MET-LV「遙かなる愛」は音楽と演出に驚き
鑑賞日:2017年1月22日(日)10:00開演入場料:¥3,600 (スクリーン1/P列) 【主催】松竹株式会社METライブビューイング2016-2017シーズン歌劇「遙かなる愛」カイヤ・サーリアホ作曲 全5幕(フランス語上演/字幕付)会場:ミッドランドスクエアシネマ指 揮:スザンナ・マルッキ演 出:ロベール・ルパージュ美 術:ミカエル・カリー照 明:レビン・アダムス台 本:アミン・マアルーフ管弦楽:メトロポリタン歌劇場管弦楽団合 唱:メトロポリタン歌劇場合唱団出演:クレマンス(トリポリの女伯爵):スザンナ・フィリップスジョフレ・リュデル(ブライユ領主、騎士歌人):エリック・オーウェンズ巡礼の旅人:タマラ・マムフォードMET上演日:2016年12月10日感想: 今シーズン初めてのMETライブビューイングを観に名古屋駅前のミッドランドスクエアへ出掛けた。作品は現代オペラでフランス女流作曲家カイヤ・サーリアホ「遙かなる愛」、当方初見で日本では2015年5月東京オペラシティでコンサート形式の公演のみとのこと。 物語は12世紀の吟遊詩人ジョフレ・リュデルが、巡礼の旅人の話から海の彼方の高貴な女性クレメンスの存在を知り、理想の愛を求めて彼女に会いに行くが、途中で病となり、お互いの愛を確かめたところで息絶えてしまうと言うシンプルな内容、登場人物は3人だけで世界共通の解りやすいストーリーだ。 序曲はフルート、ピッコロの叙情豊かな音楽で日本の能や雅楽を想わせる旋律。無調性ながらもフランス語をのせた歌の旋律は美しく、ピアノやパーカションが入っても邪魔すること無く、漂うように切れ目なく音楽が続いていく。 歌手3人は何れも素晴らしい歌声でその想いを歌い上げる。デジタル録音、映画館の音響も良く、高音では耳が震え、会場のざわめきも聞こえ、劇場に居るような錯覚を覚える。 何と言っても素晴らしいのは演出。舞台には上手から下手までLEDライトが取り付けられたラインが約30本、オケピット上から舞台奥まで貼られている。このLEDラインの色を変えることで朝、昼、夜の海を表すだけでなく、点滅をコントロールすることでまるで波が起こっているように見える。 このライン間にゴンドラの船が浮かび左右に動く。中央にはカメラクレーンの様な幅1m、長さ5m程の台が上下し、左右にも動き、歌手がその上で歌うことで岸を表現。 圧巻だったのは2部4幕でリュデルが船に乗りクレマンスの居るトリポリに向かう場面で、音楽に合わせ、LEDラインの傾斜が変わり、中央付近だけが光り立体感を出すことで海の嵐を表現し、客席のこちらは船に乗って酔っている気分になって来る。 更にリュデルの夢の中でクレマンスが歌う場面では、LEDラインの下から迫り上がってクレマンスが登場し、照明効果で亡霊のように浮かび上がって見えた。 夢の中に居るような気分になり、この官能的な作品の世界へより惹きつけられた演出に驚き。本演出のロベール・ルパージュは「シルク・ドゥ・ソレイユ」で世界的な人気を博しているとのことで、美術設計のミカエル・カリー氏と一緒に幕間のインタビューに登場したが2人共多忙とのことで世界の別な場所を結んでのMET総監督のピーター・ゲブル氏とのインタビューとなっていた。本作初演時に作曲者カイヤ・サーリアホもロベール・ルパージュ氏の演出を希望するも多忙のため実現しなかったとプログラムには記載。 今回のLEDラインの他、プロジェクションマッピング等映像技術はどんどん進歩しており、これから新しい演出のオペラが出てくることを期待。 End