金剛流普及能 『船弁慶』 本番編
では、能楽「船弁慶」の舞台感想レポにとりかかります~。ピーンと張り詰めた空気の中、能楽堂に杉さんの笛の音が鳴り響き「船弁慶」が始まりました。杉さんのお姿が、私の位置からは見えなかったのが残念~。義経・弁慶・従者2名。計4名が舞台に登場しました。弁慶役の福王和幸さん。いつみても偉丈夫な方で、弁慶役にはピッタリです。丹田から出ているお声も素晴らしく、惚れ惚れしてしまいました♪まぁるいお目々も可愛らしいしぃ(≧∇≦)そんな弁慶さんに「これ以上、ついて来るな。都に帰れ。」と言われた可哀想な静御前。一度は拒否るけど義経に諭されて結局、都に帰る事になって、義経の門出の舞いを披露します。門出を祝う舞いだけれど、静にとっては哀しい別れの舞いですよねぇ。シテ方の金剛永謹さん。大柄な方です。思えば、私の初能楽堂体験の「第五十回 同明会能」の「翁」のシテが金剛永謹さんだった。あの時は、お声が聞き取りにくい印象を持ちましたが、今回はそんなことありませんでした。面の下からでも、よく響くお声でセリフのひとつひとつが耳を通して頭の中にスッポリと入って来た。しかし。。むふふ。。顎のお肉が。。萬斎さ~ん♪ あなたの術中にハマってしまったではないですかぁ~(笑)きっと、見所の誰もが視線をそこに向けたに違いない(爆)この静の舞いが結構、長いんですよねぇ。シミジミと義経の無事を祈りつつ、またいつの日にか愛しい義経と再会出来ますようにとの思いを込めた渾身の舞いといいましょうか。。「あとは弁慶。そなただけが頼りですよ。」と、弁慶にあとを託し、烏帽子をその場に投げ捨てる。さめざめとシオル(泣く)その型が、ジーンと胸に響くなぁ。(T-T )( T-T) ウルウル と、舞台に集中しているかのような私ですが!静の舞いの途中、揚幕の辺りで気配を感じた私。(脇正面なので、揚幕は後ろの位置になって視界に入らない)振り返ると、萬斎さんがシズシズとお出ましでした☆(≧∀≦)☆思わず、お隣の桃李花.さんに肘で突付いて合図を送る。(桃李花.さんゴメンなさいね~。肘鉄なんて、失礼な方法を取ってしまってぇ。)萬斎さんは橋掛かりの途中、一ノ松付近に座って待機。うわん~。私の真横じゃないですか♪ 萬斎さんと私の間には一ノ松。それをいい事に、チラっと横を見て萬斎さんのお顔を見てみる。わちゃ~。険しいお顔だこと! こりゃ、舞台の静御前に集中してなきゃ、叱られそうだわ。(そういえば、解説で「セリフを喋っている人を見て下さい。黙っている人は見なくていいです」なんて事を仰ってたな。あれは、「私の顔ばっかりみないように。。」って牽制してたのかな?)ってなことで、左側の萬斎さんを意識しつつ、視線は舞台へ。今回の船弁慶は「白波乃伝」という小書きが付いていて、桃李花.さんのお友達に教えていただいたのですが、静御前が義経の面前から去る時に、船頭が静を宿まで送って行くという内容なのだそうです。ですので、弁慶に呼ばれて船頭の萬斎さんが静御前の後ろに回り、腰の辺りを支えながら静の退場に付き添います。静御前に労いの言葉をかけて、しずかにしずかに少しずつ歩を進め揚幕の所まで見送るのです。船頭のセリフを、静御前が揚幕の中に入るまでにピッタリと終わらせなきゃイケないので、シテもアイも結構、大変だな~って思いました。静を見送った萬斎さんが弁慶の元に戻って、無事に送り届けた事を報告します。すぐ船を用意できるように待機していてくれと弁慶に言われ、また萬斎さんが橋掛りの所に鎮座。そして、弁慶に「急ぎ、船を出だせー」と言われるや否や。「かしこまってござる!」と、超特急~~で揚幕の中に走って行かれました。それを目で追ったら!萬斎さんが走って行くと揚幕がサッと上がりすぐさま閉まるんですが、揺れる幕の間から用意されていた船にクルッと振り向き、ダンッ!