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おるはの缶詰工場

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2009年10月22日
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カテゴリ:カテゴリ未分類
楽風呂シスターズで書かせてもらったムトベ電機のSSです。
今度のハロウィンコピ本にちょっぴりつながるお話です♪

本編「1文字足りない」
・芝東眞…明るく元気な家電担当者。京介とは義兄弟。
     ずーっと前から京介を狙い、弟とう立場を利用して甘え倒して独占してきた。
・瀬良京介…無表情で世話好きな家電担当者。天然でニブイ。
      東眞の世話をすることを生きがいとしている。
      (楽風呂参加者さんから、『ムトベ1えろい』という称号をいただきました)
・蘭…姉御的存在の携帯担当者。京介とは同僚であり友人であり、よき相談相手。


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「俺ってやっぱり鈍いのか?」

 暇そうにしている友人の蘭を捕まえて、京介はこっそり聞いてみた。

「鈍いわね」

 大きく頷いてはっきり言い切らてしまい、京介は冷蔵庫にぐったりとへばりついた。肯定されるとわかっていたが、改めて言われるとショックも大きい。

「鋭くなるにはどうしたらいいんだろう…」

「無理よ。鈍さも含めて『瀬良京介』なんだから」

 けなされているのか、慰められているのか微妙なところだ。

「まさか、さっきの気にしてるの?」

 冷蔵庫の陰から、テレビ売り場を覗く。にこやかに接客する東眞の姿を見て、小さくため息をついた。

「………東眞の機嫌、ちょっと悪くなかった?」

「そりゃ機嫌も悪くなるわね」

 夏の縁日が好評だったせいか、店長は今度の10月31日にハロウィンのイベントをしようと言いだした。しかし、現実主義のマネージャーから「その予算は一体どこから来るんです?」と突っ込まれ、店員で作ったクッキーを配ることになった。

 そのクッキーを作る係を蘭と押し付けあっているところに、東眞が通りかかり―――。

『芝くんは、瀬良くんが作ったクッキー食べてみたいわよね?』

『はいもちろん』

 狡猾の蘭の問いに、何も知らず満面の笑みで答える東眞。

 その東眞の一言で、京介は敗北したのだった。

「芝くん、その場ですぐクッキーもらえるんだと思っていたみたいじゃない。私はそんなつもりなかったんだけど、結果的には騙したような形になっちゃったし」

「わざとだったくせに」

 京介がボソリと呟くと、蘭が「当然でしょ」とばかりに嫣然と微笑んだ。

「蘭の方がお菓子作りは上手いだろ。俺はお菓子なんて年一回しか作らないのに…」

「年一回でも作っていれば十分よ。『美味しい』って言ってくれるんでしょう?」

「感想を聞いたことない」

 そう京介が否定すると、蘭は意外そうな顔をした。

「そうなの? 感想なんて求めなくても、芝くんなら絶賛しそうなのに。まぁ、惚れた欲目で正しい評価かどうか微妙なところではあるけどね」

 蘭の言葉はまるで、「京介が作ったお菓子はマズイ」と言っているようにも聞こえる。失礼な物言いに、さすがの京介もむっとする。

 東眞が感想を言ってくれないのは、別にマズ過ぎてお世辞にも美味しいと言えないからではない。

「―――だって、俺からだって言ったことない」

 京介が正直にそう告白すると、勘の鋭い蘭にはわかってしまったようだ。呆れた、とばかりの視線が京介の背中にビシビシと突き刺さる。

「『年に一回』『名前も言わず』?」

 低い声で蘭に確認されて、頬が熱くなってきた。懐いていた冷蔵庫にそこを押しあて冷やしていると、大きなため息が聞こえた。

「バレンタインにそんなことしてたのね」

 さりげなく避けていたイベント名をはっきりと言われて、京介はますます赤くなった。冷蔵庫にへばりついて身体を小さくしながら、だって仕方無いだろう、と心の内で反論する。

 女性というだけで堂々とチョコレートを渡せるなんてずるい。悔しくて羨ましくて、どうしようもなく―――つい名前も書かずに手作りのお菓子をロッカーに押し込んでしまった。

 人目を気にしてこそこそと東眞のロッカーを開けた時のことを思い出すと、京介は今でも恥ずかしくて死にそうになる。

「じゃぁ、それも機嫌が悪い理由の一つだったのかもね」

 納得したようにしみじみと言われ、『それ』の意味が理解できなかった京介は蘭を振り返った。

「『俺以外の奴が京介さんのお菓子を食べるなんて許せない』ってことじゃない?」

「でも、俺がハロウィンのクッキー係を引き受けたって教える前から機嫌悪かったけど。理由もなく肩叩かれたし」

 何故かパンパンと肩をはたかれた。もちろん痛くはなかったが、あのときから微妙に拗ねた気配を東眞から感じていた。

「―――それは男の醜い嫉妬よ」

「嫉妬?」

「そう、この美貌の私に嫉妬したのよ」

「蘭より東眞の方が美しい」

 美しいというかカッコイイというか、とにかく蘭より東眞の方が上だと京介はキッパリと言い切った。

「……ホントに鈍いわね」

 心の底からという感じで、しみじみ言われた『鈍い』の一言に、京介はいじけた様に呟いた。

「鈍いよな、俺。この前もさ、東眞からプレゼント貰ったんだけど、なんだか微妙な顔されちゃったし」

「あげた本人が微妙な顔? 京介が気に入らなかったんじゃなくて?」

「違うよ。プレゼントなんて誕生日以外に貰ったの初めてで、嬉しかったからすぐ使ったんだ。そしたら、微妙な顔してた」

「何貰ったのよ」

「エプロン―――黒くてシンプルなやつ」

 作った料理が気に入らなかったのかな? と首を傾げる京介に、蘭も困惑顔で口を開いた。

「エプロン? エプロンしてあげて微妙な顔って―――」

 そこまで言った蘭が、ピタリと口を閉じる。

「何? 理由がわかったのか?」

「―――この件に関してはノーコメントにさせてもらうわ」

「え、教えてよ?!」

「嫌よ。なにが悲しくて私がそんな使用目的を教えなきゃいけないのよっ」

 突然怒り出した蘭は、「自分の勘の良さが嫌になるっ」と吐き捨てて、さっさとその場を立ち去ろうとする。足音高く向かう先が担当の携帯コーナーではないのに気づいて、京介が呼びとめた。

「どこへ…」

「休憩室! 苦いコーヒーでも飲まなきゃやってられない甘さだわ!」

 蘭の剣幕に押されて、今が休憩中ではないと言い出すこともできず、「いってらっしゃい」とその雄々しい姿を見送った。

 数歩進んだところで蘭が立ち止り、振り向いて一言。

「甘やかすのもほどほどに」

 厳かに告げられて、京介は姿勢を正して頷いた。



  END




※ ※ ※

10月25日(日) J.GARDEN27 A2-3ホール J41b
で販売されるハロウィンイベント本につながるお話です。
興味を持って買っていただけたら幸いですw



明日から伊豆へ旅行です!
今回は友達の運転で連れて行ってもらうのですが、あまり仲良くない人が2人…。
いや、嫌いじゃないですが、人見知りな私は気を使って疲れそうな気がします。
諸事情で長距離のドライブと温泉がダメなので、行きたくない気持ちMAXです!

高いお宿を予約したからもったいなくてキャンセルできないし!!


伊豆旅行を糧に、女王様と温泉旅行の第二弾でも書こう…。





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最終更新日  2009年10月22日 09時59分37秒
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