「エフゲニー・オネーギン」の主役はタチアーナだった
鑑賞日:2008年9月14日(日)14:00開演入場料:¥5,000 D席4階(R3列 5番)主催:東京二期会東京二期会オペラ劇場チャイコフスキー作曲叙情的情景「エフゲニー・オネーギン」(全3幕 字幕付原語(ロシア語)上演)会場: 東京文化会館大ホール 指揮:アレクサンドル・アニシモフ演出:ペーター・コンヴィチュニー美術:ヨハネス・ライアカー照明:喜多村 貴管弦楽:東京交響楽団合唱:二期会合唱団出演ラーリナ(女地主で未亡人):与田 朝子タチアーナ(ラーリナの姉娘):津山 恵オルガ(ラーリナの末娘):田村 由貴絵フィリピエーヴナ(乳母):村松 桂子ウラジーミル・レンスキー(オルガの婚約者):樋口 達哉エフゲニー・オネーギン(レンスキーの友人):黒田 博グレーミン公爵(退役将軍):佐藤 泰弘隊長/ザレツキー: 畠山 茂トリケ(フランス人家庭教師):五十嵐 修感想開場予定のPM1過ぎに会場に到着するも、ホール座席への案内はPM1:30からとのことで少しロビーで待たされて入場。既に舞台の幕は上がり、数人での演技(読書、掃除、編み物など)も始まっており、待たされた理由を納得。舞台上の中央後部には舞台幅半分を占める15段の灰色の階段が設けられ、その左右にはパイプ状のテーブル、椅子が乱雑に置かれている。また舞台下手には本が山積みにされタチアーナの部屋として区切られている。3幕まで幕を下ろさず全てこの設定を用いており、2幕1場タチヤーナの命名日を祝う舞踏会では舞台上に顔が描かれた大きな傘と色の付いた提灯?で華やかさを出した以外はモノトーンのイメージ。衣装も全員がロングコートを来ている。(プログラムの演出家談では、コートはいつ出発しても良い、放浪中と同義語とか)オケピットと客席の間にも舞台からつながった回廊があり、例えば3幕1場グレーミン公爵の館では、舞台上に舞踏会のお客達、2階客席L側に公爵とタチアーナが座り、その間の舞台回廊にオネーギンがいることで、孤独感、疎外感が表現されていた。今回2幕1場と2場の間に休憩を入れたため、2幕2場のレンスキーとオネーギンの決闘シーンからその数年後の3幕が連続して演奏されることになり、本来3幕舞踏会用の「ポロネーズ」は、オネーギンが決闘で死んだレンスキーの手帳を見て煙草を吸い、ついには死体のレンスキーと踊るシーンとなり、友人の死への悲しみ、後悔する心情を表していた。その分3幕の数年後のオネーギンの経時的な心情の変化が判りにくくなってしまったが。演奏の方は管弦楽がチャイコフスキーの叙情的な旋律をよく表現出来ていた。東京交響楽団にしては終始抑え気味の演奏で、指揮者アニシモフの功績でしょう。歌手ではタチアーナ役の津山恵が美しい澄んだ声で役に合っている印象。歌う箇所はタイトルロールのオネーギンより多く、こちらの方が主役とも言える。1幕2場の「手紙の場」は30分近くを一人で歌い演技をする場面はタチアーナの夢見がちな性格を表して、素晴らしかったです。3幕2場の最後オネーギンとの二重唱まで良く歌えていた。レンスキー役の樋口達哉も抑え気味ながら、表現を重視して歌っていた。客席の若い女性は樋口が登場すると身を乗り出して釘付け状態の人が多く、その人気の程をうかがい知れた。タイトルロールの黒田博、グレーミン公爵役の佐藤泰弘は安定した歌声と素晴らしい演技で喝采を取っていた。なお言葉がロシア語のため、その歌い方に歌手全員が苦労している所を感じてしまったが、日本人歌手だけでカバーしたことに意義があるのでしょう。全体的には、演出含めまとまった演奏であったと思います。End