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2008.08.22
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こちらは『戦国BASARA(2)』の世界にトリップ!の
ドリーム小説(名前変換なし)です。
●キャラのイメージを壊したくない。
●ドリーム小説は受け付けない。
そういう方は、読むのをご遠慮ください。
読まれた後の苦情はうけつけません。

※ストーリー上、伊達政宗の性格が酷いです。
 政宗ファンの方はご注意ください。
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※死にネタ注意
※暴力表現あり





【時の迷い人】 ~6~





菜香は、いつも自分が山菜をとりにきている辺りにいた。
この辺は、色々な種類の山菜が自生しており、菜香のお気に入りの場所だった。

山菜を入れるようの籠を抱え、ちょっと鼻歌交じりに草を分けて山菜を探していた菜香だったが、聞きなれない音を耳にし、ハッと顔を上げた。

それほど遠くない場所で、「パンッ」と、何かが破裂するような音が鳴った。

「……なに?」

ざわざわと、胸が騒ぐ。
鳥たちが、われ先に、飛び立っていくのが見える。

そして、ザザッと、草をかき分ける音がしたと思ったら、鹿が菜香のすぐ近くを走り去っていった。

その視界に捉えた、「赤」。

菜香の近くを逃げていった鹿は、怪我をしていた。

一瞬、カゴ吉が狙った獲物に逃げられたのか?と思ったが、その場合、矢傷でなければおかしい。

だが、鹿の傷は、それほどしっかりと見たわけではないが、矢傷とは何かが違う気がした。

心臓が、うるさくはねる。

(ここにいてはいけない。)

何かが菜香に訴えかける。

菜香は慌てて籠を抱えなおすと、鹿が逃げてきた方向を避けながら、村へ戻るために足を動かした。

だが――。

「へぇ……。獲物を追いかけてきてみれば、女がいたぜ。」

いやな響きの声だった。
聞いたこともない声だった。

後ろを振り返る余裕もなく、菜香は駆け出した。

「へえ、追いかけっこか!?」
「せいぜい、逃げてみな!」

複数の男の声がする。
菜香を追いかける足音がする。

いくら、森になれているとはいえ、所詮女の足だ。

必死に逃げたにも関わらず、菜香は男たちにつかまった。

「……あ……、あ……。」

無理やり腕をねじられて、あごをつかまれた。

目の前には、醜く笑う男の顔。

男は4人いて、ばらばらではあるが全員が武装していた。

(のぶせり――!!)

『やつらは、容赦がない。女と見れば襲い、子供からでも金品を奪おうとする。――見つかる前に逃げろ。』

カゴ吉の声が聞こえる。
共に暮らした数年の間に、何度聞かされたかわからない。


――つかまった!

つかまってしまった!!


ガクガクと、体が震える。

この男たちが、自分をどういう目で見ているのか、カゴ吉の言葉が無かったとしても、気付かずにはいられなかっただろう。

「――っ!! は、離して――!!」

恐怖をこらえて、出せる限りの声で叫ぶ。

おびえる菜香に、男たちは、心底楽しそうだというような顔で笑う。

「――へえ、こんな山ん中にはもったいないくらいの、別嬪じゃねえか。」

ニヤリと笑う男の黄色い歯が汚くて、息がくさくて、菜香は顔をそむけようとしたが、あごを強くつかまれていて、顔を動かせない。

泣きそうになりながらも、気丈に男たちを睨みつける菜香に、また、男たちは気持ちの悪い笑みを浮かべる。

「気の強ええ女は、好きだぜ。――泣き喚くまで、いたぶるのが楽しいからな。」

下卑た顔で吐き気がするようなことを言う。

無理だとわかっていても、菜香は、諦めたくなかった。
必死で男たちの拘束から逃れようと暴れる。

その瞬間、パンっと、頬に痛みが走った。

痛みに一瞬動きをとめた菜香を、男たちが土の上へと押し倒す。

腐葉土が積み重なった、湿り気のある柔らかい、菜香には馴染みのある土だが、今は、それが顔の横にあるのが、押さえつけられた腕が少し埋まるのが、尋常でない状況を菜香に知らしめるようで、怖かった。

がむしゃらに手足をばたつかせようとする菜香を、男たちは2度、3度と殴りつけてくる。
痛くて、怖くて、涙が流れる。

それでもおとなしくしようとしない菜香に、今度は男が腹部辺りをなぐりつけてきた。

「っ! ……かはっ!!」

一瞬、菜香の体が反射的に跳ね上がり、目の前が真っ暗になる。

「いいかげん、無駄な抵抗はやめとけ。」
「そうそう。したら、いい目、見させてやるからよ~。」

男たちの声が、不快で怖くて、仕方が無かった。

頬を何度もたたかれて、視界がくらくらした上に、おなかを殴られて目の前が真っ暗になり、呆然とどこを見るとも無しに涙を流している菜香に、弱いものをいたぶるに高揚感を感じているらしい男たちは、本当に楽しそうにわらった。

――それがまた、怖くて仕方がなかった。

ようやく菜香が抵抗を諦めたと見た男たちは、菜香の着物を遠慮なく暴いていく。

襟を無理やり広げ、菜香の胸元をさらす。

「――やあっ!!」

外気にさらされた胸元を隠そうとするが、手を押さえつけられていては、何もできない。
男たちは続けて、着物のすそを開き、手を菜香の足に触れようとした――。

その瞬間、ザシュッ!と――重い、何かを振り下ろした音が聞こえた。

そして、何か生暖かい雫のようなものが、菜香の顔に、そして胸元に飛び散った。

――一瞬遅れてそれが赤い色をしていて、いつかどこかで嗅いだことのある匂いをしていることを理解する。

目の前の男は力なく菜香の隣に崩れ落ちた。
――その向こう側に、全身から怒りの感情が吹き出ているような、それでいて、いつもは無口でも岩のようにどっしり重みがあり、頼りがいがある優しさを感じられるカゴ吉さんが、一切の感情を捨て去ったような冷たい、氷のような目をして、鉈を握り締めた格好で立っていた。

