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テーマ:レンタル映画(818)
カテゴリ:心にのこる映画
「10歳までは愛している。15歳までは批判する。そのあとは許す」――フランスにはこういうことわざがあるそうだ。これだけでは主語がないので、誰が誰を愛し、許すのかわからない。親が子どもを、とにかく10歳まではかわいらしくて愛してる、しかし、10歳を過ぎると小憎らしくなって小言ばかり言うようになる。しかし、高校生にもなるともうあきらめる、というふうに解釈すると、共感! 納得! という方もいるだろうけど、実は、主語は子ども、目的語が親で、「子どもは10歳までは親を愛し、15歳までは批判する。そのあとは彼らを許す」というのが正確なものだそう。『BARに灯がともる頃』はそんな親子の葛藤を描いたイタリア映画だ。
舞台はあるイタリアのさびれた港町。徴兵で軍隊に入っている息子の久しぶりの休暇に父親がやってくる。弁護士として名を成している父親は、大学に通ってはいるものの、将来の進路がさっぱりはっきりしない息子に業を煮やし、「マンションを買ってやった」だの「自分の事務所で働かないか」だの何かと世話を焼こうとする。しかし、息子はまったく乗ってこない。それは、根底に、父親の世代がつくってきたイタリア社会がけっしてバラ色ではなかった、という思いを抱えているからだ。しかし、父親は違う。ファシズム、そして戦後の荒廃期を乗り越え、民主主義のイタリアをつくってきた自負をもっている。そんな二人が、少し居心地の悪い一日を、すれ違いながら、歩み寄ろうとしながら過ごす。そうするうちに父親は、自分が軽蔑する小さな田舎の街で、街の漁師たちに愛され、頼りにされ、輝いている、自分の知らなかった息子の姿を見つけ、愕然とする。すっかりしょげている父親を、息子は温かく見送る。ただそれだけなのだけれど、そのなかにこめられた新旧世代の対立と和解はとても味のあるものだった。 ところどころに出てくるイタリアらしさ、たとえば、文学作品のセリフをだしあい、それがなんという作品の誰のものかを当てっこする。これが父子とも相譲らないのだ。なんという教養の深さ! たとえば、嫌がる息子の恋人の家に無理やりおしかけ、息子が席を外しているあいだに、「息子のセックスはうまいのか?」と真顔で聞く。なんというラテン的あつかましさ! そういったものもとても興味深く楽しめた。親子で観て、話し合ってほしい作品。父親役は名優マルチェロ・マストロヤンニ、息子役は夭折したマッシモ・トロイージ(彼の遺作『イル・ポスティーノ』も必見!)。 ふーっ、初めて映画について書けた。連続書き込みも継続できたf(^_^;) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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