章、一息の祈りですから、「」は四分音符だけで次へ続けます。このようになるのは、おそらく、答唱句の最後で rit. することが背景にあるかもしれませんが、これは明らかにやりすぎです。rit. しても、四分音符は四分音符として歌います。
 神の人、そして、キリストの弟子たちを受け入れた人が受ける恵みとでもいうべきことが詩編唱の歌わんとしていることです。その意味でわたしたちは「神の人」であり、いわんやキリストの弟子の一人であり、わたしたちをそのような者として受け入れ、神のことばを聞き、神とキリストを受け入れる人には永遠のいのちという恵みが与えられるのですが、わたしたち自身もまた、同じように何らかのかたちで神のことばとキリストの教えを受け入れたからこそ、教会共同体に受け入れられたことを忘れてはなりません。

 【オルガン】
 基本的にフルート系のストップ、8’+4’がよいでしょう。この答唱句では、前奏が祈りを大きく左右します。冒頭、オルガンの伴奏が八分音符一拍早く始まりますが、オルガンだけで前奏する場合には、ソプラノだけ、実際に歌うように弾くと、わかりやすくなります。次に、祈りの注意でも書きましたが、「神のいつくしみ」のところを、実際に歌うように、「の」を気持ち早めに弾き、「つくしみ」の八分音符を、その勢いを保ったまま、しかし、レガートで弾きます。この後も、旋律は同じ音が続きますから、歌うように刻みますが、その場合もレガートを心がけましょう。最後の、「まことを」の「を」もきちんと八分音符で弾くようにします。オルガンがここを、必要以上に延ばすと、会衆の祈りも間延びしたものになってしまいます。
 答唱句全体は、一つの文章でできた(。が一つしかない)祈りです。オルガン奉仕者が、まず、この文章をきちんと味わい、ふさわしい祈りとして歌えることができなければ、会衆の祈りもふさわしい祈りにならないことを、よく、こころに刻んでおきたいものです





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Last updated  2017.06.11 17:45:58



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