経済を破綻させる二つの元凶
今、経済の動揺を招いている元凶のひとつは、CDSをはじめとする金融デリバティブ商品の存在だ。 アメリカの著名投資家ウォーレン・バフェット氏は5年前の2003年2月にはこれを「金融上の大量破壊兵器」と指摘して警告を発していた。 以下は日経新聞の記事の要約。「ウォーレン・バフェット氏は1998年米ジェネラル・リーという再保険会社を買収したが、この会社はデリバティブ取引を行う証券子会社をもっていた。 バフェット氏はデリバティブ会社の保有はリスクが大きいと考えて売却を試みたが、売れなかったため会社を清算することにした。しかしその過程で大きな含み損があることがわかった。 デリバティブ取引損益は、複雑な数学モデルによって推計されるが、将来の経済変数の想定を多少いじるだけで評価額は大きく変動する。 ディーラーや最高経営責任者には利益を大きく見せることで報酬をかさ上げする強いインセンティブがある。成績次第で巨額の報酬を受け取ることができるからだ。 巨額の利益を計上したディーラーや最高経営責任者は、長期のデリバティブ取引が決済されるころまでには、報酬を受けとって退職してしまっている。結局損失をこうむるのは株主や債権者ということになる。」(日経新聞10月24日より要約) 現在、株式市場や債権市場が暴落しているのは、すでにウォール街の連中が天文学的な報酬を抜き取った後のデリバティブ取引が火を噴き始めているからだ。 アメリカの日本生命にあたるような巨大保険会社AIGは、巨額の損失を発生させて米政府の管理下におかれた。従来の保険では、例えばある人が車を衝突させたからといって、別の人が事故を起こすリスクが高まるわけではない。ところが債券の不履行になると、連鎖反応で他の債券も債務不履行に陥る確率が高まる。投資家は臆病になって資金を引き揚げ、市場はパニックに陥り、銀行は貸し渋りに走る。 すなわち、世界中で自動車事故が連鎖的に多発しはじめ、その保険料に耐えられなくなったのと同じだ。すでに金融上の大量破壊兵器は引火されてしまった。 CDSと呼ばれる金融デリバティブの残高だけでも6200兆円。ニューヨーク証券取引所に上場する全株式の時価総額の4倍近い額になる。 仮に残高の4分の1が損失になれば、ニューヨーク株式市場の株価はゼロになってもおかしくない。 この金融デリバディブが全て清算されるまで、金融危機の終わりは見えてこない。 このような天文学的な損失をカバーするために、米政府は金融機関を政府管理下に置き、巨額の資金を投入し続けている。 それは米国人の借金、米国債でまかなわれる。 経済を混乱させているもうひとつの元凶はアメリカの政府の借金の残高だ。 こちらのページによると米国会計検査院院長ディビッド・M・ウォーカーは以下のように言っている「現在のアメリカ連邦政府の借金は約50兆ドル(6,020兆円)に跳ね上がりました。 50兆ドルというのは、アメリカのすべての家計がおよそ44万ドル(5,300万円)ずつの借金を負っている勘定になります。ここで考えていただきたいのは、アメリカの家計所得の中間値は年間5万ドル(602万円)に満たないということです。そして、この負担の伸びは、ほとんどのアメリカ人の正味資産やアメリカ経済の成長率を上回っているのです。」 これから実物経済も失速していくなかで、各家庭が5,300万円にのぼる借金を生活費や住宅ローンの他に負担できるのか。 日本も一人あたり850万円4人家族で3400万円の負債をかかえている。 金融機関への巨額の資金投入は、我々の税金か紙幣の印刷しかない。 アメリカも日本ももう税金ではまともに返せない。 このまま金融上の大量破壊兵器が爆発を繰り返し、紙幣を印刷して資金投入し続けると、通貨価値の下落、インフレ、国債のデフォルトを招かざるをえない。 日本では報道されていないが、副島氏によると「欧米諸国では、すでに、金地金(ゴールドインゴット)を、一般国民が買えなくなって1か月以上になる。すべての金ショップの前は、人だかりの山だそうだ。」日本では金貨はすでに品切れを起こし、金地金も「第一商品では金の現物交換は4日待ち。田中貴金属では1ヶ月待ちだそうです。」ということだ。 日本でも欧米のように金地金が入手できなくなり、一般市民がインフレヘッジをする手段が失われなければいいのだが。