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2007.12.07
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カテゴリ:DVD・書籍
 この話は長官としての、千切れるような思いをする平蔵が痛ましい話です。

 発端は、大川(隅田川)で一艘の小舟の上で行ったことだ。舟には、茅場町薬師町で薬種商の橋本屋助蔵、今一人は船頭の留吉、そして中年の侍一人。
 その侍、いきなり橋本屋を切り川に投げ捨てたものだ。驚いた留吉に、「このことは他言するな。橋本屋は沈んだままか、見てくれ」と川を見るように言う侍。震えながらも川面を見る留吉の、その首がはねとぶ。侍は誰も見ていなかったと思い、舟を漕ぎ出すが、之を見ていたものがいた。
 実は、この惨劇がある少し前に、少し離れた場所で、仲間と盗んだ金の分け前の件で揉め合い、相方を殺した男であった。

 この話は馬蕗の利平治の話の後に起こった事件だ。

 平蔵が同心溜まり部屋を通りかかると、剣の達人である富田達五郎が一人、文を一心に読んでいる。平蔵を見て驚く達五郎。
 (はて…)
 剣術の達人ならば平蔵が近づいただけで分かるものだ。だが富田は気がつかなかった。そこがおかしい、と平蔵の勘働きが、何か妙だと告げている。
 そこで、平蔵は密偵の粂八に(小説では伊三次なのだが、DVDではすでに伊三次は死んでいるので、粂八にしたのだろう)門番に探りを入れるよう依頼する。

 その後、平蔵は「穴」で登場する元盗賊の、今は扇屋平野屋源助の手も借りることとする。DVDではこの源助、登場しません…。

 さて、富田の仕業を見た男は、盗賊で竹松、という。この竹松の弟を富田に殺されたことをうらみ、富田を脅していたのだ。その脅しの文句が、富田が見ていた文なのだ。

 気になるのは富田も同じ。誰がこの文を持ってきたのか。門番の又造を冨岡八幡宮前のうなぎ屋「魚熊」に呼び出し、聞くが、又造が「粂八さんにも同じことを聞かれましたが、何か大事な用件なので?」
と聞き返される。そこで富田、はっとする。
 (お頭に感ずかれている…)
 このシーンは小説には登場しません。
 
 帰ってこない門番又造を心配する役宅の同心の元に、殺されているという通報が入る。
 夜が更けてから、密偵の粂八を呼び出し、目白台の平蔵の私邸に隠れるよう伝える。
 「富田さまの仕業だと…」
 「わかからぬ。わからぬが次はお前のような気がする」
 と言う。

 ここで平蔵の勘は、徐々に確信へと高まっていくのだった。
 なぜなら、あまりにも呼吸が合いすぎているからだった。だがわからないことがある。なぜ同心の富田がこのような真似をするのか。そこがわからない。
 仲間を疑うのは後味が悪い。役目の遂行にも支障をきたす。
 ここで小説では平野屋の番頭が密偵役を買って出て、富田の周辺を探り出すのだが、DVDでは彦十がこの役になっている。さてここで富田の回顧になる。

 一人娘のお幸が大病を患い、心配から心身ともにバランスを崩していた富田は、見回りの最中、酔った侍に因縁をつけられ、思わず切ってしまう。その場面を橋本屋に見られて脅されていたのだ。
 そして脅迫金100両を集める為に、あろうことか辻斬りまで働くようになる。
 こうなると、これを見張っていた彦十、もう限界だとばかりに平蔵に告げる。
 平蔵ももはやこれ以上罪を部下に重ねさせるわけにもいかない。

 ついに池之端仲町の煙管の紀伊国屋を襲撃する事を決める。なんとしてもあと2日で95両を作り、黒幕を倒さねば自分の身が危ない。
 さて踏み込もうとしたその瞬間、「待て!」と闇の中から富田に声をかける男。
 「おれだ、長谷川平蔵だ」
 覚悟を決めた富田は、猛然と平蔵に切り掛かっていく。剣術の達人といわれた富田ゆえに、平蔵も気が抜けない。刀を合わせつつ、ついに切り捨てる平蔵だった。

 「人というのは初めから悪の道を知っているわけじゃねえ。悪事を隠す為に悪事を働く。富田もおよそそうであったのだろうよ」(小説のこの長回しのセリフをDVDでも吉右衛門がきっちりと言います。ここが切ない…)

 そうつぶやくと、平蔵の目頭に涙が…。
 泣き顔を隠すかのように、窓の外で降りしきる雪を見ながら、「こいつは積もりそうだ…」つうやく平蔵。その横顔が寂しい。

 部下に裏切られながらも、その部下の妻女を思い、悪事を秘密裏に処理してしまうのだが、まあ現在で良し悪しは別として、平蔵の気持ちは分かる気がします。





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Last updated  2007.12.08 00:08:52
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