「売られた花嫁」は心が明るくなるオペラだ
鑑賞日:2010年7月19日(月・祝)14:00開演入場料:¥6,000 B席2階(LD5列)主催:(財)東京都交響楽団都響スペシャル 都響創立45周年記念特別公演スメタナ作曲歌劇「売られた花嫁」(コンサート形式)(チェコ語上演/日本語字幕付) 会場:サントリーホール指揮・演出:レオシュ・スワロフスキー演出補 :菊池裕美子合 唱 :二期会合唱団管弦楽 :東京都交響楽団出演)イェニーク :ルドヴィット ・ルーダマジェンカ :アドリアーナ・コフトコヴァヴァシェック:オトカール・クラインケツァール :ヤン・ガラクルシナ :セルゲイ・トルストフルドミラ :エヴァ・シェニグロヴァミーハ :フランティシェク・ジュリアチハータ :ルチエ・ヒルシェロヴァダンサー :三井聡、江田あつし、水那れお、今村たまえナビゲーター:朝岡聡感想: 日本ではプラハ国民劇場等の来日公演程度で滅多に演奏されないこともあり、都響の生演奏も聞いたことがなかったため、最高気温34℃の猛暑の中、サントリーホールまで出かけた。 コンサート形式だが、オケとP席の間を1m程高くし舞台化し、大きな酒樽が2本置かれている。合唱はP席中央へ50人。また客席前3列は黒い布で覆われていた。字幕は正面パイプオルガンサイドに加え2階席両端にも設置され、その前後の客席は使用しておらず、結果合計で3百席程度が客席対象外となってしまいCPは良くない。 冒頭、朝岡聡が酒場の主人として登場し、物語の設定を紹介。代わって指揮者が登場し、軽快な序曲で幕が開く(無論幕は無いが)。ダンサー2組の若いカップルが客席両サイドのドアから登場。舞台上に上がりダンスを披露。飛んだり跳ねたり、リフトもあってなかなか楽しい。3幕では一輪車や新体操のリボンまで登場し、楽しませてくれた。 続いて主人公2人が客席から登場し、今度はオケの前で歌う。また2階席に一度登場させ近づいていることを示したりと、ホール全体を上手く使っている。 3幕のオペラ・ブッファで、今回は1幕後に休憩20分を挟み、2、3幕連続演奏で全体で約2時間30分の演奏時間。一部省略している部分があるとのことだが、ストーリーが解りやすいため特に違和感なく、農民が上流階級を上手くだまして結婚を手に入れるくだりは「フィガロの結婚」を思い出させる。 音楽は終始明るい基調で、踊りの場面は民族舞踊が入り、楽しい気分にさせる。停滞することなく進んでいったのは、本オペラをよく知り、体中を使った大きな振りでオケを引っ張って行った指揮者レオシュ・スワロフスキーの功績でしょう。都響も今回初めて聞いたが、弦楽器、管楽器とも丁寧な響きで、けして飛び出すことなくバランスの良さを感じた。歌に合わせて、指揮者やオケのパートソロなどが見られるところがコンサート形式のメリットだ。 何と言っても成功に貢献したのは、主人公2人の歌声でしょう。マジェンカ役のアドリアーナ・コフトコヴァは、ビブラート無く美しくかつオケに負けない力強さもある歌声で感情表現も豊か。イェニーク役のルドヴィット ・ルーダも、良く通る明るいリリコな歌声で終始歌い、アリアも素晴らしかった(日本人にはいないタイプ)。この他の歌手も全て経験のあるチェコとスロヴァキアの歌手で固めたことが全体をスムーズに運び盛り上げていた。 3連休は17日「ファウストの劫罰」鑑賞、18日モーツァルト「レクイエム」のオケ合唱合わせ、そして19日「売られた花嫁」鑑賞とクラシック音楽に浸れ、充実した3日間となった。 また「ファウストの劫罰」と「売られた花嫁」は同じオペラでも全く異なる芸術表現であり、オペラ音楽の幅の広さを実感することが出来た。これだから、劇場通いはやめられない。End