マリボール歌劇場カサロヴァは恋愛に真剣なカルメン
鑑賞日:2014年6月27日(金)18:30開演入場料:¥14,000 B席4階6列 【主催】中部日本放送・名古屋市第37回 名古屋国際音楽祭スロヴェニア国立マリボール歌劇場公演ビゼー作曲歌劇「カルメン」(全4幕:フランス語上演/日本語字幕付)会場:愛知県芸術劇場大ホール指 揮:サイモン・ロビンソン演 出:フィリップ・アルロー管弦楽:マリボール歌劇場管弦楽団合 唱:マリボール歌劇場合唱団 名古屋少年少女合唱団バレエ:マリボール歌劇場バレエ団出演:カルメン :ヴェッセリーナ・カサロヴァドン・ホセ :エフゲニー・アキモフエスカミーリョ:ジャック・グレッグ・ベロボフラスキータ :ヴァレンティナ・チュデンメルセデス :アマンダ・ストヨヴィッチダンカイロ :ヤキ・ユルゲッツレメンダード :ドゥシャン・トポロヴェッツスニガ :ヴァレンティン・ビヴォヴァロフモラレス :セバスティヤン・チェロフィガ感 想: 希少な名古屋での海外歌劇場来日公演、カサロヴァがカルメンを歌うとのことで1年近く前のCBC先行発売でチケットを入手し、定時で会社を飛び出して、栄の愛知県芸術劇場へ出掛けた。 心配していたカサロヴァの変更は無かったが、指揮者が変更に。 数分押しで客電が消え、チューニング後、指揮者登場。幕が閉まったまま有名な序曲を演奏。音量は弱め目で金管に多少不安定な音が聞こえたが無難に演奏。マリボール歌劇場は大ホールで定員844人なのでこの定員2,500人の愛知県芸術劇場大ホールはかなり大きい入れ物なのでしょうが、歌が始まると歌手の音量、テンポに合わせ、邪魔すること無く盛り上げるのは劇場付きのオーケストラならでは。 幕が開くと第一幕タバコ工場前の広場になるが、舞台の上下左右を青色の四角い枠で囲み、その奥に窓が描かれた壁。さらに上部から複数の窓枠が吊り下げられ、照明が加わって立体感のある舞台。第二幕は、長机、椅子と上部から照明が吊り下げられ酒場に。第三幕は荷物が山積みされ、密輸業者のアジトになり、ミカエラのアリア「何も恐れるものはない」で舞台下手半分黒幕が引かれ、その後黒幕が開くと荷物が無くなり、山中の夜空の風景が映しだされる。第四幕は舞台上に5枚の板が半円形に置かれ、奥の壁とで闘牛場を表現。 METやスカラ座のような豪華舞台装置ではないが、最小限の装置、置物と照明で、各場面が立体的に表されていた。 衣装も各々の役柄に合ったもので、時代設定の置換えなど無く、オーソドックスな演出となっていた。 バレエも6人と少ないものの、第二幕や第四幕を盛り上げていた。 また所々あれ?と思わせる演出が入っており、第一幕女工同士の喧嘩の場面では、モラレスが音楽に合わせて体操のような動きをしたり、カルメンの取り調べではタイプライターを出して音楽に合わせ打音、第二幕の間奏曲ではフラスキータとメルセデスが足や脇の下をカミソリで手入れをしたり、第四幕エスカミーリョがジプシー達にに入場券を配る細かい演技など演出家の遊び心でしょう。 ただ第四幕最後ドン・ホセに刺されたカルメンが倒れる場面で、闘牛で傷ついたと思われるエスカミーリョも連れて来られカルメンと並んで寝かされる場面は、全く蛇足に感じた。 肝心の歌手は、タイトルロールのカサロヴァが深みのある歌声で、一般的な自由奔放なジプシー女では無く、恋愛を真剣に生きる女性を演じていた。 既に数年前からウィーン歌劇場始め多くの劇場で本役を歌って来たこともあり、本日も歌詞の一言ずつに気を配って歌い演技を付けていた。そのため総じてテンポは遅れ気味になるが、オケは音量含め歌声を浮き出させるように上手く合わせていた。 ハバネラのアリアの直前の合唱がやたら早く、急にスローテンポでカサロヴァが歌い始めたが、これはもう少し早く歌ってほしいとの指揮者のアピール?ひょっとして前指揮者はこの勝手なテンポに我慢ならず辞めたのかもと勘ぐってしまうほどのテンポだが、役柄に入り込んで歌い込むタイプのカサロヴァは譲らないのでしょうね。 ドン・ホセ役エフゲニー・アキモフは、容姿、年齢が少々合わないものの、日本人には無い高音が柔らかく響くテノールの歌声で役柄に合っていた。 その他の役も皆さんよく歌えており、合唱も男女20人ずつでもよく聞こえて来た。 また今回の来日公演で、第一幕の子供たちは演奏する劇場地域の少年少女合唱を使っており、本日は名古屋少年少女合唱団が出演し、歌だけでなく演技も良く出来て場面を盛り上げていた。 管弦楽、歌手、演出含め、全体的にレベルの高い演奏となっていた。 唯一残念なのは、平日の夜公演の影響もあり、客席に観客が少ないことで、半分程度か。当方座った4階席は3割程度で、後半の第三、四幕は、空席の前の列に移動し、前席のお客の頭を気にすること無く、横10席分を一人で足を伸ばして観ることが出来で楽だったが、名古屋には音大も複数あるので、格安でチケットを配って集客しても良いのでは。 また別な役でのカサロヴァの歌声を是非聞きたい。 End