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楽風呂シスターズで書かせてもらったムトベ電機のSSです。
今度のハロウィンコピ本にちょっぴりつながるお話です♪ 本編「1文字足りない」 ・芝東眞…明るく元気な家電担当者。京介とは義兄弟。 ずーっと前から京介を狙い、弟とう立場を利用して甘え倒して独占してきた。 ・瀬良京介…無表情で世話好きな家電担当者。天然でニブイ。 東眞の世話をすることを生きがいとしている。 (楽風呂参加者さんから、『ムトベ1えろい』という称号をいただきました) ・蘭…姉御的存在の携帯担当者。京介とは同僚であり友人であり、よき相談相手。 「俺ってやっぱり鈍いのか?」 暇そうにしている友人の蘭を捕まえて、京介はこっそり聞いてみた。 「鈍いわね」 大きく頷いてはっきり言い切らてしまい、京介は冷蔵庫にぐったりとへばりついた。肯定されるとわかっていたが、改めて言われるとショックも大きい。 「鋭くなるにはどうしたらいいんだろう…」 「無理よ。鈍さも含めて『瀬良京介』なんだから」 けなされているのか、慰められているのか微妙なところだ。 「まさか、さっきの気にしてるの?」 冷蔵庫の陰から、テレビ売り場を覗く。にこやかに接客する東眞の姿を見て、小さくため息をついた。 「………東眞の機嫌、ちょっと悪くなかった?」 「そりゃ機嫌も悪くなるわね」 夏の縁日が好評だったせいか、店長は今度の10月31日にハロウィンのイベントをしようと言いだした。しかし、現実主義のマネージャーから「その予算は一体どこから来るんです?」と突っ込まれ、店員で作ったクッキーを配ることになった。 そのクッキーを作る係を蘭と押し付けあっているところに、東眞が通りかかり―――。 『芝くんは、瀬良くんが作ったクッキー食べてみたいわよね?』 『はいもちろん』 狡猾の蘭の問いに、何も知らず満面の笑みで答える東眞。 その東眞の一言で、京介は敗北したのだった。 「芝くん、その場ですぐクッキーもらえるんだと思っていたみたいじゃない。私はそんなつもりなかったんだけど、結果的には騙したような形になっちゃったし」 「わざとだったくせに」 京介がボソリと呟くと、蘭が「当然でしょ」とばかりに嫣然と微笑んだ。 「蘭の方がお菓子作りは上手いだろ。俺はお菓子なんて年一回しか作らないのに…」 「年一回でも作っていれば十分よ。『美味しい』って言ってくれるんでしょう?」 「感想を聞いたことない」 そう京介が否定すると、蘭は意外そうな顔をした。 「そうなの? 感想なんて求めなくても、芝くんなら絶賛しそうなのに。まぁ、惚れた欲目で正しい評価かどうか微妙なところではあるけどね」 蘭の言葉はまるで、「京介が作ったお菓子はマズイ」と言っているようにも聞こえる。失礼な物言いに、さすがの京介もむっとする。 東眞が感想を言ってくれないのは、別にマズ過ぎてお世辞にも美味しいと言えないからではない。 「―――だって、俺からだって言ったことない」 京介が正直にそう告白すると、勘の鋭い蘭にはわかってしまったようだ。呆れた、とばかりの視線が京介の背中にビシビシと突き刺さる。 「『年に一回』『名前も言わず』?」 低い声で蘭に確認されて、頬が熱くなってきた。懐いていた冷蔵庫にそこを押しあて冷やしていると、大きなため息が聞こえた。 「バレンタインにそんなことしてたのね」 さりげなく避けていたイベント名をはっきりと言われて、京介はますます赤くなった。冷蔵庫にへばりついて身体を小さくしながら、だって仕方無いだろう、と心の内で反論する。 女性というだけで堂々とチョコレートを渡せるなんてずるい。悔しくて羨ましくて、どうしようもなく―――つい名前も書かずに手作りのお菓子をロッカーに押し込んでしまった。 人目を気にしてこそこそと東眞のロッカーを開けた時のことを思い出すと、京介は今でも恥ずかしくて死にそうになる。 「じゃぁ、それも機嫌が悪い理由の一つだったのかもね」 納得したようにしみじみと言われ、『それ』の意味が理解できなかった京介は蘭を振り返った。 「『俺以外の奴が京介さんのお菓子を食べるなんて許せない』ってことじゃない?」 「でも、俺がハロウィンのクッキー係を引き受けたって教える前から機嫌悪かったけど。理由もなく肩叩かれたし」 何故かパンパンと肩をはたかれた。もちろん痛くはなかったが、あのときから微妙に拗ねた気配を東眞から感じていた。 「―――それは男の醜い嫉妬よ」 「嫉妬?」 「そう、この美貌の私に嫉妬したのよ」 「蘭より東眞の方が美しい」 美しいというかカッコイイというか、とにかく蘭より東眞の方が上だと京介はキッパリと言い切った。 「……ホントに鈍いわね」 心の底からという感じで、しみじみ言われた『鈍い』の一言に、京介はいじけた様に呟いた。 「鈍いよな、俺。この前もさ、東眞からプレゼント貰ったんだけど、なんだか微妙な顔されちゃったし」 「あげた本人が微妙な顔? 京介が気に入らなかったんじゃなくて?」 「違うよ。プレゼントなんて誕生日以外に貰ったの初めてで、嬉しかったからすぐ使ったんだ。そしたら、微妙な顔してた」 「何貰ったのよ」 「エプロン―――黒くてシンプルなやつ」 作った料理が気に入らなかったのかな? と首を傾げる京介に、蘭も困惑顔で口を開いた。 「エプロン? エプロンしてあげて微妙な顔って―――」 そこまで言った蘭が、ピタリと口を閉じる。 「何? 理由がわかったのか?」 「―――この件に関してはノーコメントにさせてもらうわ」 「え、教えてよ?!」 「嫌よ。なにが悲しくて私がそんな使用目的を教えなきゃいけないのよっ」 突然怒り出した蘭は、「自分の勘の良さが嫌になるっ」と吐き捨てて、さっさとその場を立ち去ろうとする。足音高く向かう先が担当の携帯コーナーではないのに気づいて、京介が呼びとめた。 「どこへ…」 「休憩室! 苦いコーヒーでも飲まなきゃやってられない甘さだわ!」 蘭の剣幕に押されて、今が休憩中ではないと言い出すこともできず、「いってらっしゃい」とその雄々しい姿を見送った。 数歩進んだところで蘭が立ち止り、振り向いて一言。 「甘やかすのもほどほどに」 厳かに告げられて、京介は姿勢を正して頷いた。 END ※ ※ ※ 10月25日(日) J.GARDEN27 A2-3ホール J41b で販売されるハロウィンイベント本につながるお話です。 興味を持って買っていただけたら幸いですw 明日から伊豆へ旅行です! 今回は友達の運転で連れて行ってもらうのですが、あまり仲良くない人が2人…。 いや、嫌いじゃないですが、人見知りな私は気を使って疲れそうな気がします。 諸事情で長距離のドライブと温泉がダメなので、行きたくない気持ちMAXです! 高いお宿を予約したからもったいなくてキャンセルできないし!! 伊豆旅行を糧に、女王様と温泉旅行の第二弾でも書こう…。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年10月22日 09時59分37秒
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