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2008.08.10
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こちらは『戦国BASARA(2)』の世界にトリップ!の
ドリーム小説(名前変換なし)です。
●キャラのイメージを壊したくない。
●ドリーム小説は受け付けない。
そういう方は、読むのをご遠慮ください。
読まれた後の苦情はうけつけません。

※ストーリー上、伊達政宗の性格が酷いです。
 政宗ファンの方はご注意ください。
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【時の迷い人】~1~



「ああもう! つっかれた~!!!」

親友の優美(ゆうみ)の声に、菜香(なのか)、そして、その場にいた1年生部員5人全員が苦笑した。

この日は、菜香たちが所属する中学の弓道部が、他校に出向いての練習試合があった。

菜香たち1年生は、まだ選手としてではなく、2年、3年の先輩たちの荷物もち件、雑用係として全員参加が強制されていた。
さらに、先輩の弓や矢の準備、試合中の矢取りや声だし、的の取り替えなどで走り回り、くたくたになった試合の後、ミーティングと称して失敗を報告して、全員で反省会を行った。

…そして、その後、駅で解散となったのだが、1年生だけは荷物を部室まで持って帰るのが決まりであり、ようやく、それが終了したのが、今だったのだ。

菜香が腕時計で確認したところ、もうすぐ7時になるところだった。

「家には言ってあるけど、そろそろ帰らないと。」
「だね~。寄り道して帰るには、時間的にも体力的にもきついしね。」
「じゃ、また、明日!」

会話している菜香と優美に、別方向に帰る自転車通学の3人が声を掛け、バイバイと手を振った。

「明日~…。。。」
「しかたないよ! 今日、日曜日なんだもの。」

バイバイと手を振り返しながら、全身でいやだ~と訴える優美に、菜香は苦笑を止められなかった。

疲れたとは言っても、歩かないと永遠に帰れない。
しかも不運なことに、菜香と優美の家は、さっき、先輩たちと分かれた駅から学校への反対の方向にあった。

「まったくさ~! 駅、学校、家の順に帰れる人が片付けにくればいいのにね! 2年の中田先輩なんて、家、そこよ。」
若干声を弱めつつも、びしっと、校門から5分ほどの場所にある先輩の家の方向を指差しふてくされたように優美は文句を言った。

まあ、確かに思わないでもないが。。。

「ま、先輩も全員通った道なのよ。きっと。」

菜香の知ったかぶりの台詞に、優美は笑い、そして2人は駅までの道を一緒に歩いていった。

優美と駅の近くで別れた菜香は、残り徒歩10分ほどの道のりが、変に遠く感じた。

菜香の家の周辺は田舎で、田んぼと川に挟まれた道の街灯は心もとなく、道は薄暗く、慣れてるとはいえ、1人で歩くにはいつもどこか心細かった。

口をきゅっととじ、いつもの川の音や、虫の声、田んぼの向こうの通りを通る車の音などを聞くともなしに聞きながら、早歩きで菜香は家へと向かっていた。

…が。

「…え?」

ふっと、いきなり街灯が消えた。

菜香は足をとめ、街灯があるはずの場所を見上げた。
蛍光灯が切れかけて、点滅するのかと思ったのだが、しばらく見てても灯りが再びつく様子がない。

まさか、停電?

「…ちょっと~…なんで……。」

電灯に向かって文句を言おうとした菜香は、何かがおかしいことに気が付いた。

灯りが付いていないとはいえ、そこにあるはずの電灯が、その形すら、見えない。

ぱっと、川向こうにあるはずの民家を見た。

さらに、慌てて、田んぼの向こうを通っているはずの車のライトを捜した。

そして……。

恐る恐る足元に目を写した。


なにも、みえない。


川の向こうのさらに畑の向こうになるが、それでも民家が数件並んでおり、この時間にもなれば、大方の家が灯りをともしているはずだった。

田んぼの向こうのとおりは、確かに国道などのように、真夜中を除いてほぼ始終車が走っているような太い道ではなかったが、それでもこの時間にしばらく眺めて1台も車が通らないなんて程、車どおりが少ないような道ではない。

何より。。。

目の前のアスファルトの道が、見えないなんて…。

何年か前に家族といった初詣で、神社の回廊めぐりを体験したことがあったが、まるで、その回廊に知らずに迷い込んだかのようだった。

恐る恐る自分の手を顔の前にかざしてみる。


――見えない。


「そ……んな……。」


おかしい。

何かがおかしい。


心臓が大きくはねる。

ドクドクとうるさいほどに音が聞こえてきた。

川の流れる音と、虫の声だけは、かろうじて耳に届く。

菜香は、すぐ側にあるはずの、普段なら手が白くなるのがイヤで、触るのを躊躇してしまう川沿いのガードレールを無意識に手探りで探していた。

……が。。。

手を伸ばせば届く距離にいたはずの菜香の手に触れるものは何もない。
冷たい汗が背中を流れるのを感じながら、距離感を間違えたんだ。そうに違いない。と、心を奮い立たせ、足を一歩横へと踏み出す。

ドンっと足がガードレールにぶつかり、新品に近い濃紺のはかまに白い汚れがつくのを、菜香はどこかで望んでいた。

が……。

菜香のそんなささいな望みさへかなえられず、踏み出した足は、アスファルトの上にさえ下りなかった。

サクッと感じる柔らかい感触。
ザリッと土を踏みしめる音。

菜香の踏み出した、雪駄を履いた右足の下にあるのは、間違え様もなく、草と土の感触だった。

数年前、河川の工事が大体的に行われ、それまで土が剥き出しだった土手はコンクリートに固められており、まだ新しいそのコンクリート仕立ての土手からは、ヒビもなければましてや草が隙間から生え出していることもなかったはずだった。

かみ締めたはずの歯がガクガクと震える。
全身がぶるぶると震える。

それでも勇気を振り絞って、さらに一歩踏み出した菜香の手に、ザリッとした感触があった。

ハッと息を呑みながら、震える手でそれを確認するように触る。

ざらざらとした硬くて柔らかい感触。

右手で「それ」に触れながら、左手も「それ」に添えるようにして近づく。

両手で何度も何度もその感触を確かめ、そして、抱きつくように大きさを確かめる。
154センチと、高くはないが、中学一年ではそう低くもないはずの菜香の両手で抱え込んでも手が届かない。

それほどに大きな「木」の感触。

あるはずがない。

山の中や神社の境内ではないのだ。

こんな大きな木が、まして、この川沿いに、あるはずがない。


あるはずのものがなく、ないはずのものがある。


不安で、怖くて、涙があふれてくる。

「お、かーさん……。」

菜香の帰りを、夕食を作って待っててくれているはずの母。

「おとーさん!」

今日は日曜日だから、仕事もなく、おそらく家でのんびりとテレビを見ているだろう父。

「お兄ちゃん! お姉ちゃん!!」

少し年が離れているため、菜香をとっても可愛がってくれる大学生の兄と姉。

『うるさい!』と、近所の人がどなってきてもいい。
むしろ、怒鳴りつけに来て、家まで引きずっていって欲しい。

そう願いながら、声の限りに菜香は叫びつづけた。

だが……。

その声に応える者は、誰もいなかった。



[続く]



**********************************

始めてしまいました。
トリップドリーム(笑)

まだまだ、主要キャラは出てきませんが、お付き合いいただければ幸いです。






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最終更新日  2008.08.20 18:17:47
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