METライブ・ビューイングは今シーズンもネトレプコで開幕
鑑賞日:2013年11月03日(日)10:00開演入場料:¥3,500 F列【制作・配給】松竹(株)METライブ・ビューイング2013-14チャイコフスキー作曲 歌劇「エフゲニー・オネーギン」(全3幕、ロシア語上演/日本語字幕付)会場:名古屋ミッドランドスクエアシネマ(MET上演日:2013年10月5日)指揮:ワレリー・ゲルギエフ演出:デボラ・ワーナーディレクション:フィオナ・ショウ美術:トム・パイ衣装:クロエ・オボレンスキー照明:ジャン・カルマン映像:フィン・ロス、イアン・ウィリアム・キャロウェイ振付:キム・ブランドストラップ管弦楽:メトロポリタン歌劇場管弦楽団合 唱:メトロポリタン歌劇場合唱団バレエ:メトロポリタン歌劇場バレエ団出演:エフゲニー・オネーギン:マリウシュ・クヴィエチェンタチヤーナ:アンナ・ネトレプコレンスキー:ピョートル・ベチャワオリガ :オクサナ・ヴォルコヴァレヴァイン グレーミン:アレクセイ・タノヴィッツキー感想: 最近WOWWOWでも映像が流れるようになり知名度も上がってきたMETライブ・ビューイングの2013-14シーズンの開幕はチャイコの「エフゲニー・オネーギン」、ネトレプコが出演とのことで名古屋駅前のミッドランドスクエアまで出掛けた。 休憩が入って4時間の長丁場のため、食べ物、飲み物を買い込んで客席へ。客席は中央付近は満席で全体で7割程度の入り。 今回演出のデボラ・ワーナーは英国演劇界からグラインドボーン等でオペラ演出を多数行い大英帝国勲章受勲し今回MET初演出。原作通りの時代設定で入り込みやすい。第1幕では奥の部屋をガラス越しに見せたり、第2幕野外の決闘の場面等での照明の使い方が演劇らしい。 幕間の映像で、通常オペラでは見ることの出来ない緊迫した中での手際の良い舞台設定変更の様子が見られるのもライブ・ビューイングならでは。 健康上の理由でワーナー自身はMETへ表れず、代わりに女優のフィオナ・ショウが詳細な演技指導を行ったとのこと。 ライブ・ビューイングの大画面で観ていると、群衆(合唱団)の一人ひとりまで詳細な動きが付いており演劇舞台を観ているよう。 さらに主役歌手たちは、演技は勿論のこと、場面に合わせ表情の細部まで付けられており、メイキャップも通常のオペラ舞台ほど誇張されずまるで映画やTVドラマの様に。 歌手ではネトレプコが昨年「愛の妙薬」の肉食系アディーナとは打って変わって、第1幕の田舎地主の純粋な16歳娘と第3幕の公爵夫人の成熟した大人の女性を見事に演じ分けていた。全体的に内に秘めた想いを歌う場面が多く、第1幕の”手紙の場”長時間アリアや第3幕の二重唱はその心情がそのまま歌われているようで素晴らし。 幕間のインタビューでヴェルディアリア集CDを出し、今後はこれまでの娘役は余り歌わないとのことで、年齢相応のレパートリーに拡げて行くのでしょう。 タイトルロールのマリウシュ・クヴィエチェン、レンスキー役ピョートル・ベチャワもMET以外で本作に出演しており、容姿、歌声が役にピッタリ。 管弦楽もゲルギエフの指揮に合わせ、チャイコの叙情的な旋律をドラマチックに演奏するが、けして緩みすぎること無く、歌手と一体となって終始音楽が流れていたのは指揮者の功績でしょう。 ライブ・ビューイングでの歌手たちは、歌声や容姿は当然とし、映画・舞台俳優並みの演技、表情表現まで年々レベルアップして来ており、詳細な演出含めこれまでのオペラとは違った進化を感じた。エンディングの音楽が途切れる所でのラブシーンは正しく映画そのもの。 今シーズンこの後9作が公開予定で、カウフマンがタイトルロールの「ウェルテル」、グリゴーロ他若手歌手でゼフィレッリ演出「ラ・ボエーム」、復帰したレヴァインが振る若手歌手主体「コジ・ファン・トウッテ」など楽しみな公演があり、時間が合えば見に行きたい。End