「プライド」を観て二重唱の怖ろしさが判った
鑑賞日:2009年1月25日(日)15:25~会場:109シネマズ川崎入場料:¥1,800(シアター10/E-5)映画:「プライド」Pride一条ゆかり漫画家デビュー40周年記念作品監督:金子修介原作:一条ゆかり脚本:高橋美幸音楽:清水信之出演:麻美史緒: ステファニー緑川萌: 満島ひかり池之端蘭丸: 渡辺 大神野隆: 及川光博山本教授: 由紀さおり松島春子: 五大路子池之端菜都子:高島礼子他「全く境遇の違う音大生二人がオペラ歌手を目指す」ような宣伝を目にし、原作が少女漫画界の巨匠一条ゆかり、監督が日活時代から有名な金子修介とのことできっと面白いのではと期待し、数少ない上演館・時間の中から都合の合う川崎まで出かけた。映画冒頭はトスカより「歌に生き恋に生き」のピアノ旋律が流れヒロイン麻美史緒が登場。新国立劇場オペラパレスでの「椿姫」の観劇に続いて、二人がコンクールへ。一次審査で麻美史緒が「歌に生き恋に生き」を緑川萌がジャンニ・スキッキ「私のお父さん」二次審査で緑川萌が何と魔笛より夜の女王のアリア「復讐の炎は地獄のように」を歌う所で思わず拍手をしそうになった。当然吹き替えですが。なかなか本格的に描かれている。ただピアノ伴奏のみで、オーケストラ付きのアリアがなかったのが誠に残念。その後はオペラはなく、ポップス系の曲となり二人がそのまま歌っているがそれなりに聞かせる。俳優では神野隆役の及川光博がレコード会社副社長のはまり役で原作者も意識して描いているとのこと。山本教授役の由紀さおりも本当に音大に居そうな先生の演技。池之端菜都子役の高島礼子は銀座高級クラブのママ役でこれも余りにもはまり役。残念ながら池之端蘭丸役の渡辺大は浅黒いスポーツマンの外見で音大生ピアノ作曲専攻には見えなく違和感があった。途中に緑川萌の歌のバックに海の映像が出たり、最後の二人の曲の詩が?だったが、全体的にテンポ良くまとまった作品にそれなりに楽しく見ることが出来た。ラストも恋愛でなく三人三用の音楽の道を選ぶ所も良い。印象に残っているのはオペラ観劇のロビーで神野隆が緑川萌に話す「成功の秘訣とは与えられたチャンスに食いつくこと、その道の一流の裏と表を知ることだ」の台詞と主役二人がクラブで歌う「A Song for You」の二重唱。けして合わせるだけでなく、如何に自己主張して(プライドを持って)歌うか、相手よりより目立つことで結果として互いの力が合わさり更に良い歌になる。二重唱は合わせるモノでなく、戦うべき恐ろしいモノであるのがよく判った。声楽は声=体が楽器であり、楽器演奏より人間的部分が出てしまうのだろう。そして芸術を続ける(人間が生きて行く)原動力はプロでもアマチュアでも正しく『プライド』なのでしょう。TVでの宣伝もほとんど見ることがなく、雑誌にも取り上げられていないこともあり、シアターも定員62名と一番小さく、実際の観客数は半分程度。TVで大宣伝の○○世紀少年等よりはるかに面白いが、きっと後1~2週間で打ち切りか。原作漫画の方はその後現在も続いており、単行本を購入しようかと思案中。End