『行きつ戻りつ』(乃南アサ著) 本のなかの暮らし〈4〉
<!--
/* Font Definitions */
@font-face
{font-family:Wingdings;
panose-1:5 0 0 0 0 0 0 0 0 0;
mso-font-charset:2;
mso-generic-font-family:auto;
mso-font-pitch:variable;
mso-font-signature:0 268435456 0 0 -2147483648 0;}
@font-face
{font-family:"MS 明朝";
panose-1:2 2 6 9 4 2 5 8 3 4;
mso-font-alt:"MS Mincho";
mso-font-charset:128;
mso-generic-font-family:roman;
mso-font-pitch:fixed;
mso-font-signature:-1610612033 1757936891 16 0 131231 0;}
@font-face
{font-family:Century;
panose-1:2 4 6 4 5 5 5 2 3 4;
mso-font-charset:0;
mso-generic-font-family:roman;
mso-font-pitch:variable;
mso-font-signature:647 0 0 0 159 0;}
@font-face
{font-family:"\@MS 明朝";
panose-1:2 2 6 9 4 2 5 8 3 4;
mso-font-charset:128;
mso-generic-font-family:roman;
mso-font-pitch:fixed;
mso-font-signature:-1610612033 1757936891 16 0 131231 0;}
/* Style Definitions */
p.MsoNormal, li.MsoNormal, div.MsoNormal
{mso-style-parent:"";
margin:0mm;
margin-bottom:.0001pt;
text-align:justify;
text-justify:inter-ideograph;
mso-pagination:none;
font-size:12.0pt;
font-family:Century;
mso-fareast-font-family:"MS 明朝";
mso-bidi-font-family:"Times New Roman";
mso-font-kerning:1.0pt;}
p.a, li.a, div.a
{mso-style-name:リスト段落;
margin-top:0mm;
margin-right:0mm;
margin-bottom:0mm;
margin-left:48.0pt;
margin-bottom:.0001pt;
mso-para-margin-top:0mm;
mso-para-margin-right:0mm;
mso-para-margin-bottom:0mm;
mso-para-margin-left:4.0gd;
mso-para-margin-bottom:.0001pt;
text-align:justify;
text-justify:inter-ideograph;
mso-pagination:none;
font-size:12.0pt;
font-family:Century;
mso-fareast-font-family:"MS 明朝";
mso-bidi-font-family:"Times New Roman";
mso-font-kerning:1.0pt;}
/* Page Definitions */
@page
{mso-page-border-surround-header:no;
mso-page-border-surround-footer:no;}
@page Section1
{size:595.0pt 842.0pt;
margin:99.25pt 30.0mm 30.0mm 30.0mm;
mso-header-margin:42.55pt;
mso-footer-margin:49.6pt;
mso-paper-source:0;
layout-grid:20.0pt;}
div.Section1
{page:Section1;}
/* List Definitions */
@list l0
{mso-list-id:1923369039;
mso-list-type:hybrid;
mso-list-template-ids:-1502712150 1901493042 67698699 67698701 67698689 67698699 67698701 67698689 67698699 67698701;}
@list l0:level1
{mso-level-start-at:0;
mso-level-number-format:bullet;
