新国立「ばらの騎士」はR.シュトラウスの音楽が溢れて
鑑賞日:2011年4月16日(土)14:00開演入場料:¥3,780 4階(R7列)【主 催】新国立劇場新国立劇場2010/2011シーズン公演リヒャルト・ワーグナー作曲歌劇「ばらの騎士」(ドイツ語/字幕付/全3幕)会場:新国立劇場オペラパレス指 揮:マンフレッド・マイヤーホーファー演 出:ジョナサン・ミラー美術・衣裳:イザベラ・バイウォーター照 明:磯野 睦合 唱:新国立劇場合唱団管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団出 演:元帥夫人 :アンナ=カタリーナ・ベーンケオックス男爵 :フランツ・ハヴラタオクタヴィアン:井坂 惠ファーニナル :小林由樹 ゾフィー :安井陽子マリアンネ :黒澤明子ヴァルツァッキ:高橋 淳アンニーナ :加納悦子警 部 :長谷川 顯元帥夫人の執事:小貫岩夫ファーニナルの執事:経種廉彦公証人 :晴 雅彦料理屋の主人 :加茂下 稔テノール歌手 :水口 聡帽子屋 :國光ともこ動物商 :土崎 譲感 想: 震災の影響でオペラ公演中止が相次ぎ、当日11時頃の大きな余震でJR湘南新宿ラインが新宿止まりに変更になり遅れる中、初台へ出かけた。 指揮者登場に続き、序奏が始まるが、ダイナミズムも大きくゆったりとした演奏で一変にオペラに引き込まれた。この導入曲は、元帥夫人とオクタヴィアンの一夜の情事を描いており、これだけでわくわくした気分になれた。 幕が開くと元帥夫人の寝室が表れるが、舞台装置は2007年公演を見たので省略。今回右寄りの席だったので部屋に入る前の廊下の風景がよく見え、そこでの演技も楽しめた。同じオペラ公演でも座席の位置で印象が異なることを再確認。 今回海外からの出演者が来日不可となり、主役4人が変更。元帥夫人役アンナ=カタリーナ・ベーンケは声の表現力、演技も良かった。変更無く来日したオックス男爵役フランツ・ハヴラタは低音が良く響く声で、田舎中年貴族の演技がピッタリ。 カバーから出演となったオクタヴィアン役の井坂惠は声量が足らない。メゾの音域で低音も多く響かせるのは難しいのだが、オケも十分小さく演奏していたにも関わらず、かき消される所あり。2007年チューリッヒ劇場来日公演の同役カサロヴァと比べるのは無理があるか。 ゾフィー役の安井陽子は高音部が多いこともあり、声は届き、修道院を出たての世間ずれしていない娘役の演技が出来ていた。3幕最後の三重唱は井坂惠も頑張り、それなりに良く出来ていたと思う。 他の日本人出演者も演技、歌唱含めそれぞれ良く、日本ではレベルの高い公演と言えるでしょう。 この日の一番は何と言っても管弦楽。1幕ラストのバイオリンは消え入るようなPPを最後まで響かせ素晴らしい(コンマス崔文洙のソロか?)。 2幕のオックス男爵のワルツも、ウイーン風で思わず踊り出したくなる音楽、3幕ラストも歌手と一体となって全編でR.シュトラウスの音楽を表現出来ており、いつもの東フィルや東響の爆発音ではなく、新日本フィルらしい繊細さを実感できた。 本来なら常任指揮アルミンクが振る予定だったが、来日出来ず心配していたが、新国立HP「ゲネプロ無事終了!」にもあるように、代役のマンフレッド・マイヤーホーファーの功績も大きかったのでしょう。安易に日本人指揮者を選ばなかったのは尾高芸術監督の意向か。 また入場時の配布物の中に「ご観劇の際のお願い」と題した1枚紙が入れられ下記の記述あり。 『「バラの騎士」は各幕の最後の一音まで精緻に作られています。・・・ 拍手は幕が下りてから・・・拍手は幕が下りきるまでお待ち頂き、 オーケストラの繊細な音もお聴き逃しなさいませぬよう、 最後の最後までお楽しみ下さい。』 このおかげでフライングブラボーもなく聞くことが出来た。できれば幕が下りて同時ではなく十数秒の静寂の間がほしかったが。 休憩2回含め4時間を超える公演だったが、ずっと音楽に引き込まれ楽しむことが出来た。この公演を行うには震災後大変な苦労があったかと思うが、音楽的レベルも高く、出演者、スタッフ皆さんの意気込みが感じられる公演となった。 次の新国立鑑賞は「蝶々婦人」はパスし、6月「コジ・ファン・トゥッテ」。原発の影響はまだまだ続く気配ではたして出演者は来日するのか?そう言えばコジはカバー歌手での公演もあったはずで、代役は立てやすいか。 等々それらを含め楽しんで待つことに。 End