日本オペラ「美女と野獣」はそれなりに面白い
鑑賞日:2008年1月13日(日)15:00開演入場料:¥2,000 D席2階(3列21番)主催:(財)日本オペラ振興会/(社)日本演奏連盟平成19年度文化庁芸術創造活動重点支援事業2008都民芸術フェスティバル助成公演日本オペラ協会公演日本オペラシリーズNo.68オペラ「美女と野獣」水野修孝作曲全2幕会場:新国立劇場中劇場総監督:大賀 寛指 揮:三石 精一演 出:岩田 達宗管弦楽:東京ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽団合 唱:日本オペラ協会合唱団出演絹 :斉田正子野 獣 :三浦克次メフィスト:大久保 眞くれない:橋爪明子むらさき:庄 智子紅 屋 :中村 靖耕 作 :鴨川太郎仙 蔵 :長谷川 敏小悪魔(火龍姫):府川直子小悪魔(夜叉姫):山田真里小悪魔(蛇巣姫):細見涼子小悪魔(夜 叉):松下祐貴子小悪魔(銭 鬼):鳴海優一小悪魔(反吐泥):清水一皓小悪魔(天邪鬼):和田ひでき小悪魔(死 神):相沢 創感想11,12日と昨年と同様に学生さんのオペラ発表会に合唱賛助出演し、若いパワーを感じることが出来た。本日は日本オペラ「美女と野獣」。これまで藤原歌劇団=日本オペラ振興会と思っていたのだが、正確には1981年に藤原歌劇団と日本オペラ協会が合併して日本オペラ振興会となり、藤原歌劇団が西洋オペラを日本オペラ協会が日本オペラ担当とのことで今回は日本オペラ協会主催の公演。「美女と野獣」はもちろんジャン・コクトウやディズニーの映画と同じ原作を元に、テレビやミュージカル作家の大久保昌一良が舞台を日本の戦国時代に移し、美女は武器商人の3女、野獣は戦いに勝つためメフィストに魂を売った城主との設定。まず驚いたのは、オケピットにエレキギター、エレキベース、シンセサイザー、ドラムセット、大太鼓が入っており、主に小悪魔達やメフィストの悪役が登場する場面でロック、ジャズ、はたまたボサノバの音楽が流れる。これまで聴いてきた團伊玖磨「夕鶴」や三木稔作品等の日本オペラとは大きく異なりそれなりに面白い。クラシックオペラとミュージカル的音楽の融合を図っているとは思うが、音楽的バランスとしては電気楽器やドラムが大きくなると歌が聞こえにくくなり、それを補うために日本語の字幕が出る。それなら歌い手にマイクを付けてミュージカルにしてしまってはとも思うが。今回で3回目の公演(初演1989年)となり、ヴォーカリーズ等の追加や部分カットされたようだが、野獣の領地が攻められ出陣する場面で美女(絹)が「生きて帰って。必ず待っている」と言う場面がそれまでの流れから唐突。クライマックス、絹が父の看病のため約束を破り城から居なくなり、戻った野獣が絶望の中、城に火がつき、そこへ戻った絹が火の中に飛び込み、最後は野獣が人間の姿に戻り二人の愛は昇華するところも、不自然に感じ、感情移入が出来なかった。と言ったて昨日合唱出演の「ドン・ジョヴァンニ」だっておかしな所も多いのだが。歌手では絹役の斉田正子が素晴らしい。ヴォーカリーズでかなり高い音や難しいフレーズが随所に出てくるが、ビブラートのない美しい声で最後まで歌いきっておられ、絹の純粋な性格を美しい着物姿で演じられていた。小悪魔役は衣装が奇抜で、歌もコミカルで面白い。今回も日本語の歌の難しさを感じたが、演奏としてはそれなりには楽しめた作品で、日本のオペラは今後も色々なアプローチが続いていくのでしょう。End