mso-level-suffix:space;
mso-level-text:□;
mso-level-tab-stop:none;
mso-level-number-position:left;
margin-left:12.0pt;
text-indent:-12.0pt;
font-family:"MS 明朝";
mso-bidi-font-family:"Times New Roman";}
ol
{margin-bottom:0mm;}
ul
{margin-bottom:0mm;}
--> ―人生なんてね、石段をゆっくり登り続けるようなものなのよ。最後まで登ってみなきゃ何が待ってるか分からないし、見えてくる景色だって変わるに決まってるんだから。 どきりとした。彼女は思わず立ち止まって自分の周りを見回した。静寂だけが辺りを包んでいる。今は、波の音も聞こえなかった。 あれは、いつのことだったろう。息苦しささえ覚えながら、彼女は目まぐるしく考えを巡らせた。小言や説教は、しょっちゅうだった。だが確かに以前、一度だけそんなことを言われた記憶がある。 ―いつでしたっけ? ねえ、お義母(かあ)様。 『行きつ戻りつ』(乃南アサ著・新潮文庫)
旅が好きだ。 「たび」と聞くだけで、はずむ。 いわゆる旅の、多いほうではないのだけれど……。 そも、旅というものの定義はどうなっているのか。 広辞苑にあたってみると、「住む土地を離れて、一時ほかの土地に行くこと。旅行。古くは必ずしも遠い土地に行くことに限らず、住居を離れることをすべて『たび』と言った」とあった。 なるほど、「住む土地を離れて」か……、と得心する。 それでわたしたちは、休暇を利用して旅行、以前から行ってみたかった旅館に泊まる、というのこそを旅だと考える。そういうのも旅にはちがいないけれど、そういうのでない旅もある。 そういうのでないほうの旅をしていることに、ひとはときどき気づかずに、つまり、出たことも帰ったこともわからないままでいることがある。 「ああ、あれは旅だった」と、あとで気づいて、旅の日日を思い返したりする。「住む土地を離れて」ではなく、「常の自分を離れて」ということか。
『行きつ戻りつ』は、「乃南アサ」の旅のものがたり集である。 そこにはかぐわしい旅の風景がひろがっていて、それだけで、わたしなどは、じゅうぶん旅をさせてもらえるのだけれど、描かれているのは人生行路の、ある側面ともいえる。 秋田・男鹿(おが)。熊本・天草。北海道・斜里(しゃり)町。大阪・富田林(とんだばやし)。新潟・佐渡。山梨・上九一色(かみくいしき)村。岡山・備前。福島・三春。山口・柳井(やない)。福井・越前町。三重・熊野。高知・高知市。 12の旅先を著者は選んで、事情を抱えた妻たちを旅立たせている。「乃南アサ」が自ら12の旅をしている証拠に、まこと風景が真に迫っている。風景が真に迫るなどとは、作品に対してかぶせることばとしては並に過ぎるが、迫るのだから仕方ない。 登場人物が抱える事情が、旅先の風景のなかで風景に変わり、迫ってくるというわけだ。事情を抱えず生きているひとなど、この世にいはしない。「わたしは抱えていない」と云いきるひとがあったなら、「そこのところが、あなたの事情です」と伝えなければなるまい。そうして『行きつ戻りつ』の12のものがたりはたしかに、それぞれの胸に迫るのだ。 このものがたり集を読んで、サスペンス(あるいはミステリー)において文学世界を切り拓いてきた著者にめずらしい作品、と思った方もあるかもしれない。純文学やらエンターテイメント(?)やらという分類に対して懐疑的なわたしは、各方面の都合がこしらえている分類などは蹴飛ばして、「乃南アサ」の人物の観察の深さと、それを描く筆力について、くどくど語りたくなってしまう。 読み手の「場」と「こころのありよう」によって、受けとるものの、味わうものの異なり具合といったら、もう。
冒頭の引用は、「姑の写真」という最初のものがたり、姑と嫁の秋田県男鹿への旅のくだりだ。前に2度読んだとき、素通りしたものかもしれないけれど、このたびははっとして足を止めた。ひとは、いつでもひとと向きあうことができる、願いさえすれば、とおしえられたような気がして、救われたのである。
「旅」というと、旅支度です。「旅支度」というと、うちの者たちは、まず「布のふくろ/かばん」のひきだしから、ふくろもの、大風呂敷を出してきます。ふくろものは下着入れや、風呂に行くときのかばんになります。その他の衣類は大風呂敷(90×90cmの大きさに縫ってある)に包みます。 * 〈お知らせ〉つづいて、ひとつお知らせを。★第8回「さぬきの食卓会議」ゲスト・乃南アサさん「自分の取り扱い説明書を書くとしたら……」(案内人/山本ふみこ)2010年5月13日(木)開場:18:30/ 開演:19:00(21:30終了予定)料金:5000円(ワンプレートディナー+ワンドリンク付き)会場:高松丸亀町壱番街4階エアリーレストラン ルーチェお申しこみ:087-822-2203(ルーチェ)* 現在の〈さぬきの食卓会議〉シリーズは今回でひと区切り。またカタチを変え、「まち」と「ひと」をつなぐイベントとして再開する予定です。* 定員になり次第締め切らせていただきます。