新国立「カルメン」は歌手、オケ、演出のバランスが良い
鑑賞日:2021年7月11日(日)14:00開演入場料:4,950円(D席 4階2列)【主催】(財)新国立劇場新国立劇場2020/2021シーズンオペラ『カルメン』ビゼー作曲全4幕(フランス語上演/日本語及び英語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :大野和士演 出 :アレックス・オリエ美 術 :アルフォンス・フローレス衣 裳 :リュック・カステーイス照 明 :マルコ・フィリベック管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団合 唱 :新国立劇場合唱団、 びわ湖ホール声楽アンサンブル児童合唱:TOKYO FM少年合唱団出演カルメン :ステファニー・ドゥストラックドン・ホセ :ミグラン・アガザニアン→村上敏明エスカミーリョ:アレクサンドル・ドゥハメルミカエラ :砂川涼子スニガ :妻屋秀和モラレス :吉川健一ダンカイロ :町 英和レメンダード:糸賀修平フラスキータ:森谷真理メルセデス :金子美香感想 新国立劇場「カルメン」は新演出のプレミエ公演で指揮者が大野和士とのことで、まん延防止処置から緊急事態宣言切り替え前日の東京、初台まで出掛けた。 明日からの緊急事態宣言では、客席50%以下の制限が復活するため、既に50%超えている公演のチケットは7/12以降販売停止とのこと。本日の公演は制限前のため、ほぼ満席の状況で開催された。 有名な序曲が始まって直ぐに幕が開き、鉄骨を組み上げた壁で野外ステージの裏側が現れる。ミュージシャンが2箇所の入り口から出入りし、そのファン達が集まってくる。 原作のタバコ工場は野外ステージ、カルメン達はミュージシャンと業界関係者、工場の竜騎兵は警備員、密輸団は麻薬販売と現代に読み替えられているが、それなりに話が繋がり、2019年神奈川県民ホール「カルメン」公演のブロードウェイ、ハリウッド同様、違和感はなし。エスカミーリョは闘牛士なのかミュージシャンなのかはよく解らず。 今回休憩は1回のみで1幕と2幕、3幕と4幕が場面転換の数分を挟んで連続して演奏された。 序曲が終わると鉄骨の壁が上がり、ステージが登場。手前でミカエラのやり取りの後、カルメンがハバネラを歌う所がステージ奥のスクリーンに拡大して写される。ミュージシャン、観客入り乱れての喧嘩騒動となり、警備員のモラレス、ドン・フォセ、スニガが登場し、カルメンを取り逃がし1幕終了。2幕の酒場の場面は、鉄骨の壁の中にテーブルが置かれ、ステージ近くのレストランスペースか。 30分の休憩挟んで、3幕はステージ裏の機材置き場のスペースで、上部から薄光りが入り明け方の設定か。密輸団が楽器運搬用のワゴンに麻薬を入れ麻薬を運搬する中で、カード占い、エスカミーリョ登場、ミカエラからの母の病状を聞き、ドン・ホセが故郷へ。 4幕は1幕最初のステージ裏側に赤いカーペットが敷かれ、次々とミュージシャンが通り、ファンと記念写真。エスカミーリョとカルメンが腕を組んで登場するとドン・ホセが現れ、最後はナイフで刺して幕。 オケは序曲はスピーディーに演奏されるものの、ハバネラ等はかなりゆっくりとしたテンポ。歌手の歌いやすさを重視したか、楽しむことが出来た。当方としてはもう少しテンポアップした演奏の方が好みだが。 なお本公演はオペラ・コミック様式を取り入れ、途中セリフが多く入っている。 歌手は、タイトルロールのステファニー・ドゥストラックが素晴らしい。中域から低音でも声の明るさが保たれ聞きやすい。容姿もカルメンにピッタリ。 ドン・ホセ役の村上敏明は、初日演技のみで歌唱の代役を立て歌わなかったようだが、今日は最後まで熱唱。花の歌は素晴らしかった。ただ全体的に明るめの声質のみであり、いつもの中域の表現豊かな歌声が聞こえなかったのは本調子ではなかったためか。 エスカミーリョ役のアレクサンドル・ドゥハメルは体格よく目立っていたが、歌声はそれほど届いて来ない。 ミカエラ役の砂川涼子はお得意の役で、純粋な田舎娘の雰囲気が出てて大変良かった。 その他の役は普段主役級の日本人歌手がそつなく歌い、問題なし。重唱もバランスが良い。 そして合唱も児童合唱含め完璧だった。 コロナ禍で海外の歌手、演出家を集め、プレミエ公演を行うのは、関係者は大変な苦労があったことと思われる。 やはりすべてを取りまとめた大野和士音楽監督の功績でしょう。 次の大野和士プロデュースのオペラ夏の祭典「マイスタージンガー」が楽しみ。End