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2008.08.18
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こちらは『戦国BASARA(2)』の世界にトリップ!の
ドリーム小説(名前変換なし)です。
●キャラのイメージを壊したくない。
●ドリーム小説は受け付けない。
そういう方は、読むのをご遠慮ください。
読まれた後の苦情はうけつけません。

※ストーリー上、伊達政宗の性格が酷いです。
 政宗ファンの方はご注意ください。
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【時の迷い人】 ~3~



カタカタと小さな音が聞こえる。

まぶたの裏からでも、明るい光が感じられ、菜香は、ぼんやりと瞳を開けた。
どうやら、自分は、布団で寝ていたようだ。

では、昨日のアレは、夢だったのか?
そんなことを考えながら、布団に手をつき、体を起こそうとした。

そのとき。

「……起きたか。」

知らない男の声が聞こえて、菜香は飛び上がるほどに驚いた。

バッとそちらへ顔を向けると、扉をあけたところに、父と同じくらいか、それより上と思われる男が菜香を見ていた。

「誰!?」

なんで、私の部屋に、知らない男が……!? と、パニックに陥りかけた菜香だったが、違和感を感じて口を閉ざした。
そして、恐る恐る部屋の中に視線を向けた。

違う。

自分の部屋ではない。

それ以上に、現代建築の家にさえ、見えなかった。

土の壁だけであれば、近所にある古い家の外壁などで見たことがあったが、それが家の内装に使われているなど、見たことがなかった。
自分が寝ていた布団も、今まで気付かなかったが、さわり心地がゴワゴワしており、綿ではなく、何枚も布を重ねたような感じの布で、柔らかみが殆どない。
そして、その布団が敷かれている板間。
…フローリングには程遠く、木を滑らかに削っただけ板を何枚も並べた、粗末なものだった。

恐る恐る部屋に入ってきた男に、もう一度視線を向けてみると、今度は男の服装に違和感を感じた。
男は、洋服ではなく、明らかに着古したような、しかも長けの短い和服を着ていた。
オシャレや、仕事で着ているわけでは、菜香がみただけでも、明らかに、ない。

変質者が、うらぶれた小屋に菜香を連れて来たのか?
という考えが頭をよぎらなかったわけではない。

だが、記憶が途切れる前のあの不可思議な状況。
あの直後に、変質者にさらわれたから、こんな場所にいる。
というのは、何かがおかしい気がした。

しかも、……気のせいかもしれないが、男から感じられる視線は、優しく、気持ち悪いとか、怖いという感情は湧いてこなかった。

だから、余計にわけがわからなかった。



呆然と、男――カゴ吉と部屋を交互に見る少女が、状況がつかめていないのは明らかだった。

「オレは、カゴ吉という。」

だが、カゴ吉は、何を言えばいいか分からず、とりあえず、誰何された名を語ってみた。


男が名乗った名前に、古い、変な名前だと、菜香はそう思った。
失礼かもしれないが、そんな名前を付けたら、いじめの対象になりそうだと。
……男の世代はそうでもなかったのか?
いや、しかし、男とそう年の変わらないだろう菜香の父は、同級生にもいる、普通の名前だった。

「カゴ吉、さん?」
「そうだ。」

聞き間違いかと思ってとりあえず確認してみたところ、男は間違いなくコクリと首を縦に振り肯定した。

そして男は、菜香が自分に警戒心を持っているのが分かっているかのように、部屋の中に入ってこようとはせず、そのままその場に座り込み、そしてゆっくりと話し出した。

「朝、狩りに出かけたら、森の川辺でおまえを拾った。」

(森? ……狩り??)

男の言葉は、意味がわからないわけではなかったが、菜香にとっては不可解な単語が並んでいた。

菜香は森などにいた覚えはないし、家の近所で狩りなどをする人など聞いたことがない。

「……私、木の根元にいた?」
「ああ。」

記憶の最後に触れたものは、大きな木。
それから手を放さずに、家族を呼んでいたはずだった。
何度も何度も呼んで、誰も応えてくれなくて。
それでも、誰かに応えて欲しくて、でも、そこから動くのは怖くて。
最後は、疲れて頭が痛くなって、しゃがみこんだところまでは覚えている……。

……おそらく、そのまま寝てしまったのだろう。

そして、それをこのカゴ吉が見つけ、家までつれてきてくれた。
そう、なのだろう。

では――。

ここは?

