カテゴリ:妄想天国
チャイムを押すこと10数回。
諦めずに押し続けていると、ようやくドアの向こうから物音がし出した。 ガチャっと開いたドアから出てきたのは、寝起きの揚羽だった。やっぱり具合が悪くて寝ていたらしい。まだ少し頬が赤くぼんやりしている。 そんな頭の働かない状況だったから、うかうかと天敵に家のドアを開いてしまったのだろう。 しかし、そんな事実を指摘するよりも、一瑠は別のものに目を奪われていた。 なんか文句あんのか? とケンカを売るような不機嫌な揚羽の視線をものともせず、一瑠はじーっとそれを見つめていた。 「青虫…それ……」 一瑠が指差したのは、揚羽の頭の上。 その指を追って揚羽が振り返ると、それがゆらりと揺れた。 思わず吹き出しそうになった一瑠は、口元を押さえて堪える。腹筋がビクビクと震えるほど笑いたいのを我慢していると、振り返った揚羽が睨みつけてきた。 凶悪な目つきなのに、その頭の上に紐で縛られ立ち上がっている兎の耳。 再び笑いの発作に襲われそうになった一瑠は、また口を手で押さえる。その人を馬鹿にしたような態度に、揚羽がとうとう切れた。 一瑠の身体を押しやり、開けていた玄関を閉めようとノブに手を伸ばす。 「あー、まってまって!」 ここで締め出されたら、きっと二度と開けてもらえない。 慌ててドアの隙間に身体を滑り込ませたが、揚羽は容赦なくドアを閉めようと力を込めていた。 当然、挟まれた一瑠はたまったもんじゃない。 「いたたたたたた…」 微熱で赤かった揚羽の頬が、怒りと力みで真っ赤になっている。その上で、ふるふると震える耳。 目の前にそんな楽しいものがあったら、つい遊びたくなるだろ? 耳を縛っていた紐の端に手をかけ引っ張ると、わずかな抵抗のあとに簡単に解けた。 ぱさっという音とともに、揚羽の顔の横に耳が落ちる。 どうしてこの場にビデオカメラがないのかと一瑠が悔しく思うほど、そのときの揚羽の表情の変化は見事だった。 耳が落ちると怒りの表情は呆然と変わり、揺れた耳が視界に入ると驚愕に目を丸くさせた。そしてぱっと身をひるがえすと、脱兎のごとく勢いで部屋の中に引っ込んでしまった。 その慌てぶりがあまりにおかしくて、一瑠はぶはっと耐え切れず噴き出してしまった。玄関先で荷物も放り出して、一瑠は声を上げて笑い出した。 腹筋が痛くなり、ようやく笑いの発作も治まると、一瑠は荷物を拾い上げて部屋の中に入った。 耳を結んでいた紐をくるりと手に巻きつけて、楽しげに言う。 「巣穴に戻っちゃったな」 手なずけようか、引きずり出そうか。 ※ ※ ※ 遅々として進まない展開ですが、ようやく一瑠がウサ耳青虫を見つけました。 もぅ、可愛くって仕方ないです。 凶悪な目でうさ耳……。惚れます。 お話を書くとき、基本脳内で漫画が展開されます。 別にコマ割とかされてるわけじゃないですが、振り返った青虫の目が光っていたり、ドアに挟まれて痛いとわめく一瑠だったり。 場面場面が思い浮かび、それを文章にしています。 しかし、正確に文章として表現できず… あぁ、私に画力があったら!! と思ったことは一度や二度ではありません。 他の人はどんな感じでお話書いてるんだろ…。 先日、例のそば屋に母と二人で行ってきました! 狭いですがなかなかカンジのイイお店で、また行きたいな~と思いました。 日本酒も置いてるので、飲みたい……けど車なんですよね お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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