東京二期会「セルセ」はそれなりに面白いが、違和感が・・・
鑑賞日:2021年5月23(日)14:00開演入場料:6,000円(BC席シーズンセット券/ 2階10列)【主催】(財)東京二期会二期会創立70周年記念公演二期会ニューウェーブ・オペラ劇場オペラ「セルセ」ヘンデル作曲全3幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:めぐろパーシモンホール 大ホールスタッフ指 揮 :鈴木秀美演 出 :中村 蓉装 置 :松生紘子衣 裳 :田村香織照 明 :喜多村 貴演出助手:根岸 幸舞台監督:幸泉浩司公演監督:大島幾雄管弦楽 :ニューウェーブ・バロック ・オーケストラ・トウキョウ(NBO)コンサートマスター:戸田 薫合 唱 :二期会合唱団出演セルセ :澤原行正アルサメーネ:本多 都アマストレ :長田惟子アリオダーテ:田中夕也ロミルダ :塚本正美アタランタ :新宅かなでエルヴィーロ:堺 裕馬ダンサー:中村 理、北川 結、池上たっくん、久保田 舞、田花 遥、山田 暁感想 コロナ禍緊急事態宣言下、東京二期会がバロック・オペラ「セルセ」の公演を行うとのことで、都立大学駅で降り、めぐろパーシモンホールに向かった。 初めて訪れるホール、木材、ガラス、コンクリートを組み合わせた中々素敵な建物で、手前のめぐろ区民キャンパスの緑豊かな公園にマッチしている。中に入るとホール・ホアイエは2階まで吹き抜けになっており、全面ガラス張りからの公園の眺めが目に優しい。 ホール入口でカメラで検温、アルコールで手を消毒、チケット半券を自身でモギリボックスへ、来場者カードを箱に入れ、プログラムをピックアップと通常の新型コロナ対策がされていた。 今回、3回目の緊急事態宣言前にチケット売出し、宣言後に発売停止したため、左右の空席は設けられず、6~7割の入りか。 オケピットにチェンバロ2台が指揮者の左右に置かれ、テオルボ、リュート等が見える。ニューウェーブ・バロック・オーケストラ・トウキョウは、東京二期会のバロックオペラ演奏のために集められた古楽器演奏集団らしく、BCJのメンバーも見える。 演奏は完璧なピリオド奏法のため、これ以上大きなホールでは難しいでしょう。 ほぼ時間通りに指揮者登場し、演奏が始まると直ぐに幕が上がる。舞台中央奥から左右手前に壁が設けられ、その壁の一部から場面に合わせ、酒場と姉妹の部屋が瞬時に現れる。また中央付近に階段が設けられ、壁の上も演技の場となったり、壁奥に隙間を作り、そこから登場したりと次々に場面が変わる。 原作は3幕構成だが、第1幕と第2幕前半を連続で演奏し、休憩は1回のみ。 多くの曲にダンサーによるダンスが入り、出演者たちも歌いながら踊り続けるので、中々大変。インド映画のミュージカルの様。欧州ではバロック音楽に奇抜な演出やダンスを加えることが流行っているようで。確かにピリオド奏法にはビートがあり、ダンスが合う。 オペラの内容も喜劇なので、当方としては違和感なく楽しめた。 合唱は各パート4人の16人、コロナ対策で舞台上には登場せず、舞台壁上で黒服で楽譜を持って声だけで参加。 歌手は皆さん大変なダンスの中でも、正しく歌えていた。その中でもロミルダ役塚本正美のアリア「あの人を愛する?、それは妬みです」 完璧な音程と声の響きで素晴らしかった。 但し違和感を感じたのは2箇所。 1つは「オンブラ・マイ・フ」がなんと3回も歌われる。まずは原曲通り第1幕冒頭にセルセが歌うが、次に何故かアルサメーネが第2幕後半 「この苦しみを終わらせるために」の絶望の後に歌い、更にフィナーレの合唱の後にセルセが再度登場し、第1幕の人々が集まり大木のように動く演出でまた歌うのである。確かに有名で美しいアリアだが、なぜ3回も同じアリアが歌われるのか?フィナーレの後に付け足しなんて何故? 今回公演の最大の違和感はセルセがテノールで原曲よりオクターブ低いままで全て歌われたこと。演出優先でテノールにしたと思われるが、原作のカウンターテノールかメゾ・ソプラノでないと、歌声が響いて来ず、重唱では和音の幅が広がり綺麗に聞こえない。 違和感を感じる所はあったものの、沢山のダンスで、音楽を楽しむことが出来た。新国立劇場「ジュリオ・チェーザ」中止は残念だったが、バロックオペラの演奏機会が増えることを期待したい。End