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2008.08.20
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こちらは『戦国BASARA(2)』の世界にトリップ!の
ドリーム小説(名前変換なし)です。
●キャラのイメージを壊したくない。
●ドリーム小説は受け付けない。
そういう方は、読むのをご遠慮ください。
読まれた後の苦情はうけつけません。

※ストーリー上、伊達政宗の性格が酷いです。
 政宗ファンの方はご注意ください。
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【時の迷い人】 ~4~



少女は、「菜香」と名乗った。

最初の日こそは、呆然と泣き明かした菜香だったが、次の日から、積極的にカゴ吉の手伝いをすると張り切って動き出した。

だが、菜香の手を見て感じていたとおり、殆ど何もしたことの無い、物知らずな子供だと言うことを気付いていた。
左手には、多少、弓を使うものにあるしこりが出来かけていたが、それだけだ。

「弓を使うのか」と問い掛けたら、習い始めたばかりだったと、菜香はそう応えた。
だが、実際やらせてみたら、ゆっくりとした、決め事のような動作で弓を引く少女は、狩りには適さないと思った。

まあ、ましてや少女だ。
カゴ吉と同じ猟師にするのは、かわいそうだと思った。

だから、カゴ吉は、近くにある茶店の老夫婦に自分が狩りに出る昼間、菜香を預け、茶菓子の作り方や、料理を教えてやって欲しいと頼んだ。
菜香は喜んで、老夫婦に自ら願い出、子供がいないこの老夫婦も、よろこんで菜香を受け入れてくれた。


一日の狩りが終ったカゴ吉は、夕暮れ時に、菜香を迎えに茶店まで出向く。
すると、菜香は満面の笑みでカゴ吉の前に飛び出してくる。
そして、その帰り道から、夜寝入るまでの間、その日にあったことをカゴ吉に嬉しそうに話すのだ。

そんな些細なことが、カゴ吉にとって、至福の時となるまで、時間はかからなかった。

時たま、やはりまだ子供の菜香は、家族を思って泣くことがあったが、そう言うときは、カゴ吉が優しく頭をなぜてやる。
そんなことが何回かあると、菜香は泣き笑いのような顔で、カゴ吉に甘えてくるようになった。

そんな菜香を、カゴ吉はまた、いとしく思った。


そして、そんな2人を、老夫婦は暖かい目で見守っていた。

「カゴ吉さんは、優しいだろう?」

おばあさんが、菜香に、そう言う。
菜香は、考えることなく力強くうなづく。

「お父さん、みたい。」

カゴ吉を家族のように思っていた老夫婦は、その菜香の言葉が何よりも嬉しかった。

 * * *

その日、菜香は、おじいさんに頼まれて、お得意様の家まで茶菓子を届けに行っていた。
お得意様は、裕福な商家でそこの娘さんが、菜香にお駄賃の代わりだと言って、かんざしを一本譲ってくれた。
そんなものをもったこともなく、使い方も良く分かってはいなかったが、その気持ちが嬉しくて、菜香は浮かれた気分で茶店へと戻ってきた。

そこに、カゴ吉さんがいた。

菜香を迎えにくるには、早い時間だった。
おそらく、大きい獲物が獲れたか、もしくは、調子が悪いかで、早い目に切り上げたのだろう。

菜香はちょっといたずら心を出して、驚かしてみようとそっと足音を忍ばせた。
そして、カゴ吉さんの視覚から、そっと近づいて、声を掛けようとしたとき――。

「また、戦か。」

聞いたこともないような、カゴ吉さんの暗い、怒りを込めた低い声に、びくリと動きを止めた。
カゴ吉さんの隣には、おじいさんが座っていた。

「……ああ。そうらしい。」
疲れたように、おじいさんはため息をついた。
「武田様は、良い方じゃが、戦好きなのがいただけん。また、越後の上杉と戦じゃと。」

「……本当に、民のことを考えていたら、戦などせんはずだ。」
カゴ吉さんの声は、やはり、いつもよりずっと低く、怖かった。

「そうさのう。……わし等にできることは、このあたりまで戦の余波が流れてこんことを祈るだけじゃ。……あの時のように、な。」
「――今度は、守る。」
「ああ。」
「菜香を、あの子のように死なせはしない!!」
強い、強い決心を込めた叫びだった。

聞いた事の無いような、そんなカゴ吉さんの声に驚いて、菜香は茶屋の裏側へ逃げ込んだ。

心臓がバクバクと震えている。

たまに、カゴ吉さんが、菜香を通して誰かを見ているような、そんな気がすることがあった。

それが、今、わかった。

(カゴ吉さんは、戦で誰か大切な人――多分、子供さんをなくしたんだ。)

だから、戦を憎んでる。

そして同時に、それほど大切にしていた子供と重ねるほど、ただ拾っただけの自分を大切に思ってくれていたのだ。

(どうしよう、嬉しい。)

菜香に対して、カゴ吉さんが優しいのは知っていた。
だから、その優しさに甘えていた。

だが、それは、帰るところがない菜香に対して、同情しているからだと思っていた。
それもいいと思っていたのだが――。

菜香を、自分の子供と同じくらい、好いていてくれているのだ。

目頭が熱くなり、涙がこぼれた。

この時代にきて、菜香は、初めて、嬉しさからの涙をこぼした。

(お父さんだ。カゴ吉さんは、こっちの時代での私のお父さんなんだ。)

そう思っていいんだと、今、改めて思った。

知らない世界に放り出されて、大好きな家族にあえなくなって、寂しくて、悲しかった。

優しくしてもらっても、どこかで不安が消えなかった。

でも、その不安が今、急速にしぼんで消えていった。

家族に会えない寂しさまでが消えたわけじゃなかったけど、それでも――。

こちらの世界で、家族と思える大切な人が出来た。

それが、嬉しかった。


男と少女の出会い。

――男は失った子供ではないが、新たに、大切に思うことのできる子供を手に入れた。

――少女は、大切な家族と二度と会えないかも知れない世界で、少女を本当の子供のように愛してくれる存在を得た。

とても、幸福なことだった。



[続く]


*******************************


…ちょっと、無理やりっぽい?
表現の仕方が難しくて……。

言いたいことが分かってもらえると嬉しいのですが…(>_<)





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最終更新日  2008.08.20 18:10:07
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