野村萬斎 世田パブ特別インタビュー
「世田谷パブリックシアター 10周年記念」特別インタビュー 芸術監督 野村萬斎に聞くスカパーのシアター・テレビジョンで放送中の萬斎さんのインタビュー。内容をブログに書こうと思いつつ、半月も経過。。今日、やっとこ書けます。では、早速、インタビューの内容をば。萬斎さんの芸術方針三原則1.「地域性」 世田谷から発信し、東京→日本人→世界中の人に見ていただきたい。 その同心円的な発想で物を作りたい。2.「同時代性」 私は古典芸能出身ですが、(世田パブは)現代演劇を核としていますので、 その時代を映す鏡が演劇、ダンスを含めたライブ・パフォーミング・アートの やり方を考えて行きたい。3.「普遍性」 今はいろんな物が消費されがちな社会ですが、古典芸能の発想はひとつのものを 突き詰めて洗練していく事によって質を上げていくもの。 世田谷パブリックシアターは公共劇場なので、民間の商業主義的劇場とは違う。 皆さんの税金も多少なりとも使っていますので、一つのものを長く質を高めて 後世に残せるような作品作りを目指しています。 狂言の600年という歴史の中で洗練されてきた知恵や方法論がたくさんあり、 古典芸能の良いものの考え方を現代劇に「触媒」していく事で触発されて、 良いものを作ってもらえるような劇場にしたいと思っています。 古典芸能の人間もただ昔からのやり方だけが正しいと思い込んでるだけではいけない。 「現代性とは、何ぞや?」という事と、自分達がやっている事を照らし合わせて行く事が必要。 ここの劇場には、能楽堂にはない、三本の橋掛かりのある能舞台があります。 ここでは(能楽を)現代劇の舞台芸としてご覧いただけるのではないかと思います。 「現代劇として(能・狂言は)堪えうるものなのか?」と試されている訳で、 相互の発想を大事にしたい。 現代能楽集シリーズは、能のテキストを基本に作家、演出家に新たな能を作ってもらています。 三島由紀夫さんの近代能楽集は昭和のあり方だと思いますので、今、この平成の御世の 現代能楽集を、能の手法に負けないひとつのドラマの立脚が出来るかどうかのトライアルを することによって、双方向に考えていだたく事を願っている。 就任前ですが、一番初めに演出したのが「まちがいの狂言」でした。 狂言の手法を使って、シェイクスピアをやりました。 その後、中島敦の「山月記・名人伝」を取り上げて、両方とも父をはじめ、 野村万作カンパニー一門で私としてもシェイクスピアにいろんな形で関わっています。 今度、演出するに当たって(国盗人/リチャード三世)、狂言の役者だけじゃなくて、 現代劇の役者さんと混じりながら、新たな可能性を見出して行きたい。 狂言というと喜劇的な印象をもたれますが、我々の技術は喜劇だけの為にあるわけではない。 リチャード三世をベースにしていますが、重厚な歴史劇であり、悲劇であり、悪の道化という 所もあります。 狂言の技術、狂言の発想による演出で、この作品を現代に読み直す事が出来ればと 思っています。 出演者も非常に活躍されている役者さん達と、私、石田幸雄をはじめとする狂言の役者が 混在しながら舞台を進めていきます。 その役者同士のせめぎあいも見所でありますし、それをまとめる私も大変なんですけれども(笑) 世田谷パブリックシアターは今年度、10年目を迎えまして、10周年記念の賑やかな番組を 取り揃えています。 私が企画して好評を得ました、現代能楽集「AOI/KOMACHI」。(終演しました) 見たことのない作品になっているかと思います。 その他、アントワーヌ・コーベンさんの「死のバリエーション」(5/11~27) 私も能を初めて世田谷パブリックシアターに乗せてみようとという試みで、 「能楽現在形 劇場版@世田谷 “鉄輪”」(5/15、19、20)を考えています。 そして6月には、私が手がける「リチャード三世/国盗人」が。 日野皓正さんのジャズ(7月)、白井晃さんの「三文オペラ」(10月)など。。 見たことの無い舞台。既成のお決まりパターンのものではなく、非常に実験性・芸術性の高い けれど、後には余韻の残るような舞台の作品を作って行きたいと思っています。 記憶に残る舞台が目標です。是非、何度も足を運んでいだたければと思っています。