何が起こったのか分からない。

――いや、起こったことはおおよそわかるのだが、頭が理解することを拒否していた。



 * * *



乱れた着物のまま着物を直そうとも、顔に掛かった血をぬぐおうともせず、呆然と自分を見上げてくる菜香に、心の中で苦い笑みが浮かぶ。

おそらく、怖いのだろう、カゴ吉が。

……理解しているつもりだ。

自分が、今、どういう顔をしているのか――。

だが……。

(菜香が無事であればそれでいい。)

嫌われようと、怖がられようと、菜香が元気で生きていてくれれば、カゴ吉には、それ以外はどうでもよいことだった。

そして、残った3人の男たちに向き直る。

仲間の1人の頭を、不意打ちに鉈で叩き割られたのだと理解した男たちは、憤怒の形相でカゴ吉を睨みつけてきた。

「てめえ――! 覚悟は出来てんだろうな!?」

言いながら、腰に下げていた剣を抜き、カゴ吉に飛び掛ってくる。

今はのぶせりとは言え、一応戦の訓練をしていたらしい男たちと、ただの猟師のカゴ吉では、どちらに分があるかは決まりきっていた……はずだった。

事実、次の男が倒れたときには、カゴ吉もまた血まみれの状態だった。

息は荒く、傷からは鮮血が流れ落ちている。

それでも、カゴ吉は止まらなかった。

仲間が倒れるのに気を取られたらしい男のスキを見逃さず、3人目の男をも地に叩きつけた。

残りは1人――。

が――。

4人目の男は、3人目の男が倒れたのとほぼ同時に、カゴ吉の腹部を持っていた銃で打ち抜いていた。

「がはっ!!」

カゴ吉の口から、大量の血が吐き出される。

「――!!!!!」

目の前がかすむ。

それでもカゴ吉は、その4人目の男を地べたに叩きつけるまで、止まることはなかった。

最後の男が倒れた後、カゴ吉は、菜香の方を振り向いた……ようだった。

が、それは適わず、ドシンと、重い音を立て、カゴ吉はその場に崩れ落ちた。

それまで、ただ呆然と、目を開いて目の前の出来事を見ているだけだった菜香が、ようやく我に返り、無意識にカゴ吉の下へと駆け寄った。

――先ほど、自分は確かにカゴ吉に対して少なからず恐怖を感じたはずだった。

だが――。

倒れたカゴ吉に駆け寄るのに、何の躊躇もすることはなかった。

「――カゴ吉さん!! カゴ吉さん!!!!」

必死に呼びかける菜香の声に、カゴ吉は、ふっと閉じていた目を開け、菜香を見てくれた。

「……っ! カゴ吉……さん!!」

涙が溢れる。
どうしたらいいのか分からない。

血が、止まらない。

必死で傷口を抑えるけど、そんなことは何の益にもなっていないことは、菜香にもよくわかっていた。



いやだ、いやだ、いやだ、いやだ――。
止まって、お願い! 血、止まってよ――!!!!!



ぼろぼろと涙が溢れて止まらない。
泣きたくないのに。

「――す……まんな。」

かすれるような、力の無いカゴ吉の声が聞こえて、傷口を見ていた菜香は視線をカゴ吉の顔にうつす。
カゴ吉は、「なぜ?」と問い掛けたくなるくらい、穏やかに笑っていた。

「……もう……頭を、撫ぜて……やれん。」

すでに、手を動かす気力さえないのだろう。
菜香はさらに涙が溢れた。
ぶんぶんと頭を振って、そんなのいい!と菜香は叫ぶ。

「……っ、死なないで――。」

無理な願いだとわかっているのに、言わずにいられなかった。

「……すまん――。」

謝ったかと思うと、カゴ吉は息を吐いて、ゆっくりと目を閉じた。

「目、閉じないで!!」

菜香言葉に、カゴ吉は笑ったようだった。

「――おまえが……無事で、よかった……。」

そう言った後、カゴ吉の全身から力が抜けるのが分かった。

「カゴ吉さん! カゴ吉――、お父さん!!!!」

目を開いて欲しくて。
いなくなってしまうなんて、信じたくなくて。

――殆ど無意識にこぼれた言葉――。

『お父さん』

いつか、カゴ吉さんのことをそう呼びたくて、でも、ちょっとした気恥ずかしさがそれを邪魔して……。

中々呼べなかったのに、するりと今、口から飛び出した。

今、呼ばなかったら、永遠にその機会を失ってしまう。

そう、無意識のうちに頭が判断したようだった。

その『お父さん』という言葉に、元々穏やかだったカゴ吉の顔が、嬉しそうに笑みを作るのがわかった。


――聞こえた。

――届いた。


「――お父さん! お父さん、お父さん!!!」



菜香は、ただ、呼びつづけた。

――おそらく、もうすでに、カゴ吉の耳には届いていないと、どこかで理解しながらも。

……それでも、「なんだ?」と、カゴ吉の、あのとても低い、けれどもとても安心できる優しい声で、菜香に語りかけてくれるのを、ただ、ただ、祈りながら……。



≪続く≫


**************************************


……すいません。
暗いです。
ハイ。
とてつもなく、暗いです。

また、バサラキャラ出てないし(^^;)






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最終更新日  2008.08.25 16:17:45
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