「ペレアスとメリザンド」は管弦楽が主役
鑑賞日:2008年6月29日(日)14:00開演入場料:¥3,780 C席2階(3列31番)主催:新国立劇場共催:東京フィルハーモニー交響楽団C.A.ドビュッシー作曲歌劇「ペレアスとメリザンド」(全5幕 フランス語上演・字幕付)会場:新国立劇場 中劇場指揮・舞台構成:若杉 弘合 唱: 新国立劇場合唱団管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団出演ペレアス :近藤 政伸メリザンド :浜田 理恵ゴロー :星野 淳アルケル :大塚 博章イニョルド :國光 ともこ医師/羊飼い :有川 文雄ジュヌヴィエーヴ:寺谷 千枝子感想通常のシーズンスケジュールに後から追加される形での公演。コンサート形式だが、管弦楽はオケピットに入ることで、オペラ本来の音響が得られるとのこと。そうなると舞台上は歌手がただ立っているだけかと心配したが、回り舞台上に高さ2m程度の長方形の台が置かれ、その周囲に木箱、4本の柱、両脇に階段等が設置された舞台装置があり、幕毎に回転することで、森、岸辺、城内、湖畔の場面を表しており、場面の理解に役立っていた。音楽は「ドビュッシーが、持ち前の音の色彩感と、ワーグナーのライトモティーフの手法を織り交ぜて」作ったとのことで、交響曲の中に歌があるような印象。ワーグナーの様な劇的部分はほとんど無く、美し旋律が連続して流れ、登場人物の感情は勿論、風や水、日の光等の自然の風景も表現している。歌詞もペレアスが「歳はいくつ?」と訪ねるとメリザンドが「風が吹いて寒い」と答えるように如何にもフランス文学的(原作は「青い鳥」で有名なメーテルリンクでベルギーの作家だが)。よってアリア的な部分はなく、合唱も裏歌一曲のみ。美しい音楽の中に入るように歌うことが必要なのでしょう。今回二日間連続公演で、歌手はさぞかし大変だったと思われるが、日本人実力者を揃えており十分に歌えていた。その中で、メリザンド役の浜田理恵が美しい声で良かった。特に第3幕最初のア・カペラ独唱「私は日曜の午後の生まれ」は素晴らしかった。ジュヌヴィエーヴ役の寺谷千枝子は松葉杖をついての出演のも関わらず、抑制の利いた歌声で感情表現の難しい二人の母親役を歌っていた。前月の「軍人たち」と同じく、商業的に日本での公演が難しいオペラを聴くことが出来た。最高額席\10,500で客席1000人の2日間公演では本格的舞台装置や衣装が不要のコンサート形式と言えどもきっと大赤字だろう。舞台装置も準備段階で追加されたように思われる。若杉弘が真っ先に東フィルに向かってお辞儀をしたのも、楽団が共催になって、持ち出しが大きかったためか。カーテンコールの最後に若杉弘が出てきたが、一礼のみで引き下がったのは、体調か?演奏の出来具合のためか?はたまた芸術監督交代決定の影響か?今の所、次期シーズンには同様のコンサート形式の公演は予定されていないが、追加があることを期待。なお、本公演にはTVカメラが入っていので、後日NHK当たりで録画放送されと思われる。End