と飛び乗り両手で船を抱える萬斎さんが見えた!あぁ、見所から見えないこんな所でも手を抜かず、美しい型で仕事をこなしているんだな~。やっぱ、凄いよ。萬斎さんは。その後は、また超特急で義経達のいる舞台の上まで一直線に走って、船を据え置きました。さぁ、いよいよ船頭さんの仕事の始まりです♪ひゃ~。萬斎さんの位置は真正面。やっぱり、脇正面は船頭さんがよく見える~。船を漕ぐ上下のふり幅の型が常に同じなんだよね。腕がその位置で止まるように、萬斎さんの言葉を借りるなら「プログラミング」されてる。それが、「美しさ」に繋がってるんだな~。最初は良いお天気だったのが、急に空が掻き曇り波が荒くなって船が揺れる。ここから船頭さんの腕の見せ所♪片方の肩衣を外し気合を入れ、櫓を激しく操作して船が沈まないように必死になって船を漕ぐ。(ちなみに、肩衣の柄は碇(いかり)でした♪)激しく漕ぐ度に髪がぁ。バッサバッサと揺れる揺れる~。お囃子のテンポと萬斎さんの漕ぐ櫓のスピードがピッタリ合って、気持ちいいーー。弁慶の従者に「この船には怨霊が憑いている」なぞと言われたときは、「何だとっ!何を言いやる!」ってな風情で従者を睨みつける所もあり、本当にいろんな仕草や表情の船頭さんを堪能いたしました♪そして、ついに! 平知盛の亡霊が登場~~。船に乗ってる面々が、揚幕辺りを凝視し、船頭さんは竿先を揚幕方向に指し示している~。船頭さんをいつまでも見ていたい(本音)しかし!後シテの知盛さんも見逃せない!首をぐるりと揚幕方向に回して見ると、知盛さんが登場して、いったん、揚幕の中へ引っ込んだ。そして、再度のご登場~。 迫力あるなぁ。この出方。波の向こうから知盛さんがドーッと迫ってくるド迫力。袴には白波と折れた矢の柄が描かれてました。壇ノ浦の戦いで受けた矢の数々なんでしょうね。それを見ただけで、切なくなったよ。「子午線の祀り」の舞台で、萬斎さんは知盛さんを演じてらっしゃったからそれとダブる~。金剛永謹さんの知盛さん。素敵でした♪静御前とは打って変わって、激しい動きのオンパレードなんだよねぇ。金剛流は特に動きが激しいのかしら~。何度も、「クルッと回って、ダンッ!っと着地」の型があったなぁ。面の下から激しい息遣いが、聞こえてくる。それはそれは、激しい息遣いです。肩で息をしてらっしゃるのもわかったし、見ているこちらも力が入りました。そんな知盛さんの動きを萬斎さんは目で追ってらっしゃいましたよ。険しいお顔をされながら。。やはりシテ方さんの所作とか気になるんでしょうね。というか、自然と目で追ってしまうものなんだろうな。そして、ついに知盛が敗れて波間に消えゆき、一同も順々に退場されてゆきました。萬斎さんは外した肩衣を元通りに直し、船を両手で持ってシュッポッポ状態でご退場♪感想というより、実況みたいなレポになってしまいましたねぇ。とにかく、萬斎さん中心に見ていましたので、シテ方やワキ方を見ているようで見ていなかったのかも(笑)あっ!そうそう!急に思い出した!萬斎さんの解説ですが、「ものまね」という話題の時に、 『真似をするといっても、誰でも言い訳ではありません。アマゾンの山奥の誰かの真似といっても、 誰も知らないですからね。それでは困ります。誰でも知ってる人じゃないといけません。』と、言っておられたよ。面白かったから、笑いがたくさん起こってました♪今回の能会は、船頭さんが活躍する小書き付きだったり、萬斎さんの解説だったりと、萬斎さんファンには嬉しい事ずくめでした。たまの京都ですものね。大判振る舞いをしていただきました。これを機会に、「ござる乃座」以外でも頻繁に京都に来ていただきたいものです。本当に充実した一日で、あんなに近くで拝見すると、これから後ろの席だったら、きっと物足らなく感じるだろうなぁ。恐るべし、最前列~。