新国立「魔弾の射手」にドイツ・オペラの流れを感じた
鑑賞日:2008年4月13日(日)14:00開演入場料:¥6,615 C席4階(2列30番)主催:新国立劇場歌劇「魔弾の射手」 ウェーバー作曲全3幕(ドイツ語上演/字幕付)会場:新国立劇場オペラ劇場指 揮 :ダン・エッティンガー演 出 :マティアス・フォン・シュテークマン美 術 :堀尾 幸男衣 裳 :ひびの こづえ照 明 :沢田 祐二舞台監督:村田 健輔合 唱 :新国立劇場合唱団管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演:オットカール侯爵(領主) :大島 幾雄クーノー(侯爵領の森林保護官) :平野 忠彦 アガーテ(クーノーの娘) :エディット・ハッラーエンヒェン(アガーテの親戚の娘):ユリア・バウアーカスパール(アガーテの婚約者で猟師):ビャーニ・トール・クリスティンソンマックス(若い猟師) :アルフォンス・エーベルツ隠 者 :妻屋 秀和キリアン(裕福な農民) :山下 浩司花嫁に付き添う四人の乙女 :鈴木愛美、田島千愛、高橋絵理、中村真紀ザミエル(悪魔) :池田 直樹感想新国立劇場初登場、序曲や「狩人の合唱」が有名な演目。場内入ると幕には左手に棍棒を持ち雲のようなものに乗った男が描かれ、日本語で「魔弾」と「腕試し」の説明が記されている(日本語部分は映写)。この絵の意味は?と思っていると幕間にランプが点灯しオリオン座(ギリシャ神話のポセイドンの子で猟師)だと判る。この幕だけでも相当お金が掛かっていそうだが・・・。この幕は遮幕で序曲演奏の前に照明が当てられ、アガーテが隠者から身に危険が迫っていることを示唆され清めの「白バラ」をもらう台詞入りの場面が挿入された後に序曲が入る。序曲を待っている身としては焦らされた感があるが、第3幕の場面でこの「白バラ」を使った冠を通じてアガーテが隠者により守られたことが判りやすくなる。序曲は主題毎に明確に表現され、強弱の差も大きい。休符部分も長く取るので、各主題がより鮮明になる。これは全体に共通した特徴で一部流れにくい印象を持った所もあったがドイツ・オペラの表現として指揮者ダン・エッティンガーの意向でしょう。演出の見せ場、第2幕「狼谷」での「魔弾の鋳造」場面では、照明等の効果に加え裏歌の合唱がPAを使って流され、エコーやステレオ効果を使用し恐怖心を上手く表現していた。悪魔の台詞も全てPAのエコーを使用。舞台装置は上部が不規則に切られた壁が舞台を取り囲み、この壁が場面毎に前後左右、斜めにも動き、照明効果により森や谷が表現されていた。さらに部屋の装置が壁の後から前面に出てくる。この場面間の転換がすごいスピードで行われるので、緊張感が持続し、違和感なく観られた(逆に舞台装置の移動が速すぎて違和感があったが)。また第1幕、2幕は休憩を挟まず連続して演奏されたが、第1幕の閉幕後直ぐに叩く音が聞こえ「舞台装置の組立か?」と思ったら、第2幕の幕が直ぐに開いて、エンヒェンが落ちて来た肖像画を掛け直すために壁に釘を打つ音と判り、なかなか上手い演出。歌手の方はアガーテ役エディット・ハッラーの歌声が素晴らしい。美しいリリコ・ソプラノの歌声だがビブラートはほとんどなく、大変澄んだ歌声。フォルテでもけして張り上げていないが4階席まで十分に飛んでくる声質。2005年頃のオペラ・デビューでまだ若そうだが、その容姿含め本役にピッタリの印象。相手マックス役アルフォンス・エーベルツはテノールの割に声質が低く、飛んで来ない。日本人の中では隠者役の妻屋秀和が低い低音部分を十分に響かせ存在感があった。合唱は揃っており、演技含め各場面を上手く盛り上げていた。ウェーバーはモーツァルト後、ワーグナー前の時代の作曲家であり、今回の演奏からもモーツァルト的部分やワーグナー的部分が聴かれ、ドイツ・オペラの流れを感じることが出来た。End