「ルサルカ」は明る目のワーグナー
鑑賞日:2011年11月26日(土)14:00開演入場料:¥3,780 D席3階(R3列)【主 催】新国立劇場新国立劇場2011/2012シーズン公演ドヴォルザーク作曲歌劇「ルサルカ」(全3幕:チェコ語上演/字幕付)会場:新国立劇場オペラ劇場指 揮:ヤロスラフ・キズリンク演 出:ポール・カラン美術・衣裳:ケヴィン・ナイト照 明:デイヴィッド・ジャック合 唱:新国立劇場合唱団管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団出演:ルサルカ:オルガ・グリャコヴァ イェジババ(魔法使い):ビルギット・レンメルト 王 子:ペーター・ベルガー ヴォドニク(水の精):ミッシャ・シェロミアンスキー 外国の公女:ブリギッテ・ピンター 森 番:井ノ上 了吏 料理人の少年:加納悦子 第一の森の精:安藤赴美子 第二の森の精:池田香織 第三の森の精:清水華澄 狩 人:照屋 睦感想: 「新世界より」で有名なドヴォルザークのオペラ「ルサルカ」の公演、余り日本で上演されないこともあり、今回ノルウェー国立オペラ・バレエからのプロダクション・レンタルとのことで演出も楽しみに、初冬の天候の中、初台まで出掛けた。 指揮者登場、序曲が始まると幕が上がり、家の中のセットが登場。ベッドには女性がぬいぐるみと遊び、隣の部屋のテーブルには父親と思われる男が座っている。女性が立ち上がり鏡の前に立つと、白い煙と共にその中に引きこまれ、家のセットは舞台地下へ下がり、舞台奥から3方の壁に木々が描かれたセットが前に出てきて第1幕。 2、3幕とも基本的に同じセットを使い、テーブルや倒れた樹木などが入る程度で、あとは照明を使って、森、水の中、城の中を表現。月も映像を使って鮮やかに浮かび上がらせており、すでに新国立のHPには写真が掲載されているので百聞は一見にしかずで。 最後はセットが下がり再び家の中が登場し、女性がベッドから起き上がることで、全ては少女の夢の中の出来事と言っているのだが、音楽や物語から受けた重みからは違和感が残った。 音楽はワーグナー的で、登場人物に合わせたライトモチーフが用いられ、途切れなく音楽が続く。ただ旋律はアリア「月に寄せる歌」に代表されるように美しく、抒情的なスラブ民謡を思わせる明るめのメロディーが多く聞こえてくる。 歌手は総じて大音量の管弦楽の中からもよく聞こえてくる。タイトルロールのルサルカ役オルガ・グリャコヴァは、最初は音程をずり上げ気味で「月に寄せる歌」もサラリと流れこんなものかと思ったが、幕が進むに連れてどんどん声が出てきて、最後は劇場中響く声で、鼓膜が震え、素晴らしかった。 王子役ペーター・ベルガーは明るいテノーラルな声でも、よく聞こえてきた。ヴォドニク役ミッシャ・シェロミアンスキーも「かわいそうなルサルカ」を表情豊かに歌い存在感があった。日本人の中では森の妖精の3重唱が演技含め良かった。 管弦楽は若干危ない所もあったが、ワーグナー風のドヴォルザーク音楽をよく表現出来ていたと思う。 新国立劇場は既に来シーズンの演目が一部発表され、その中にゼッフィレッリの豪華演出「アイーダ」の再演が予定されており、今から楽しみ。End