リヨン歌劇場ホフマン物語は全てが素晴らしい
鑑賞日:2014年7月5日(土)15:00開演入場料:¥18,000 D席3階5列 【主催】Bunkamura/テレビ朝日/イープラス/AMATIBunkamura25周年記念フランス国立リヨン歌劇場公演オッフェンバック作曲歌劇「ホフマン物語」(全5幕、フランス語上演/日本語字幕付)会場:Bunkamuraオーチャードホール スタッフ台 本:ジュール・バルビエ/ミシェル・カレ演出・衣裳:ロラン・ペリー美 術:シャンタル・トマ照 明:ジョエル・アダンビデオ:チャールズ・カルコピーノ指 揮:大野和士「アントニア」合唱指揮:アラン・ウッドブリッジ合 唱:フランス国立リヨン歌劇場合唱団管弦楽:フランス国立リヨン歌劇場管弦楽団 出演ホフマン:ジョン・オズボーンオランピア/アントニア/ジュリエッタ/ステッラ:パトリツィア・チョーフィリンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット:ロラン・アルバロミューズ/ニクラウス:ミシェル・ロジエ アンドレ/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ:シリル・デュボア ヘルマン/シュレーミル:クリストフ・ガイ ナタナエル/スパランツァーニ:カール・ガザロシアン アントニアの母の声:マリー・ゴートロ 感想: 大野和士氏指揮のリヨン歌劇場公演が有るとのことで、先行抽選でチケットを確保し、梅雨時期の蒸し暑い中、渋谷のオーチャードホールまで出掛けた。 階段を上っていつもの3階席最後列へ。人気公演なので客席は満席状態だったが、なぜか当方両サイドは空き席だったので、足を伸ばして鑑賞出来たのは幸い。 5分押しでチューニングの後、会場が暗転と成り、指揮者登場。いきなり幕が開き、暗闇の中スポットに照らし出された歌姫ステッラ?がハープに合わせアリアを歌う(「ドン・ジョヴンニ」ドンナ・アンナのアリアらしい)。 元々「ホフマン物語」はオッフェンバックの未完の遺作のため、編曲や演出の自由度が高いのでしょう。 演出は音楽に合わせ、舞台上の壁、置物、照明がどんどん変わっていく。舞台上は総じて暗く、左右、中央の一部だけが使われ、過去の記憶、夢物語の世界を感じる。 「オランピア」の幕(第2幕)では、オランピアが短い足でアリアに合わせて空中に浮かび上がる。と前に出て来た所で、TVや映画カメラに使うクレーンに乗っていた種明かしあり。 ワルツの場面では、自動で動く車輪のついた台車に乗っていたようでロボットのような動きを表現。 「アントニア」の幕(第3幕)では、ミラクル博士が登場すると、窓の外や舞台全体に渦巻きが回転。歌い出しにあわせ、舞台左右、階段の上等、場所を次々に変えて登場することで悪魔の様な不気味さを演出。 死んだ母の歌声では、歌に合わせてCGで作ったゴーストのような白黒の顔の映像を壁一面に映し歌わせる。 音楽を邪魔するものでなく、現在的な舞台技術も取り入れた洒落た演出で、より音楽を引き出すことに成功している。 オーケストラの方は重めの演奏に感じたが、「オランピア」幕の間奏曲は音が広がる華やかな演奏で如何にもフランスのオケの音を感じた。 強弱、テンポの変化が歌手ともピったりで、昨年観た東京二期会公演より大きな音楽を感じることが出来たのは指揮者の功績でしょう。 歌手の方は、一人四役のパトリツィア・チョーフィの歌唱力に驚き。オランピアはレッジェーロ、アントニアはリリコ、ジュリエッタはスピントの声質が求められる役で、昨年の東京二期会公演の様に各々別なソプラノが歌うことが多いのだが、ステッラが3人全て兼ね備えた女性との役割を明確にするため一人で全てを歌うにもかかわらず、各役に合わせた歌声で完璧に歌えてしますのは素晴らしい。 タイトルロールのジョン・オズボーンもテノールのよく通る声で、苦悩の歌声含めこちらも素晴らしい。 リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット役のロラン・アルバロは深いバリトンの歌声で、こちらもホール中に響く。歌としては大げさではなく淡々と歌っているのだが、音楽自身と演出により、ホフマンを悪魔のようにつきまとう恐怖感を良く表していた。 その他の役も皆さんよく歌われており、合唱も音量もあり部厚いハーモニーを聞かせていた。 以前オーチャードホールでオペラ公演を聞いた時は、あまり響かないホールとの印象だったが、今回はオケ、歌手ともよく聞こえてきて、やはり技量、力の差なのでしょう。 今回、所要があり、3幕までで退出し、4幕「ジュリエッタ」、5幕プロローグが聞けなかった。ホフマンの舟唄を聞けなかったのは誠に残念。 大野和士氏の素晴らしさ、本場の歌手の実力を実感できる公演だった。また欧州の歌劇場引き連れて来日して欲しい。End