「……ここは、カゴ吉さんのおうち?」
「ああ。」

カゴ吉は、菜香の質問に、またコクリとうなずく。
菜香は、また、心臓がどんどん早くなるのを感じていた。
聞きたくない。
けど、聞かないといけない。
ここが、「どこ」なのか。

「……………カゴ吉さんのおうちは、……どこにあるの?」
「……? ここがオレのうちだ。」

質問の意味がわからなかったカゴ吉は、不思議そうに首をかしげた。

「ち、ちがうの! あの……、住所……。」
「……じゅうしょ……?」

『住所』という言葉を知らないらしいカゴ吉に、菜香は愕然とした。
ふざけているわけではないらしい。
無表情にも見えるが、すくなくとも、菜香にはカゴ吉は真剣な表情に見えた。

「あの! どこの県ですか!?」
「……すまんが、言っている意味がわからん。」

僅かに眉をひそめながら、カゴ吉はそういった。

菜香の全身に、冷たい汗が流れる。
日本語が通じるんだし、なんか変だけど和風な家に着物なんだから、日本で間違いないはずなのに……。
そう思った瞬間、ふっと、父とよく見ている時代劇を思い出した。

……そういえば、似ている??

おそるおそる、菜香は、もう一度カゴ吉に問い掛けた。

「………どこの、くに……?」

その言葉に、カゴ吉は合点が行ったとばかりに、即答した。

「甲斐だ。」

菜香は、グワンと、頭を殴られたような、そんな感覚におそわれた。

「……甲斐のくに?」
「ああ。武田のな。……この森を抜けて、少し北に行くと伊達の奥州。まあ、ここは国境、だな。」

甲斐も奥州も、聞いたことがある。
小学校でも少しは歴史をする。
甲斐は、織田信長が恐れていたという、有名な戦国武将がいた国だ。
その名は、確か、『武田』。
それに奥州は、藤原氏が有名だったと思うが……『伊達』も聞いたことがある。

……どちらも、『現在』では普通には使わない地名、ましてや、説明に苗字が入るはずなんてない。


ガチガチと、寒さではなく、歯がかみ合わなくなってきた。

怖い。

怖い。

怖い。

怖い。

何が怖いのか、はっきりわからないけど、何かが怖かった。

ただ、何かが怖くて、たまらなくて、涙が溢れる。



国の名を問うた後、ぼろぼろと泣き出した少女に、カゴ吉は少しばかり驚いたものの、ゆっくりと立ち上がり、そしてそっと少女に近づくと、そっと頭をなぜてやった。

なぜかはわからないが、少女が何かにおびえているのが分かった。
顔から血の気が引いた、元は子供らしいふっくらしたかわいらしい顔が、痛々しく感じた。

少女は、カゴ吉の手を頭に感じた瞬間、すこしビクッとしたようだったが、振り払うことなく、されるがままだった。
だが、涙が止まる様子はない。

「……家は、遠いのか? 遠くても、送ってやる。だから、怖くない。泣くな。」

あんまり感情がこもらないと分かっている自分の声に、精一杯優しさを込めたつもりで、カゴ吉は慰めて言葉にした。

が、少女は、力なく首を振った。

「…………。」

弱々しい、小さな声は、とても聞き取りにくかったが、カゴ吉の耳は、その言葉を正確に捉えた。

『多分、帰れない。』

「……そうか。」

カゴ吉は、ただうなずいた。

理由を問う気には、不思議とならなかった。

「なら、ここにいればいい。」

うつむいたまま、声も出さずに泣きつづける少女に、なぜかカゴ吉は、そういっていた。

口から言葉がこぼれたような感覚だった。
証拠に、カゴ吉自身その言葉に少し驚いたが、訂正する気は起こらなかった。

この少女を守ってやりたいと思ってしまったからだと、心のどこかで納得していた。

少女は寝ぼけていた、カゴ吉を「父」と呼んだあの瞬間に、カゴ吉はすでに少女を自分の息子と重ねてしまっていた。

守ってやれなかった、大切な息子。

少女は、姿形、性別さえも、息子とは違う。

それでも――。

今度こそ、守りたいと、カゴ吉は、そう、思った。


[続く]


***********************************

菜香は歴史好きの時代劇好きということで(^^;)

私は好きでした。

歴史小説とか、伝記とか、かなり読んでました。
小学六年生で日本の歴史も簡単に習いましたしね。








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最終更新日  2008.08.20 18:17:09
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