ヴェルディ「オテロ」は結構斬新
鑑賞日:2009年9月26日(土)14:00開演入場料:¥4,725 D席4階(3列45番)主催:新国立劇場新国立劇場公演G.ヴェルディ作曲歌劇「オテロ」(全4幕 イタリア語上演/字幕付)会場:新国立劇場・オペラパレス指 揮: リッカルド・フリッツァ演 出: マリオ・マルトーネ 美 術: マルゲリータ・パッリ衣 裳: ウルスラ・パーツァック照 明: 川口雅弘合 唱: 新国立劇場合唱団、NHK東京児童合唱団管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団出演:オテロ: ステファン・グールドデズデーモナ:タマ―ル・イヴェーリイアーゴ: ルチオ・ガッロロドヴィーコ:妻屋秀和カッシオ: ブラゴイ・ナコスキエミーリア: 森山京子ロデリーゴ: 内山信吾モンターノ: 久保田真澄感想: ミラノ・スカラ座は懐具合と折り合いが付かず、当方に取っての2009/2010オペラシーズンの幕開けは新国立「オテロ」。1昨年シーズン「アイーダ」のタイトルロールで容姿伴に素晴らしかったノルマ・ファンティーニを目当てに購入したが恒例のキャスト変更でタマ―ル・イヴェーリへ。 「オテロ」はヴェルディ遺作「ファルスタッフ」の一つ前、晩年期の作品であり、シェイクスピア「オセロ」を元にオペラ作曲家でもあるアッリーゴ・ボーイトに台本を書かせたもの。プログラム解説にも書かれているように、これまでのオペラ概念に捕らわれない内容で、序曲はなく、幕が開くといきなり戦いの場面で合唱の管弦楽のFFから始まる。幕が進に従って音楽は小さく、より個人内面的な感情表現となり、シェイクスピアの世界を表現している。3幕フィナーレにヴェルディが「トルコ軍の乱入」の場面を加えようとしたが、ストーリーの一貫性からボーイトが思い止ませた経緯も納得させられる。 今回は他劇場から持って来たものでなく新制作とのこと。15世紀末キプロス島が舞台だが、統治しているヴェネツィア軍にちなんで、両脇は舞台上部まで建物の壁、中央にオテロとデズデーモナが住む3面レンガの壁に囲まれた4m四方の部屋があり、周囲を水路(本物の水)で囲まれ、その間を橋でつながれ、さながら水の都ヴェネツィア風。4場面とも同じセットで唯一中央の部屋が回転し、砦、部屋、寝室を表現していた(百聞は一見にしかずと言うことで、新国立劇場HP写真を参照)。 特に3幕当たりから水に波を立たせ音を出させることで、主人公達の心の揺れを表現していた様。最後オテロが水の中で果てるのも何か意味付けがあるのか? 本日一番良かったのは管弦楽。特に4幕「アヴェマリア」の終わりで、消え入るようなバイオリンにはゾクゾクさせられた。また合唱も1幕出だしから完璧で、2幕の子供達の合唱も素晴らしかった。 主役3名何れも良かったです。タイトルロール役ステファン・グールドも1幕出だしでは管弦楽と合唱に消され気味だが、後半のデズデーモナへの愛と疑念に苛まれる歌声はピッタリで正しくヘンデルテノール。デズデーモナ役タマ―ル・イヴェーリもスカラ座でも同役を歌っていることもあり、4幕「柳の歌」、「アヴェマリア」は素晴らしいPでの歌声でした。イアーゴ役ルチオ・ガッロは容姿、歌声とも若干細目ですが、知的悪役風で中々良かったです。 先日オペラ芸術監督の若杉弘氏が亡くなられた新国立劇場ですが、シーズンオープニング公演としては演出、歌手、オケ、合唱とも出来が揃っており中々良かったと言える。 今シーズンは氏の意志を継いだ作品が公演されるので楽しみです。End